1. 練習場・インドア

第5回 ROYAL GREEN、若者来場者激増中!

練習場・インドア 礒﨑博文

梅雨の明けた7月末現在、茨城県水戸市のゴルフ練習場「ROYAL GREEN」は猛暑の影響もあり、新規来店数、総来店客数も落ち着きましたが、リニューアルオープンから4か月、累計約6000名の来店客がICカードに登録しています。

そこで今号では、当店の新たな施策と4か月間の顧客動態を分析します。ちなみに我々は施設を「店」と呼びます。業界では「場」もしくは「施設」と呼ぶのが一般的だそうですが、私には「店」と呼称するほうがシックリします。

さて、次の数字は当店会員登録者の年齢構成比です。
20代=19% 30代=17%40代=21% 50代=17%60代以上=16%

合計90%となったのは、10代の登録者と生年月日未記入が数%あったためですが、いずれにせよ、20~30代で36%を占めたことは特筆に値すると思います。周知のようにゴルフ人口は高齢者が多く、確たるエビデンスはないものの、平均年齢は60代前後とされています。

日本ゴルフ場経営者協会による入場者実績(ゴルフ場利用税調査による実数)では70歳以上が25%となり、これに照らしても当店の顧客年齢の若さが際立っています。コロナ禍による20~30代ゴルファーの増加は、同業経営者との情報交換でも実感できます。

ただ、そのような情勢はあるにせよ、当店がリニューアルの際に企画した新たなコンセプトやサービスが若い世代にウケたという感触があり、最大の要因はトップトレーサー・レンジ(TTR)の導入を核にした様々な施策にあります。

TTRはゴルフとエンタメを融合したシステムで、2018年9月、米国から日本に上陸。現在、国内では約40の練習場が導入しています。それ以前、私はTTRを導入して人気だったラスベガスの「トップゴルフ」を視察して、衝撃と感銘を受けました。そこでは音楽、飲食、ゴルフとハイテクの融合で素晴らしい空間演出をしていたのです。この経験が、当店のコンセプトとTTRの導入を決意させました。

とはいえ、我々のコンセプトは「トップゴルフ」の模倣ではありません。『ゴルフボールを打つという時間に、楽しさを加える空間デザイン』にこだわり、TTRの機能を最大限に活かすための議論を重ねました。リニューアルオープンから4か月、成果は着実に現れています。

TTRを活かす発想術

TTRには大きく分けて二つのモードがあります。1人利用で練習の質を高める「セルフモード」と、誰かと一緒にゴルフを楽しむ「グループモード」です。通常のゴルフ練習場にTTRを導入するとセルフモードの利用が主となり、グループモードはその価値を最大化できません。

そこで当店は「1階エリアをセルフモード」「2階エリアをグループモード」の利用を推奨し、二つの価値を最大化することを決めました。その結果、セルフモードの利用率が全体の65%なのに対し、グループモードが35%と、想像以上にグループ利用を促進できました。

これは、店舗スタッフがお客様一人一人にTTRの使い方、楽しみ方を丁寧に説明した成果です。具体的には、練習がメインのセルフモードは「フリー計測モード」と「クラブ別計測モード」があり、特に後者はマイクラブの練習データ(球数や平均飛距離等)をアプリに保存できるため、個人練習には最適です。利用者は日々の練習内容を記録して予習・復習に役立てられます。

新規ご来店のお客様には、打席までスタッフが誘導し、TTRの各モードを説明、アプリのダウンロードを促しますが、これには通信インフラが必要です。当店は1、2階合わせ全84打席にTTRを設置していますが、全打席でスムーズにつながるWi-Fiネットワークを新たに完備。

これが威力を発揮した結果、他のTTR導入施設のアプリダウンロード率は約20%なのに対して、当店は36%になっています。

2階の新活用法で売上アップ

次に2階エリアについて説明します。こちらは女性専用の6打席、グループ用4打席など4区画に分類し、女性用打席には1脚60万円のチェアを備えるなど空間演出に注力しています。夜間はチェアに内蔵される照明が灯り、幻想的な雰囲気を生み出しますが、2階はTTRのゲーム機能がメインとなる「グループモード」を推奨。このモードではシミュレーションラウンドやニアピン・ドラコン等のゲームが楽しめます。

本来は4打席設置できるスペースを2打席(通常の1打席幅2・5mを5m)にし、大型ソファのグループシートなどで最多4名までゆったりと利用できます。リニューアル前は1打席2名までの利用でしたが、現在は3~4名以上のグループ利用が増えています。

2名以上のご来店には必ず2階打席の利用を推奨するよう、社内ルールを徹底しました。むろん、強制はできませんが、一度2階エリアを体験すると、その空間に驚かれ、若い世代にはデートコースとしての価値も認めてもらえるようです。

収益面でのポイントは、1打席に4名入った場合、1人当たりの60分料金(1000円)は1階打席(1100円)とほぼ同額なので、打席売上は1打席60分で4倍になります。

従来は1階のニーズが高く、そのため2階の稼働率アップが改善ポイントでしたが、リニューアル前に比べて2階売上は約6倍に急伸しました。これはとても大きな収穫だと考えています。

また、2階打席の利用には、ゴルフ以外にもカフェでのドリンク提供やビリヤード・ダーツの利用料金も全て含まれ、そのことも高い顧客満足につながっています。

グループ利用の促進には、別の利点もあります。たとえば1階エリアに友人4名で来店され、4打席並びで確保できない場合、バラバラになります。場所が離れると会話をするため1打席に集まり、その間「空き打席」が生まれます。これでは満席時にほかのお客様をご案内できず、機会損失につながってしまう。

4名を2階のグループシートへ誘導すれば問題を解決でき、稼働率が高まるわけです。

ただし、一方では課題も浮き彫りになってきました。若い層が楽しく過ごす世界観は、練習に真剣に取り組む顧客から「うるさい」などのクレームになりやすい。その対策として、エリア別に色分けをして、グループ客は同じエリアへの誘導を徹底するなど、課題をクリアする必要性を実感しています。

とにかく、日々改善です。次号の誌上ライブ配信もお楽しみに!


この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2021年9月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。

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礒﨑博文

礒﨑博文

株式会社ウィルトラスト 代表取締役社長
2013年、株式会社ライフルから独立。多重債務を抱えたゴルフ練習場の運営事業を引き受け、事業再生に。現在はゴルフ練習場2店舗に対し、新たな業態、『Golf&Entertainment空間』の開発に着手。ゴルフ業界を活性化することで地方経済を活性化することを事業ビジョンとする。

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