練習場経営塾 第11回 練習場インショップで 粗利25%を取る方法(2)

練習場経営塾 第11回 練習場インショップで 粗利25%を取る方法(2)
前号で練習場における「クラブ販売」の施策を書きましたが、今回もその続きです。計8項目の施策のうち、1番目と2番目は前回紹介しましたので、本稿では3番目から始めたいと思います。随所に筆者が手掛けた練習場での事例を挿入しながら書き進めます。 [surfing_other_article id=5113][/surfing_other_article] 3番目は、試打会の活用です。試打会での販売は、あらかじめ顧客のクラブをチェックして、A・Bにランク分けした購入見込み客を集めましょう。 この見込み客で「予約表」の60%が埋まれば、一定の売上が見込めます。試打会を1階打席の目立つ場所で行うと冷やかしの客が中心となるため、試打会は一見にぎわっても売上は少なくなりかねません。 そのため試打会はスクール打席の隣で行い、レッスンプロが常に立ち会えるようにします。日頃から自分のスイングを知っているレッスンプロが適切なスペックをアドバイスしてくれ、購入後も打てるようにフォローしてくれる安心感と期待感があれば、購入につながりやすくなります。 特に女性は一般的に、クラブの知識が乏しいので、レッスンプロは頼もしい存在です。そのせいかクラブ売上の25%は女性が占めるという結果が得られました。 試打会販売でレッスンプロの存在は不可欠であり、顧客と面識がないメーカーの販売員まかせはNGです。注文書/請書や発注書をその場で作成するスタッフも必要なため、試打会当日の勤務スケジュールを事前に調整しておきましょう。 打席は、試打用と順番待ち用で2~3打席用意します。さらに打席のマットは毛足の長い新品と入れ替えるなど、ボールが上がりやすくする工夫も必要です。 また、レッスンプロには販売するクラブの知識とクラブの機能に関する知識が不可欠。 知識としては試打するクラブの特長やヘッド体積、フェース角と標準的な総重量程度は事前に頭に入れておくこと。これとは別に、ロフトが1度変わるとバックスピン量がどのくらい増減するかなど機能面の知識もあると信頼感が増すでしょう。 4番目は、購入後にフォローするための「クラブサポートシステム」です。いくら先生のお勧めでも高額なクラブを買うことに抵抗感があるはずで、その気持ちを和らげるためにサポートシステムは有効です。購入して6か月後、1年後、2年後など、複数回にわたりクラブのメンテナンスを行います。 しっかりとチェックして、きれいに磨き上げたクラブを他の生徒の前でお返しすると特別感が演出でき、販促効果も期待できます。 クラブサポートは全数預かり、じっくりクラブをチェックすると次の推奨クラブも選定しやすくなります。このようなサポートシステムを円滑に行うためには、毎月のクラブ販売実績表とは別に、顧客別のクラブ販売実績表を作ることが必要です。 この表をカルテに挟み込み、レッスンプロ全員で共有すれば誰もがフォローでき、次のクラブを推奨するきっかけになります。クラブ販売は売り切るのではなく、継続的に販売することが大事なのです。 例えば、まずは単価の安いウェッジを販売し、次に同じブランドのアイアンを販売する。こうした継続販売を実践するには、そのお客様がどのスペックをいつ、どこで購入したかの記録が必要です。

クラブ工房で演出

5番目は、クラブ販売のための演出「クラブ工房」の活用です。蕎麦打ちを実演している店というのは、それだけで「美味しそう」と期待感が高まります。 これと同じでクラブに詳しいスタッフの存在を印象づけ、相談にも乗って信頼度を高めるのがクラブ工房の役割ですが、ポイントは工房の設置場所で、別棟や打席棟に設けるとコミュニケーションが取れません。 工房で音が出る作業は稀ですし、近年は臭いが少ない溶剤が開発されているので、フロント周辺部への設置をお勧めします。 フロントに隣接していれば、グリップを剥く作業やテープの下巻きなどはフロントのスタッフが手伝えます。 昔はグリップカッターを使う危ない力仕事でしたが、最近はグリップをセットして押せば簡単に切れる安全で廉価な工具があるので誰でも可能。特に仕事が丁寧な女性は、テープの下巻きをきれいにやってくれるので大助かりです。 我々の工房スタッフはクラブの組み立てもできますが、メーカーのプロパークラブの販売に注力するのでクラブ製作は行いません。 レッスンやフロント業務を兼務するクラフトマンが多いため、組み立て販売よりも他の業務を行った方が時間効率が良いからです。

在庫を絞り込む

6番目は、メーカーの絞り込みです。 メーカーは、販売実績が高いショップに対して「販売条件」の改善やサービスをしてくれるので、メーカーを絞って業績を上げれば有利に交渉が進められます。 また、扱うクラブの種類が減るため商品特長やスペックを容易に覚えられる利点もあります。在庫が減り、不良在庫の発生を抑止できる効果も見逃せません。 メーカーを選ぶポイントは、ボールも生産している国内クラブメーカー1社ともう1社の2社体制がお勧めです。 7番目は、不良在庫の発生防止・商品在庫の圧縮です。我々の練習場インショップは年商2000万円ですが、通常の在庫は仕入れ価格で170万円程度です。 クラブ60万円、ボール40万円、グリップ他15万円、グローブ15万円、その他40万円といったところでしょう。 もちろん在庫は新商品の入荷時期やメーカーの販促キャンペーンなどで増減しますが、標準在庫はこの程度なのです。練習場インショップは常連客への販売が多く、納品まで待ってもらえるので、無理な在庫を必要としません。 シューズなどは少量を在庫しても意味がないので、在庫ゼロの場合が大半です。 その代わり年に2回ほどシューズの委託販売をして1か月で30足程度販売します。 一方キャディバッグはショップに鮮やかな彩りを添えてくれる貴重な商材なので、目立つ色のバッグを常時数本展示します。一定期間売れなくてもコンペ賞品などに使えるので、便利です。 在庫を圧縮する際に大切なのが「発注権限」の明確化です。客注分は担当者まかせで良いのですが、在庫分の発注については、金額に応じて「発注承認」を得る制度が必要です。 担当者が自由に発注できると在庫が徐々に膨らんでしまうので要注意です!

レッスン連動型販売

8番目は、スタッフを活用した販売キャンペーンです。これにはレッスンプロが主役のキャンペーンと、フロントスタッフによるキャンペーンの2種類があり、前者の場合はスクールとのコラボ企画が有効でしょう。 アプローチ強化月間では各種のウェッジを用意して販売、パター強化月間ではパターを販売するなど、スクールの企画とコラボすると販売チャンスが広がります。 生徒にとってウェッジやパターはそれほど高額ではないので、わざわざ量販店に行くよりも練習場インショップで購入する便利さを選ぶ傾向にあるようです。 こうしたミニ企画の連発によってインショップで購入する習慣付けを行い、さらに先述したクラブメンテナンスで手厚くフォロー、顧客の囲い込みを図るのです。 次にフロントスタッフの場合ですが、こちらは年間の販売キャンペーン計画に基づいて活動します。 ゴルフシーズンの 3~4月と9~10月はスクールの集客を優先するため、ショップはキャディバッグなどの展示販売にとどめますが、それ以外の月は積極的な企画で販売に注力します。 例えば梅雨入り前とシーズンオフ、またはシーズン入り直前の年2回、グリップキャンペーンを行います。これはグリップ交換の必要性を訴求するための活動で、値引きキャンペーンではありません。 なので1本では値引きせず、数本まとめ買いで値引きを適用します。グリップは粗利率50%を越える商材なので、簡単に値引したらもったいないのです。 これ以外ではボール、キャディバック、シューズキャンペーンを年2回ずつ行います。 その際とても大事なことは、キャンペーンの前月に商品勉強会を行うこと。商品知識がないスタッフは声掛けが消極的になるので勉強会で自信をつけ、年2回ずつの勉強会で知識が深まります。知識がついたら次はセールストークの勉強会に切り替えましょう。 グローブの勉強会であれば、最初は材質の違いによる特長や着色の違いなどを覚えます。慣れてくるとグローブサイズの測り方を学び、次はセールストークへと移りますが、実はグローブの販売には3種類の方法があるのです。 1番目は、1枚ずつの値引き販売。 2番目は1枚では値引きせず、3~5枚のまとめ買いで多めの値引きをする方法。大量発注で仕入れるので粗利は確保できます。 3番目は「サマージャンボ宝くじ」や「年末ジャンボ宝くじ」と称して、2枚2000円で合計300セットを販売する方法です。 やり方は、購入と引き換えに抽選券を渡し、後日当選者を発表するものです。一等の賞品はペア宿泊券で、「飛び賞」にゴルフ無料プレー券を用意するなど、少々手間はかかりますが、閑散期で60万円の売上は魅力的です。 以上、練習場インショップにおける様々な販売戦略をご紹介しましたが、前提として大切なことが2点あります。 一つは、日頃から顧客とのスキンシップを大切にすることです。いつも「おはようございます」「ごゆっくりどうぞ」など型通りの挨拶をするスタッフが、キャンペーンだからと急に声掛けしてもお客様は心を開きません。日頃からワンモアリップサービスなどでコミュニケーションを取っていると、売り込みの声掛けにも気軽に反応して頂けます。 2点目は販売データの整理です。 例えば「宝くじ」の前回購入者が、入場時にカードを挿入すると画面に購入実績が表示されるので、スタッフは「今回もお願いします」と声掛けしやすくなります。 ボールもグローブも前回購入したサイズや色がわかるので「前回通りでいいよ」と言われればすぐに対応できます。販売データの整理はお客様の利便性だけではなく、フロントスタッフが自信をもって声掛けできる根拠にもなるのです。 顧客とのスキンシップもデータ整理も、日々の地道な活動の積み重ね。まさに継続は力なり、です。 2か月にわたりショップの話を書きましたが、如何だったでしょうか? 筆者は常々「打席」「スクール」「ショップ」の三位一体経営を提唱していますが、それぞれがきちんと連携することでショップの売上増が期待できます。特にレッスンプロとの連携具合で売上は大きく異なります。クラブや用品販売で適正利益を得るためには、それに応じた仕掛けや努力が不可欠。日々の仕事は大変ですが、 「あのクラブ、良かったよ!」 と笑顔のお客様を見ると、やっててよかったなあと心から思います。皆さんも試してみませんか?
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年9月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら