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  • 第7回 神戸ゴルフ俱楽部からの学び

    礒﨑博文
    株式会社ウィルトラスト 代表取締役社長 2013年、株式会社ライフルから独立。多重債務を抱えたゴルフ練習場の運営事業を引き受け、事業再生に。現在はゴルフ練習場2店舗に対し、新たな業態、『Golf&Entert...
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    コロナ禍が落ち着きを取り戻しつつある中で、ROYAL GREEN Mitoの2階・グループシートには、家族や恋人、友人同士が楽しむ姿が戻ってきました。「ゴルフの練習」が目的ではなく、トップトレーサー・レンジのゲームモードで遊んだり、子供とソファでくつろいだりと「大切な人と時間を楽しむ」ために集まっているのです。当店のコンセプト「ゴルフ&エンターテイメント空間」が受け入れられてきた、私はそのように受け止めています。 本来、この連載は当店が連発する様々な試みや挑戦を誌上ライブでお届けすることが主旨ですが、今回は少し毛色を変えてみます。実は9月16日に、日本最古のゴルフ場「神戸ゴルフ倶楽部」でプレーする機会を得たのです。ゴルフ業界に入って以来、一度は訪れたいと思っていただけに念願が叶いました。 そこで、本稿では神戸ゴルフ倶楽部とROYAL GREEN Mitoの在り方を照らし合わせ、私なりにゴルフ文化・事業はどうあるべきかを書きたいと思います。 歯応えがありすぎるテーマですが、この仕事の原点回帰の意味を込めて執筆に挑戦します。

    仲間と集う最古の俱楽部

    神戸ゴルフ倶楽部の誕生は1903年、今から118年前のことでした。創設者は英国人貿易商のアーサー・ヘスケス・グルームで、同氏はある日、六甲山山頂の別荘で、友人たちと故郷イギリスで盛んだったゴルフの話になり、突然「ここにゴルフ場を造ろう」と言い出したとか。なんと、グルーム氏はゴルフ経験がなかったそうです。 「友人と過ごす場所(ゴルフ場)を自分たちの手で山頂に造る」――。そんな突拍子もない発想は、ゴルフ練習場を従来の概念とはまったく異なる発想で再構築したいと考える私にとって、大いなる刺激と親近感を与えてくれました。 小さな木造のクラブハウスには、往時の写真が飾られています。異国の地で貿易を営む仲間たちやその家族。建設の風景や近隣に住む日本人キャディの子供。その写真ひとつひとつを池戸秀行支配人は、丁寧に説明してくれました。私は話を聞きながら、グルーム氏がこの地に「ゴルフを仲間と楽しむ文化」を移植したこと、以後118年間、その文化を守り伝承してきた人々の労に感謝の念を覚えました。

    神戸ゴルフ倶楽部を歩いて

    現代のゴルフはパー72がほとんどです。より遠くへ飛ばし、より少ないスコアでプレーすることがゴルフの楽しさを代表します。多くのゴルフ場は、こうしたゴルファーのニーズをほどよく刺激して、難しさと優しさを織り交ぜた絶妙なコースセッティングを施します。カートナビや高性能のゴルフクラブがプレーヤーをサポートし、快適なゴルフライフを提供することで、日本のゴルフ産業は発展してきました。 一方の神戸ゴルフ倶楽部はパー61で、当初から「神戸ゴルフ倶楽部ならではの過ごし方」を提供しています。実際にプレーしてみて驚きました。コースは平らなところが一切なく、ホールアウトするには体力が必要です。30代で体力に自信がある私も、ゴルフなのか、山登りなのか、わからなくなるほどでした。 昔、来場者は「籠」に乗ってゴルフ場へ通ったそうですが、開場前の造成は想像を絶する苦労があったと思われます。機械はなく、ほとんど人力で山を切り開いたと思わせるアンジュレーションが、やわらかな凹凸をつくります。当日は薄曇りでしたが、六甲山頂のゴルフ場から神戸港を一望できます。我々は誰一人スコアをつけず、最古のゴルフ場を全身で味わいました。 我々をフォローをしてくれたのが神戸ゴルフ倶楽部の学生キャディです。一人で4人分のキャディバッグを担ぎ、登坂します。その負担を軽減するため、通常の14本ではなく10本に絞り、ゴルフ場の軽量バッグに入れ替えます。事前にコースレイアウトを見ながら、どのクラブを選ぶかを考えるのも楽しいものです。 ほかにも沢山、「神戸ゴルフ倶楽部ならではのゴルフ文化」を体験しましたが、私が最も印象に残ったことは、個々の物事ではなく、個々の事象の全体が俱楽部の文化として大切に守られ、118年間、変わらず愛されてきたことです。ここに、ゴルフ界を活性化する大事なヒントが隠されていると感じました。 神戸ゴルフ倶楽部が変わらず提供してきた価値は「仲間とゴルフを楽しむ時間」そのものだと、私なりに解釈した次第です。

    「神戸」から学んだ温故知新

    改めて触れるまでもなく、日本のゴルフの発展史には多くの人々の功績がありました。ゴルフ場設計の名匠達(井上誠一、上田治、富澤誠造氏ら)が丹精込めて造り上げたゴルフ場でプレーすることが、ステータスとなったこと。AON(青木功、ジャンボ尾崎、中嶋常幸)が展開した息詰まる熱戦の数々が、ゴルフファンを増やしたこと‥‥。ゴルフ市場の発展は、素晴らしいゴルフ場の開発と、スコアを競うゴルフのプレースタイルが日本人の気質に合ったこともあるでしょう。 この間、神戸ゴルフ倶楽部は六甲山頂で孤高を保ちました。パー72へ変更したり、より戦略的なコースレイアウトに改造したら「売上」はもっと伸びたかもしれません。しかし変えることはしなかった。 主観ですが、時代に合わせた変更は「仲間とゴルフを楽しむ」という思想的価値と、相容れなかったからではないでしょうか。 今、ゴルフ界に求められていることは、変化の乏しかった業界に新風を吹き込み、新たなニーズを開拓することだと私は信じています。だけどその一方で、変えてはいけない不変的な価値もある。そのことを神戸ゴルフ俱楽部から学びました。私たちがイノベーションを起こす際にはこの原点をしっかりと理解して、その上で発想しなければなりません。 弊社が描くビジョンは、自社の売上・利益を求める以上に、ゴルフ界に新風を吹き込み、「ゴルフの多様な価値」を生み出して、業界の活性化につなげるところにあります。 ROYAL GREEN Mitoを通じて、より多くの人々にゴルフの楽しさを伝えたい、ゴルフを通して「大切な人と共に過ごす時間」を提供していきたいと改めて強く思いました。 今号は、大きな気づきを得た神戸ゴルフ倶楽部での体験を、どうしても書きたかったのです。次号からはROYAL GREEN Mitoのリアルな挑戦をお届けしていきます。
    この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2021年11月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら
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