日本生産性本部は先頃、「レジャー白書2021」を発刊しました。これによると2020年のゴルフ場でのプレー人口は520万人で、2005年に記録した1080万人から大きく減少。2019年比でも10%ほど減っており、深刻な状況だと指摘します。
とはいえ、このままではゴルフ人口の長期減少は確実でしょう。少子高齢化はますます進み、団塊の世代が後期高齢者に突入すればゴルフリタイアも発生します。厳しい将来を覚悟しなければなりません。
そのような状況下、我々ゴルフ練習場こそが、日々新しいゴルファーを生み出す施策を打ち出し、実行する必要があります。そこで本号では、当店が最近始めたサービスと、顧客との触れ合いから生じたエピソードを加えつつ、市場活性化のヒントを探っていきたいと思います。
地元企業との連携で生み出すゴルフ&エンターテインメント
この連載の1回目のタイトルは「ゴルフ練習場をやめます」でしたが、その真意は、従来の練習場の運営方針をガラリと変えて、単に練習するだけの場所ではなく、エンターテインメント性を加えながら「大切な人と豊かな時間を過ごす」を新たな理念に掲げました。
現状、ゴルフへの注目は高まっており、今年のゴルフ場来場者数はコロナ前の水準を超えるところも目立ちますが、実は「売上」でみると減少局面は明らかです。理由は、表彰式や飲食を伴う『ゴルフコンペ』が極端に少なくなってしまったことによる、客単価の低下です。
たとえば145コースを運営するPGMの昨年実績は、客単価91・3%でした。今年上半期には回復傾向が見られましたが、減少の月も散見されます。企業が主催する大型コンペが軒並み中止、飲食やお土産需要が大幅に減ったのです。
これにより悪影響を受けるのはゴルフ場だけではありません。当店では年2回、ROYAL GREENのお客様向けに約80名規模のコンペを開催し、顧客との関係を深めてビジネス面でも大きなメリットを得てきました。もちろん当店だけではなく、自動車ディーラー、保険代理店、IT企業、不動産企業など、多くの企業が様々な目的でコンペを開催していました。その機会が失われたことは痛手になると思います。
そこで弊社は、ゴルフ場でのコンペに替わる提案をして、お客様から喜んで頂きました。まずはその内容を紹介します。
TTRを活用した1か月間のロングラン「バーチャルコンペ」
10月に100名超の大規模コンペを予定していた、茨城県水戸市内に支社を持つA社は8月下旬、新型コロナの影響で2年連続コンペの中止を決めました。ただ、先方より「2年連続の中止を参加者に伝えるのは忍びない」ということで、代替案の有無を打診されたのです。
そこで弊社はROYAL GREEN Mitoでトップトレーサー・レンジ(TTR)を活用したロングラン・バーチャルコンペを提案、実現しました。内容は以下のとおりです。
・打席は、コンペ同様4名で楽しめる2階グループシートの大型ソファを事前予約にて使用
・ルールと競技方法はコンペさながら、TTRの「バーチャルゴルフ」セントアンドリュースInコースにて新ぺリア方式、HC上限36で設定
・コンペに必須のドラコン・ニアピンイベントは、TTRのドラコン・ニアピンモードで、いずれも一球限定で行う
開催は10月1日~11月10日で、計100名が参加。賞品等を含めた合計売上は約30万円となりました。
この提案を実現するにあたり、当店はA社に次の約束をしています。景品の選定、参加者の予約管理、当日の進行案内、新ぺリア方式の集計(隠しホールの設定等)のほか、プレー中の「盛り上げ役」も当社のスタッフが行い、徹底的に盛り上げますと約束したのです。
9月末の受付開始から予約枠が勢いよく埋まり、平日、土日祝日問わず連日のように参加者が来店。本番では、未体験の「バーチャルラウンド」やコンペ概要に多少戸惑いの表情はありましたが、プレーが始まるとすぐにやり方を理解して、9ホールのハーフコンペを約2時間、友人や家族と楽しむ姿が見られました。日没後もプレーでき、天候に左右されないことも、ゴルフ場とは異なる魅力です。
参加者のうち4割は新規の来店者で、茨城県全域から集まったため顧客開拓にもつながりました。プレーを終えた参加者の多くが「とっても楽しかった。初めてだけどこんなコンペもありだね」と、沢山の笑顔を見ることができました。
今回の試みは、練習場でコンペを行なうという新たな企画につながりそうです。様々な来場者がゴルフを楽しめる機会を自ら企画し、発信することで、売上の向上にもつながります。現在、当店の客単価は1200円となり、これは4月のリニューアルオープン前に比べて160%ほど高まっています。
リニューアル後も変わらず支えてくれる昔からの顧客
9月下旬、10年以上前から足繁く通うお客様から嬉しい相談を受けました。人生で2度目のホールインワンを達成したので、記念品を提案してほしいとのこと。そこで、当店の体験レッスンチケットと刺繍入りの記念品を提案、喜んで頂けました。
同じ頃、別のお客様からエージシュートを50回達成したので記念品を提案してほしいとの依頼も。実は初めてのエージシュートが当店主催のコンペで、私が同伴プレーヤーでした。あれから記録を50回まで伸ばしての記念品の依頼だけに、とても嬉しく、心を込めて記念品を作ろうと現在制作中です。
2人とも長年の顧客で、リニューアルに伴い単価が上がったにも関わらず、「素敵な練習場になって嬉しいよ」「若い人たちの挑戦を私たちが応援しないとね!」と応援してくれるのです。
前号で、神戸ゴルフ倶楽部の体験記を書きました。日本最古のゴルフ場から学んだことは、変えるべきこと、変えてはいけないこと、そのふたつがあるということです。
[surfing_other_article id=70705]
変えてはいけないこと――。それは、喜ぶ顔を見るために、誠心誠意努める姿勢に尽きます。次号の誌上ライブもお楽しみに!
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2021年12月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら