「第二の人生」で繁盛店に育成 ハンズゴルフクラブ~シリーズゴルフ練習場ビジネス~

「第二の人生」で繁盛店に育成 ハンズゴルフクラブ~シリーズゴルフ練習場ビジネス~
ハンズゴルフクラブは横浜市保土ヶ谷にある200ヤード、3階建て、138打席の大型練習場で、今年25周年を迎える。株式会社ハンズゴルフの鞍橋義則総支配人に話を伺った。同氏は大手製薬会社の営業一筋で、子供に手がかからなくなったことから早期退職。好きなゴルフができる環境のハンズゴルフにアルバイトで入り、その後見込まれて支配人に抜擢された。第2の社会人生活をユニークな形で再スタートし、3年半という経歴である。 「人生にとって居心地の良い場所を提供することが、ハンズゴルフクラブの基本コンセプトです」 と、同氏は話す。 ドライビングレンジだけではなく、800本以上の樹林が茂る敷地の中に、ショップ、工房、レストラン、鍼灸院、会員専用のアプローチショットが打てる「ハンズバレー」、グランピングやバーベキューを楽しめる「ハンズパオ」など、多様な施設がそろっている。 株式会社ハンズコーポレーションの韓社長も、 「横浜一、関東一、日本一の練習場を目指すのではなく、ここで過ごすことがゴルファーにとって一番幸せになる環境を目指して施設をつくっていきたいのです」 と、想いを口にした。取材したのは水曜日の午後だったが、駐車場もほぼ満員で賑わっていた。 上達できる練習場を目指すハンズゴルフは、トラックマンレンジを2019年10月、日本で2番目に導入した。その理由を鞍橋総支配人は、 「トラックマンレンジは、あくまでも練習器具の一つとして導入しました。ゴルファーが一番気にすることは『このホールは何ヤード?』『何ヤード飛ばせばどこにいくの?』『2打目はグリーンまで何ヤード?』と、全て距離です。距離をしっかり把握して打つのがゴルフというスポーツの本質です。そこで、これまで感覚に頼って打っていた距離を、しっかり把握できるトラックマンレンジを導入することで、体得できると考えました。ボールの種類によって飛ぶ・飛ばないもありますので、それに合わせて距離表示をしていましたが、トラックマンレンジは経営モデルの中でも大事な役割を果たす機材だと考えています」 ハンズゴルフはトラックマンレンジとメンバー制度を紐づけている。「メンバーが増えれば、来店頻度が高まり、定着すると考えました」 トラックマンレンジを無料で使用できるのはメンバーのみで、メンバー数はトラックマンレンジの導入前は950名、事前告知で導入オープン時1500名になり、現在は4500名になっている。1階の一番良い打席にトラックマンレンジの無料試打席を用意し、体験しやすい環境を整えた。 メンバーになるには入会費1万1000円、次年度からは事務手数料のみの2200円にして、 「お客様の負担を少しでも軽くして楽しんでいただいけるようにしています。現在は月平均2万人の来場があり、導入以前は月平均で1万5000人でしたから、かなりの増加がみられます」 とのことで、トラックマンレンジとメンバー制を紐づけた効果が出ているといえる。更に、来場平均年齢も60歳から47歳に若返えった。 「シニアが減ったのではなく、感覚的な練習から数値に基づいた練習をすることが出来るようになって、ボリュームゾーンが変わったのです」 この変化は劇的であり、ゴルフ界が若い世代を取り込むことの一つのヒントになるかもしれない。

一日19時間営業

現在、来場者のメンバー比率は6割とのこと。当初、トラックマン使用率は45%程度だったが、その比率も高まっており、メンバー制で導入コストも吸収できている。 「打席にはゆったりした椅子も用意して、ゆっくりと時間を過ごせます。基本は1球ずつの料金設定で、曜日、階によって変えています」 ボール料金はB1(グランド)と1F、2Fで、順に平日15・4円、13・2円、11円。土日祝は17・6円、15・4円、13・2円。 「コロナ禍によるゴルフブームの影響もあり、土日祝は1~2時間待ちになることも多く、駐車場待ちの車が道路にあふれてしまうため、土日祝は時間貸しもしています。また、コロナ禍以前の営業時間は平日7時~23時でしたが、少しでも密を避けられるように6時~24時まで広げました。4月から土日祝は5時開業に変えましたが、朝4時半から並んで待っているお客様もいるほどです」 また、夜は勤め帰りの来場者が24時までの営業にして増えている。21時からは「施設利用料」が全員無料になるため、夜間来場者の増加に寄与。これまで10%以下だった女性の来場率も上昇傾向だとか。 「もともと昼間のスクールは女性が多かったが、夜はカップルの来場も増えています」 基本は地元密着だが、3割は東京(主に港区、品川区、世田谷区)からで、世田谷の第三京浜入り口近くに、大きな回転看板を掲示して認知度アップに余念がない。 スクールにも力を入れており、12名のハンズ公認インストラクターを含め、契約プロ・インストラクターは20名以上在籍しているという。グループレッスン、プライベートレッスン、トラックマンレッスンなど、レッスン形態を細かく分けて、ニーズの細分化に対応している。 「スクールが集中しているときは40打席がスクールになることもあるんですよ。通常利用のお客様と、やりくりが大変なこともあります」 と、嬉しい悩みを口にする。 併設のレストランも賑わっていたが、自家製のスイーツも好評で、昨年のクリスマスにはクリスマス用ケーキが300の注文があったとのことである。 ハンズゴルフの従業員は60名で、2交代、3交代で運営している。 「経費は掛かりますが、おもてなしを基本として、その分お客様に支持いただいています。ハンズゴルフはまだまだ改善の余地があります。例えばハンズのおもてなしで、シニアゴルファーのゴルフ寿命の延伸にもつなげていきたいですね」 鞍橋総支配人はシングルの腕前だったが、ハンズゴルフクラブに入ってから、思うように練習はできてないと苦笑する。言葉の端々に、ゴルフへの愛情・熱を感じた。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年7月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら