第6回 ゴルフ練習場だって高額品が売れる!

第6回 ゴルフ練習場だって高額品が売れる!
当店が所在する茨城県は2021年8月8日にまん延防止等重点措置が、8月20日には緊急事態宣言が発出されました。感染リスクが少ないことで追い風を受けてきたゴルフ業界ですが、ついに弊社店舗(水戸店)にも『営業時間の短縮や入場制限への協力』要請が出されたのです。 建築物の床面積が1000m2超の商業施設は、午後8時以降の営業自粛と入場制限(通常時の2分の1)を要請するというものです。 要請に従い、引き続き細心の注意を払った店舗運営を進めますが、スタッフの夜間勤務シフトがなくなった今だからこそ、事業部横断的な全体ミーティングを増やし、今できることと今後の施策を練り直すなど前向きなチャレンジを続けています。 さて、本稿ではゴルフ練習場における「物販」について実践的な考察を展開したいと思います。 ゴルフ業界では一般的に、練習場では廉価な消耗品(ボールやグローブ等)以外の販売は難しいと言われています。その理由は、来場者の目的は「練習」であり、ショッピングではないから、です。 一部の練習場では施設内に大型中古チェーン(ゴルフパートナー、ゴルフ・ドゥ等)が併設され、物販の売上を確保していますが、これはショップのブランド力によるところが大きいと推察します。 2021年4月、リニューアルオープンをする際に、私たちは「練習場では本格的な物販は難しい」との常識を打ち破るべく、売場面積約13坪の「ショップ&ブティック」を1階に設けました。そのコンセプトは、 1、ROYAL GREEN Mitoでしか購入できない商品 2、ROYAL GREEN Mitoで購入することのメリット この2点を追求しています。 まずは「1」についてですが、この商圏で当店でしか扱っていない商品を仕入れることは、特にハイエンド系のブランドにおいて非常に難しいことでした。 が、行動しなければ何事もはじまりません。当店の経営指針は「Golf & Entertainment」及び「新規ゴルファーの創出」であり、この点を基に調査した結果、渋野日向子プロが全英女子オープン制覇の際にアパレル契約を結んでいた『BEAMS GOLF(ビームス ゴルフ)』にアタックしたのです。 2021年1月、奇跡的にビームス原宿本社にて商談の機会を得、リニューアルの構想とイメージボード、そして熱い想いを約1時間に凝縮、ダメもとでぶつけました。その結果、 「ビームス ゴルフのビジョンと重なる部分が非常に多く、同じ想いを持っていると感じました。ぜひお取引をしませんか」――。 その瞬間、わたしは耳を疑いました。実のところ、茨城県水戸市のはずれのゴルフ練習場では相手にされないと思っていたのです。 さらに、2021年にデビューしたブランド『UNBIND(アンバインド)』との取引も決定。一般的なゴルフアパレルとは一線を画し、3S(SKATE/SURF/SNOW)を原点に、ストリートファッションとしても通用するウェアのデザインやコーディネートに加え、特殊素材を用いるなど機能性も備えています。 デザインと機能を両立したベルトレスのグローブや、特殊繊維が織り込まれたグリップ力の高いソックスは多くのリピート顧客を生み出しています。いずれも県内の練習場では当店が唯一の取扱店です。 両ブランドの共通点は「ゴルフの新しい楽しみ方を多くのゴルファーに伝えたい」という想いで、従来のゴルフアパレルにはない独自の世界観が、商品1点1点に凝縮されています。 それらが先述した当店の「ショップ&ブティック」のコンセプトとしっかり噛み合っており、売場は前記2社とシューズのアディダスに厳選して展開しています。

三位一体型の販売

次に、ゴルフギアです。こちらはテーラーメイド、キャロウェイ、スリクソンのほか、地クラブを含め30ブランドからセレクト。 さらに独自のポイント戦略を考えました。ECが普及した現在、弊社の規模では単純なポイント戦略では太刀打ちできません。 近隣には新品・中古の大型量販店が、大量仕入れによるコストメリットを駆使したポイントと品数で勝負するため、同じ土俵には乗れません。そこで、当店独自の購入メリットを2つ構築したのです。 1、当店独自で提供できる付加価値 私たちの強みは「ゴルフを練習する環境」を提供できること。そこで初心者向けクラブセットの販売にはゴルフスクールとの「セット割」を含めたサブスクリプションサービスをつけました。 具体的には、クラブセットとレッスン・スクール料金をセットにして、12か月割賦で提供。その際、スクールは半額になる特典を付与します。また、ファッション性が強く単価の高いアパレルの購入者には、近隣ゴルフ場のペアや特別招待券をセットに販売します。 2、当店独自の方法での商品案内 クラフトマンがお客様のスイングに合うクラブを提案、調整する既存のやり方に加え、レッスンプロがフィッターとして加わり、「スコア向上に必要なクラブ選定」の視点で提案します。 いわゆる三位一体の販売は非常に高い評価を受けており、リニューアルに伴い取扱ブランドや品数を増やしたことで、約3倍の売上増となりました。 7月に開催した1ブランドの販売会では、2日間で100万円超の売上を記録しましたが、その要因としては、事前の完全予約制に加え、会員限定PRIVATE ROOMでクラフトマンとレッスンプロが同席して、試打を交えて1時間半、徹底的にコンサルセールスをしたことと無縁ではありません。 高級感あふれる特別打席で、クラフト&フィッティングのクラブ販売は、まさに練習場ならではと言えるでしょう。 アパレルやグッズについても、フロントスタッフ全員がしっかりと商品について勉強し、知識を身に着けた上で、お客様を観察、コミュニケーションを図りつつ、提案することができています。 これらは接客の教科書にある当然のことかもしれませんが、スタッフが率先して接客のロールプレイングをしている姿を見ると、当店で購入する一番のメリットは、我々の「提案力」だと改めて感じています。 練習場は、消耗品だけではなく、高単価なアパレルやキャディバッグ、スクール生へのクラブセット販売など、専門店に負けない成果を出せます。五輪やコロナ、猛暑などで外出が減った7、8月ですが、想定以上の数字で乗り越えました。次回の誌上ライブ配信もお楽しみに!
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2021年10月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら