コロナ禍によりゴルフ練習場の入場者が爆発的に増え、特に若年層の増加は朗報です。
その一方、コロナ禍が収束すれば若者のゴルフ離れが起きかねず、業界に防衛策がないことを危惧しています。社会環境の変化によって、常に入場者は増減しますが、練習場経営者の皆さんはこれらをどのように把握していますか?
把握しなければ具体策は打てません。
実は、いま導入しているカードシステムや入場処理の仕方によって、顧客動向の分析レベルがまったく異なってきます。今回はそうしたカードシステムによる違いと活用法を詳述しましょう。
カードシステムの違いを表示した一覧表を作成・別掲したのでご覧ください。

まず、カード・現金併用システムは、売上を把握できますが、具体的な入場者数は分かりません。現金を扱わずに各種カードのみで営業している施設も、売上は把握できますが入場者数は分かりません。こうした施設はカード売上の増減によって入場者の増減を「推測」しています。
これでは、実際の入場者数の増減が分からないだけではなく、顧客が競合施設に取られても、名前も住所も分からないので取り返すことができません。
次は「プリペイドカード」を使って入場処理を行っている施設の場合です。このケースは「曜日別」の入場者数が分かるため、入金客単価や一人当たり打球数、使用ベースの客単価も分かります。使用ベースの単価が変わらず入金ベースの客単価が上がれば、入場者が増加傾向にあると推測できます。
また「再来場したい」と思うから入金して客単価が上がります。再来場するつもりがなければ、カードを使いきって入金しないので、入金客単価が下がります。同時にカード残高も把握できます。入金客単価や使用客単価とカード残高の増減をチェックすれば、入場者数が増加傾向なのか減少傾向なのかが容易に分かります。
コロナ下で好調だった2020年は入金客単価が高く、カード残高も増えたでしょうが、2021年秋以降は使用客単価に比べて入金客単価が下がり、カード残高も減少傾向ではないでしょうか?
プリペイドカード方式の弱点は、顧客の名前が特定できないため個々の来場動態が把握できません。
フロントスタッフも顧客の名前を覚えられず「○○さん、お久しぶりです」などの声掛けもできません。リライトカードやICカードを導入する施設と比べ、接客のクオリティも見劣りします。
顧客データの活用術
「リライトカード」や「ICカード」を導入している施設の場合は、初回来場時にカードを作成するため、名前、住所、誕生日などを記入してもらいます。
来場してカードを通すと「名前」「前回来場日」「累計来場回数」「会員・一般・スクール生などの種別」「情報メモ」などが瞬時に画面に出ます。
情報メモを読んでから声掛けすれば、ワンモアリップサービスが容易にでき、施設と顧客の親密度が一気に高まります。入社間もないスタッフでも、顧客情報が頭に入れば体験レッスンなどの声掛けもできるでしょう。
こうした接客対応が可能な施設は、積極的にカード作成を勧めているところに限られます。
そのような施設は、「名前不明」のビジターカードの使用率が4%程度と低いので、より精緻な対策が打てますが、ビジターカード使用率が10%を大きく越える施設では対策が歯抜けになりやすいのです。
ビジターが多い施設には、二つの理由が考えられます。一つは顧客データの活用が進んでいないケースで、顧客データの価値が理解できず、組織として顧客データの取得にも取り組んでいません。
二つ目の理由は、カード作成費用の問題です。ICカードはカード代が数百円するため、その費用を来場者から徴収する施設もありますが、カード作成費用の支払いを嫌う方がいるため普及せず、ビジターが増えていくのです。
施設側の気持ちも分かります。再来場するか分からない方に数百円のICカードを無償でわたすことに、抵抗感を覚えるのでしょう。ただ、カード購入を敬遠するビジターが増えて、肝心の入場者増加対策に支障が出るとしたら本末転倒ではないでしょうか?
また、せっかく登録して画面に名前が表示されても名前で呼ばず、「ごゆっくりどうぞ」だけの声掛けでは有効活用になりません。
中には名前を呼ばれることを嫌う方もいますが、それは表情を見れば分かります。最初は嫌がっていても、何回か来場するうちに「そろそろ呼んでよ」と心の声が聞こえる瞬間もあります。
カードの選び方
以上の説明でリライトカード/ICカードの利点が分かると思いますが、新たにカードシステムの入れ替えを検討する経営者に対して、筆者はリライトカードの導入を推奨します。
多くの設備業者は売上の多いICカードの使用を勧めます。リライトカードはトラブルが多いとか、いずれなくなるなどの理由も聞きます。
しかし、カードリーダーを打席から撤去して、フロントで集中管理をすれば、打席カードリーダーのトラブルはゼロになります。
いずれなくなるという話にしても、パソコンなどの情報関連機器の寿命は長くて10年なので、10年経てばまた入れ替えになります。リライトカードの生産もあと10年は続くと聞きますので、この間は支障がないと考えられます。
ICカードの問題点は、1枚数百円もするコストです。このランニングコストを踏まえた上で、どちらにするかを検討する必要があるでしょう。
ところで、皆さんの施設では顧客データの管理をどのようにされていますか? カードシステムの導入施設は、セキュリティー対策が重要なので、代表的な対策をいくつか述べます。
一つ目は、打席やカード情報を管理するシステムは、外部と遮断しておくことです。データを取り出す必要がある場合は、接続する機器のウイルスチェックを徹底しなければなりません。
二つ目は、データの退避です。パソコンの盗難、火災や落雷によるデータの喪失など、不測の事態はいつ起こるか分かりません。これに備えるため、営業終了後に外部のサーバーに自動的にデータを送って保管するシステムもありますので、このシステムの採用を勧めます。費用は掛かりますがカード喪失時の保険と考えましょう。
三つ目は顧客データの管理です。ゴルファーの顧客情報は名簿業者にとって利用価値の高いデータなので、注意が必要。レッスンプロが退職するときなどに持ち出されやすいため、顧客データを管理しているパソコンへのアクセス権を決めるなど厳重な管理が必要です。以上の3点に注意してください。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年3月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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