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千葉「ゴルフリゾートSOGA」、大手企業が練習場事業の可能性に着目

練習場・インドア 市場考察 嶋崎 平人

個人や同族経営でゴルフ練習場を続けるためには、相続を含む事業継承が課題となる。その一方、大手企業が経営する練習場には継承問題が存在せず、ビジネスメリットがあれば「個人経営」の施設より継続性が高い。ゴルファー創造の拠点として今後も期待できるわけだ。

大手企業は、どのような理由で練習場事業に参入し、事業戦略を考えているのだろうか? 今回はこの点にスポットを当ててみよう。

東武グループの東武緑地株式会社は、千葉県千葉市中央区で「ゴルフリゾートSOGA」を経営する。石神浩樹支配人と南里圭介副支配人への取材で現状を浮き彫りにしたい。

同社は1972年に造園工事専業会社として発足し、1979年に東武鉄道の資本参加で東武グループの系列となった。造園工事業、植栽管理事業、ゴルフ場コース管理事業、ゴルフ練習場事業などを展開中。

東武緑地が最初に練習場事業へ参入したのは、同じ千葉県千葉市花見川区にある練習場を2000年に買収したことに始まる。現在の「ゴルフリゾート花見川」だ。買収の理由を石神支配人がこう振り返る。

「練習場事業に積極的に参入する目的ではなかったのですが、当時の経営事情で買収を決めたのです。具体的な、理由は残念ながらお話できないのですが」。当時の理由は開示してもらえなかった。

ゴルフリゾート花見川

花見川は奥行220ヤード、2階建て92打席で、天然芝のアプローチとパター練習場も併設する。練習場事業を開始すると、収支を含めて安定軌道に乗った。そこで練習場の事業拡大が会社方針となり、茨城県など関東地区を中心に既存練習場の調査・検討をはじめた経緯がある。

「花見川の経験で、練習場の採算をとるには立地が重要なことが分かりました。練習場の商圏は半径3~5kmですが、練習場に適した広い土地があったとしても、人が集まらなければ適さない。既存練習場の売り物件だけでなく、練習場に適した土地も検討しました」(石神支配人)

その調査の中で、現在の千葉県中央区「ゴルフリゾートSOGA」のある製鉄所跡地の話が持ち込まれたという。

この土地は海に近く、商圏が半径5kmといわれる中で、半分は海側だから商圏自体は半減となるが、国道16号線沿いの好立地で多くのドライバーの視界に入る。ゴルファーから認知されやすく、JR蘇我駅から徒歩10分も魅力的だった。

立地環境が生命線

ゴルフリゾートSOGA

それだけではない。ここは「ハーバーシティ蘇我地区」に立地しており、蘇我駅から無料の循環バスが運行されるため車がなくてもアクセスできる。

ハーバーシティ蘇我は川崎製鉄(現JFEスチール)千葉東工場の縮小計画に伴う跡地利用について、川崎製鉄が千葉市と協議、千葉市が蘇我特定地区整備計画を策定・再開発されたものである。

現在、スポーツ施設と商業施設の大型ショッピングモールもある。練習場用地はJFEからの賃貸で、建屋・ネット施設は東武緑地がJFEグループの建設会社に依頼して建てた。使用した鋼材はスカイツリーと同じ素材だという。

ただし、既存施設のリノベではないため、新設に関わるコストは多額だったはず。投資額は非公開ということだが、筆者は7億~8億円程度と想像する。

むろん、投資には親会社の東武鉄道の承認が必要で、東武グループとしての投資だった。新築でこれだけの投資額を捻出できるのは大手企業ならではだろう。

2011年2月に開場、奥行200ヤードで3階建て、92打席の大型施設が完成した。施設横には天然芝のアプローチ練習場も併設し、全体の設計は「ゴルフリゾート花見川」のノウハウを生かしている。

建屋の償却は20年で、開場5年後の2016年には採算ベースに乗せている。

来場者数は年間17万人で、男性が88%、女性は12%の割合だ。同地区は比較的若い世代が多く、10~20代=20%、30代=20%、40代=25%、50代=17%、60代以上が18%となっている。

20~30代で4割は、他の練習場と比べて特異といえる。その理由を南里副支配人はこう話す。

「そもそも、この地域には若者が多く訪れるのです。ハーバーシティ蘇我には大型商業施設があり、当施設に隣接するスタジアム『フクダ電子アリーナ』はJリーグ・ジェフユナイテッド市原千葉の本拠地です。

5月には蘇我スポーツ公園でロックフェスティバル『ジャパン・ジャム』が開催される。練習場からはサッカー選手の練習風景も見えます」

その反面、シニア世代の来場が少なかったため、2015年からシニア向けの「2時間打ち放題プラン」(平日70歳以上1100円、65〜69歳1650円)を設定したことで、徐々にシニアも増えたという。

業界は若者ゴルファーの創出に懸命だが、ここではどのような施策を打っているのか。南里副支配人は、

「ボウリング感覚で来場される方が多く、貸しクラブを使うケースも多いのですが、そもそもゴルフは難しいという課題があります。そこで月に1回初心者教室を行なって、グリップの握り方から教えています。私もインストラクターの資格を取りました。また、千葉市、市原市在住のジュニアに限り、2時間打ち放題で330円の低料金。女性を取り込むには施設の清潔感が重要なため、特に清掃には気を配っています」

練習ボールは12万球を使用するが、2年に1回交換して、常に綺麗な状態で提供するという。料金は近隣商圏の「中間」に設定し、半径5km圏外からの来場も増えた。

東武緑地の青木雅彦社長は「練習場は立地が重要。良い案件があれば今後も検討していく」との方針を明らかにしている。

個人経営の練習場は地主が多く、当初から場所が限定される。ところが「ゴルフリゾートSOGA」の場合は練習場に適した場所を検討し、打って出たという意味で、練習場ビジネスの可能性を伺わせる。

大手企業が純粋に収益事業として練習場事業に乗り出せば、練習場の減少に歯止めをかけることもできるはず。積極的な事業展開を期待したい。


この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2021年12月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。

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嶋崎 平人

嶋崎 平人

1951年生まれ。東京都立大学工学部機械学科卒業。ブリヂストン(タイヤ)入社後は主に製造技術畑を歩き、その後ブリヂストンスポーツでクラブ・ボールの企画開発等を担当。クラブ開発に携わり、特許を二十数件出願している。日本ゴルフジャーナリスト協会副会長。

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