今号では2021年4月にリニューアルオープンし、早くも来場者の属性に変化が見えた茨城県水戸市のゴルフ練習場「ROYAL GREEN」の顧客分析記事を書く予定でしたが、どうしても今号でお伝えしたいニュースがありますので、急遽、内容を変更します。
2021年1月、経済産業省から『事業再構築補助金』の概要が発表されました。総予算1兆1485億円、同じく経済産業省の目玉である『ものづくり補助金・IT導入補助金』の予算が2300億円であることを考えると、今回の補助金がどれだけ大きいかわかります。
これは、新型コロナにより大きな影響を受けた企業を支援するための補助金ですが、支援対象の企業やその目的を読むと、弊社も国が目的とする「補助対象企業」になるのではないかと思い、リニューアルと同時並行で申請の準備を進めました。
その結果、私たちは400社限定の卒業枠(補助額上限1億円)に、第1回目の公募で申請(2021年4月28日)。約1万7000社の応募の中で、採択されたのはわずか45社でしたが、弊社も6月18日に採択を勝ち取ることができました。採択率わずか0・2%です。
そこで、弊社が『事業再構築補助金』の事業計画にどのようなプランを描いているのか、なぜ国は弊社に1億円を補助する決断をしてくださったのか、このような視点で本稿を展開したいと思います。
国が支援したくなる事業とは
補助金の原資は国民から集めた税金です。私は補助金のそもそもの目的を国の立場に立って考えました。
なぜ補助金という制度が生まれたのか。国が補助することで成し遂げたいことは何か。加えて、現状で起きていること、言わずもがな『新型コロナウイルスの蔓延』についても意識しました。
国が過去最大規模の支援に踏み切った一番の理由は、戦後最悪の危機に直面しているからこそ、日本経済を牽引する企業を後押ししたかったのではないでしょうか。
それらを踏まえ、私は、この補助金を申請するにあたり、最も重要なポイントは、「社会や地域への貢献度」・「企業自体の成長性」この二つだと判断しました。
国のメッセージを私なりに解釈し、私たちが、ゴルフ業界で、日本を牽引する企業になっていこうという強い想いが生まれたので、既存事業リニューアルの挑戦に加え、さらなる次の手を打つことに決めました。
ただし、この補助金による新規事業をスタートするということは、更なる投資という大きなリスクを負うことにもなるので、改めて相応の覚悟をもって進めていかなければならないと、決意しました。
具体的には、5年後の2026年に①従業員100名以上②資本金5000万円以上③売上10億円という数字を国にミッションとして提出しました。未達であれば1億円の補助金は一部返還を求められる可能性もあります。
茨城県内に2店舗で合計2億円の売上規模からすると、一般的には無茶な挑戦と思われるでしょう。
ましてや「ROYAL GREEN Mito」をこの4月に再オープンしたばかりで、多くの課題と向き合う大切な時期に、更なる新規事業に着手し、現状維持が精一杯と言われるゴルフ練習場業界において売上を5年間で5倍以上にする目標を立てたわけで、周囲から「無謀」の声が上がることも想像できます。
しかし、私たちには自信があります。以下、株式会社ウィルトラストのさらなる挑戦の5年計画の一部をご紹介します。
新事業の二本柱

その1 ROYAL GREEN Mitoのサービス拡充 ~グランピング・ペット・飲食事業~
「地域貢献」「エンターテイメント拡充」「商圏の拡大」を意識して、グランピング施設やペット共生による宿泊事業、本格飲食事業を新たにスタートする予定です。
既存のエンターテイメントにペットと共に宿泊できるサービスを追加することで、自然を味わいながら滞在型でゴルフの練習や余暇を過ごすことができるため、地元だけでなく全国からも、利用して頂けるお客様が増えるはずです。
ペット事業参入の理由は、『コロナ禍』にあります。ステイホームもあり、犬や猫を飼う人が急増しました。今はペットと家で楽しい時間を過ごせますが、ワクチンの普及で収束すれば、コロナ感染症によるステイホームは終焉を迎えます。
そうして日常が戻ると、飼育しているペットがいることで外出先を制限されることが増えると予想されます。
そこで、弊社は、ゴルフ×ペット×ツーリズムという考え方で、ペットと一緒に滞在したくなるゴルフツーリズムプランを提供しようと考えています。
飲食事業においては、現在カフェ&バーの形態から、更に投資をし、本格的に食事のできる飲食事業としてスタートさせます。茨城産のおいしい食材を数多く使った料理を提供することで、茨城ブランディングの向上も目指します。
その2 ゴルフ業界全体の次のステップへ! ~ゴルフ業界向けDX事業の立ち上げ~
これから5年間の目標売上達成の肝となる「ゴルフ業界に向けたDX事業」の構築を目指します。
私の前職がデジタルマーケティングの企業だったため、余計にそう感じるのかもしれませんが、他業界と比べてゴルフ業界は、IT化が非常に遅れています。
今後、政府がデジタル分野を推進するにあたり、ゴルフ業界もIT分野での遅れが課題となるはず。裏を返せば、IT分野での遅れを取り戻せれば、ゴルフ業界復活の可能性が高まります。
そこで着目したのが、ゴルフ練習場のICカードならびに今回当店が導入したトップトレーサー・レンジです。ゴルフ練習場で得られる様々なデータを融合し、集客や購買、価格設定に向けてのマーケティングに活用することが本事業の根幹。そのため独自システムを開発予定です。
まずは弊社で導入・運用し、課題を見つけ、準備が整い次第、全国2700のゴルフ練習場に対してデジタルマーケティングの領域で、集客支援やお客様満足度向上、料金設定の最適化などを提案することが目標です。机上のマーケティング論だけではなく、提案先企業と一緒に企画していきたいと思います。
新たにゴルフを始めたくなるきっかけを作るゴルフ練習場が、日本中にたくさん生まれることで、ゴルフ人口を増やし、地方経済・日本経済の活性化につなげていけると思っています。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2021年8月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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