2204ゴルフ練習場限界突破論12
最終回
既成概念をぶち壊す実践主義
ゴルフ練習場限界突破論、今号で最終回となりました。12回にわたり本連載をご覧いただきました皆様に厚く御礼申し上げます。
2021年4月に、茨城県水戸市のゴルフ練習場ROYAL GREEN Mitoを新業態の Golf & Entertainmentにリニューアル。これと同時に本連載がスタートし、誌上ライブとして様々な挑戦をお届けしました。最終回の今号は集大成として、1年間のチャレンジで得たものを、今後どのような形でビジネスにつなげていくかを詳述したいと思います。
Golf & Entertainmentの更なるバージョンアップ
リニューアルの詳細は本連載で随時書きましたので割愛しますが、最も特徴的なのは1階と2階打席でコンセプトを明確に変えたことです。この1年で「ゴルフを楽しむ時間、空間」に対するニーズが予想以上にあったことに安堵しております。
そこで今年は、エンターテイメント施設として新たに2つのサービスをスタートさせます。
①地域連携による飲食事業
リニューアルオープン以降、地元の食材を活用した簡単なフードを提供してきましたが、今年は本格的にランチ、ディナーを提供できる体制になります。メニュー開発は、東京の著名なカフェの業態開発も担当されるパートナーと共に、コンセプトから構築しました。
その際、飲食事業立ち上げのリスク対応として、オペレーションコストを下げること、食品ロスを減らすことを重視。さらに茨城県の魅力を伝えることも加え、地元の食材をふんだんに使った「オリジナルカレー」でチャレンジしていきます。
当店の近隣には大型の物流倉庫や製造工場があるものの、ゆっくりと気持ちよくランチタイムを過ごす場所は多くありません。そのため飲食の業態でも十分に勝算があると判断しました。狙いは、ランチ目的で来店頂き、食後はゴルフも楽しめる。食事とゴルフをセットにしたプランなどで、新規ゴルファー創出のきっかけにしたいと考えています。
食材の仕入れなどは、当店の真向かいにあり開学70年の歴史を持つ、公益財団法人 鯉淵学園農業栄養専門学校と連携します。同学園の直売所から、当日の採れたて野菜をメニューに加えることや、管理栄養士を目指す学生が社会経験の場として、当店のカフェメニューを考案し、実際に販売します。学生に実践の場を提供することで、地域連携、学生教育にも貢献したいと考えました。
②ROYAL GREEN Mitoならではの滞在型ゴルフツーリズム
次に宿泊・観光事業です。弊社のビジョンは「地方創生×ゴルフ市場の活性化」です。茨城県は観光資源が乏しいと思われがちですが、「ゴルフ」は非常に大きな資源です。
しかし、都心近郊から車で約1時間圏内であるため日帰りゴルフが多く、宿泊して県内観光をする需要が未開拓です。そこで下記3つのプランによるROYAL GREEN ならではの滞在型ゴルフツーリズムプランを確立し、地方創生、ゴルフ市場の活性化を達成したいと考えております。
1 愛犬と過ごすゴルフツーリズム
コロナ禍においてペットを飼う人が急増していますが、ペットを飼うと旅行に行きにくくなる点に注目し、愛犬と共に過ごすプランを用意。
2 ビギナーからファミリーまで楽しめるパッケージプラン
当店自慢のレッスンプロによるラウンドレッスンが付いたプラン。ゴルフアパレルやグッズのショッピング、飲み放題付きのディナーなど、ROYAL GREEN Mitoの全てが詰まった滞在型パッケージプラン。
3 法人向けゴルフワーケーションプラン
全館・全打席Wi−Fiを完備、カフェタイムはフリードリンクプランや、プライベートルームを利用したミーティングやプレゼンなど、休憩時間はゴルフで息抜き。完全に仕事とゴルフを両立したプラン。
ゴルフ練習場のすべての「不」の解決を!ROYAL GREEN Mitoの成功モデルを全国へ
当社の中長期戦略において柱となるのが、ゴルフ業界向けDX事業です。近年注目されるDXですが、既存のゴルフ業界に見られる「省力化」「無人化」「デジタル化」の施策だけではなく、我々はDXを活用した「すべてのサービスの最適化」「業務効率化によるハードとソフトのアップデート」を掲げます。
具体的には、ICデータシステムを活用したデータマーケティング、LINEやSNSを活用した顧客とのコミュニケーションなど、「デジタルマーケティング」を常時行なっていますが、異業種では一般的であるものが、ゴルフ業界ではまだまだ浸透していないのが現状です。
ゴルフ練習場業界の特性として、「異なる商圏」でも「非常に似た事例」があり、「集客力向上の課題」については全国共通。そこで私たちは「全国のゴルフ練習場の仲間づくり」を実現したいと考えます。すでに数社と連携が始まっており、その内容の一部は下記の通りです。
お互いの売上や来場データの全てを持ち寄り、徹底的な傾向分析や対策の共有をして最善策を講じる。この点がDXを活用した「すべてのサービスの最適化」となる。
また、施設により異なる販管費・施設管理費予算の有無や、店舗のスケール感において事例を共有し、弊社のシステムやノウハウを提案。この点が「業務効率化によるハードとソフトのアップデート」となる。
その他にも、当店のホスピタリティサービスに基づいたオペレーションマニュアルの共有や、補助金、助成金を活用したファイナンスサポートなどがあります。
弊社の強みは「直営店舗」があることです。そこで1年間チャレンジしてきた成功事例や、もちろん失敗例も活用した新たな施策を、出来るだけ多くのゴルフ練習場に広めていくことを『事業』としてスタートします。本事業を通して、
→集客が向上、収益が安定し更なる投資につながる。
→顧客満足度が上がり、来場数増、練習場全体が盛り上がる。
→新規ゴルファーが創出され、ゴルフ人口増によりゴルフ場、用品へも波及。
→「ゴルフ業界の発展」につながり、全国の「地元への地域貢献」につながる。
1年間寄稿した本連載を通して、様々な挑戦やその背景、新規施策や顧客の反応など、リアルタイムでお伝えしました。「地方創生×ゴルフ市場の活性化」というビジョンをもとに、今後も当社ならではの挑戦を続けてまいります。今号をもって終了となりますが、今後ともぜひご期待頂けますと幸いです。
これまでお読み頂きました皆様に改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年4月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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