1. 練習場・インドア

高額家賃の銀座に開業して4年 採算に乗せたPGMのインドアゴルフ施設

練習場・インドア 嶋崎 平人

パシフィックゴルフマネージメント(PGM)は全国145か所(2020年12月1日現在)でゴルフ場を保有・運営し、ゴルフ場の年間来場者数は781万人(2020年1~12月)、売り上げ829億6000万円(2020年3月期連結)のゴルフ事業を展開している。

そのPGMが2018年10月、銀座近くの一等地にゴルフ練習場を開場した。

「PGMゴルフアカデミー銀座」である。住所は中央区築地1丁目だが、東京メトロ銀座駅から徒歩5分、東銀座駅からは徒歩1分の銀座松竹スクエアビルの2階に位置する。

開業して4年、PGMのゴルフ練習場事業に対する考え方を含め「PGMゴルフアカデミー銀座」の佐々木悦生支配人、広報部広報グループの伊藤春絵さんに取材した。

PGMのゴルフ練習場は、ゴルフ場に併設された練習場(ゴルフ場来場者以外の練習だけの利用者も受け入れる)を除けば、現在、屋内型のインドア練習場は「PGMゴルフアカデミー銀座」のみである。

面積177坪にオープン打席6、個室打席2、VIP打席2の合計10打席を有し、米LPGA公認のゴルフシミュレーターが各打席に備えられ、トラックマンも2台導入している。広報の伊藤さんによると、

「ゴルフアカデミー銀座は既存のものでなく、ゼロから設備をいれてつくり上げました」

とのことで、ゴルフ場を買収して事業を広げてきたPGMのビジネスモデルとは異なる投資である。

初期の設備投資だけでなく、銀座の高い家賃を払いながら採算ベースに乗せる必要がある。投資金額、家賃等は非公開だが、この地区の平均賃料の坪単価相場は2万5000円だけに、単純計算で400万円を楽に超える。

4年前、銀座店のオープン時に、同社の田中耕太郎社長はGEWの取材に対して、

「初年度から赤字にするつもりはありません。開業の目的は、若い人や女性など新しいゴルファーを創出することです」

と話している。

佐々木支配人

開業して、この10月でちょうど4年が経過。現状について佐々木支配人はこう話す。

「開業以来、この練習場の知名度アップや稼働率を上げていくことに努力してきましたが、この2年間はコロナの影響で、営業時間をコントロールしながらの運営でした。

現在の営業時間は、平日は8時から21時までが基本ですが、昨年4月中旬から5月は緊急事態宣言による休業も経験しました。

ただ、コロナ禍で逆にお客様は増えているんですよ。インドア練習場はネガティブにとらえられがちですが、ここは打席間隔も広く、換気も消毒も十分で、清潔な設備が支持された結果、あえてここを選んで来場される方もいます」

ゴルフ業界は昨年6月以降、V字回復を描いているが、同施設もコロナ前に比べて20~30%増えているという。それは、ゴルフが屋外の健康スポーツというイメージの定着も寄与したとみているようだ。

「都心の練習場が減少する中、特に千代田区、港区、中央区の方々がスポーツクラブ感覚で来場されて、新規のゴルファーも増えました」

女性来場者は4割

来場者数は月間延べ2000名以上、10打席の稼働率も7割超だという。利用者を増やすため、基本的には会員制ではなく、利用の都度打席料を支払う方法と、サブスクリプションで月2万円、1日1枠利用できるオプションなども用意している。打席売り上げだけでなく、ゴルフ用品販売とレッスンを絡ませて、

「採算はトントンまで来ている」

という。高額な家賃を考えれば、同店の成果はゴルフ業界に福音だろう。一等地のインドア練習場でも採算がとれるモデルといえる。

特にスクール事業が伸びている。基本は個人レッスンで、23%がレッスン目的の来場だ。そのためレッスン事業を強化中で、指導者はPGM認定インストラクターとPGMサポートの女子プロの指導が好評。

「井上透ゴルフ大学」の開催で、上級者の満足度を高めている。

驚くのは、女性来場率の高さである。土地柄もあり、女性4:男性6で、通常のゴルフ練習場よりもはるかに女性の割合が高い。

「6つのオープン打席が、すべて女性で埋まることもあります」

また、初心者の割合も約40%と、来場しやすい銀座の地の利を生かせている。年齢は20代:10%、30代:10%、40代:20%。50代:30%、60代以上:30%と、ゴルフ界では「若い世代」に位置付けられる40代までが4割を占めている。

通常、屋外練習場の商圏は半径5㎞といわれ、地域密着が特徴的なビジネスだが、この点についてはどうなのだろう?

「場所柄、近隣にオフィスが多く、夕方以降は会社員の利用が多いのですが、朝から昼間にかけては近隣住民の来場が多く、特に土曜・日曜日は、朝から地元の勝どき、築地、豊洲、佃からの来場も多いですね」

と、同店も地域密着は変わらない。このことは注目に値する。

145コースを運営するPGMだけに、ゴルフ場との連携も気になるが、佐々木支配人によれば、

「現在はまだ連携してないんです。銀座の採算を上げることに注力しているので、そのあたりは次のステップとして考えます」

例えば、ゴルフ未経験の子供や女性をアクセスのよい銀座でレッスンして、近隣コースに送客、ゴルフ場体験をしてもらう企画も検討してほしい。ゴルフへの敷居を下げるには実際に足を運び、体感してもらうことが早道だと思うからだ。

ゴルフ業界大手のPGMが、銀座経営のノウハウを生かし、他の都市部に水平展開していけば、新しいゴルファーの創出に間違いなく貢献できる。また、この成功例は他企業が進出する動機にもなると思える。

同じくゴルフ場チェーンを展開する太平洋クラブも銀座に拠点を構えている。こちらはレストラン、バーにシミュレーションゴルフを併設する「会員制クラブ」の色合いが濃く、会員が商談したり、ワーケーションでの利用にも重宝されている。

都心の一等地に「ゴルフ」が進出すれば、業界のイメージアップにつながる効果も期待したい。


この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2021年12月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。

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嶋崎 平人

嶋崎 平人

1951年生まれ。東京都立大学工学部機械学科卒業。ブリヂストン(タイヤ)入社後は主に製造技術畑を歩き、その後ブリヂストンスポーツでクラブ・ボールの企画開発等を担当。クラブ開発に携わり、特許を二十数件出願している。日本ゴルフジャーナリスト協会副会長。

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