今回は「施設管理」について詳述します。1)設備の維持管理、2)清潔感を向上させる6S、3)トラブル時の対応、の3項目が中心です。
まず、施設管理で大事なことは定期点検を行ってトラブルの発生を未然に防ぐこと。これは「予防メンテナンス」の考え方で、トラブル時の対応に比べコストが安く対応も容易になります。事前にトラブルや点検の周期を調べてから導入すると効率的な運用ができます。
練習場の設備で最もリスクの高いものが鉄塔・ネットです。倒壊や座屈すると高額の出費だけでなく営業継続も危うくなりますが、対策には「事前の対策」と「状況対応」の2種類があります。
事前の対策は、遅番勤務者がネットで得た天気予報の情報を印刷し、所定の場所に張り出して対応を決める方法をお勧めします。風が強まる場合は「風力欄」に赤丸を付けて注意喚起し、営業終了時のネットの降下位置を決めます。
出勤した際に色付きのリボンを持ってネット外周をまわる日常点検も大切です。ボールが落ちていたりネットの穴に気づいた場合は、その場所にリボンを縛り付けて修理の際の目印にします。
状況対応時に求められるのは早目の対応です。風が強まりそうな場合は早めに2階、3階打席をクローズしてネットをあらかじめ下げておきます。どの程度の風でネットを下げるかは業者の指導や過去の経験値から判断しますが、雨や雪が降るとネットに付着して重くなり、透過率も下がるのでさらに危険性が増します。
降雨の場合は通常時の風速+5mで降下を判断します。湿ったボタン雪とサラサラの粉雪との違いは多少ありますが、ネットがうっすらと白くなってきたら降下しなければなりません。判断基準となる風速計はスタッフが常駐しているフロントなどに置き、最初は10m程度で警報が鳴るように設定。以後は3m程度ずつ設定風速を上げていく方法をお勧めします。
鉄塔構造による違いも重要です。一般に鋼管やトラス構造の方がコンクリートポールよりも横風に強いと言われます。天井ネット方式の場合は強風で天井ネットが上下にあおられるため、より早めの対応が求められます。
ネット下降時に大切なことは風の強弱を見分けることと、風下側の突起物に注意することです。風は波と同じように強く吹いたり弱まったりするので、下降スイッチは風が一瞬弱まった時に押します。ネットは風下側に大きくたなびくため、強風時は風下側に見張りを立て、ネットの引っ掛かりなどに注意しながら下ろします。
ネットの色は、外部の風景を見せたい時は茶色、視界を少しでも遮りたい時は緑色が適します。ネットを保持するワイヤーは、破れの軽減とネット仕立ての効率化を図る目的からポリロープを使用するケースが増えているので、ネット業者と相談しましょう。
ウィンチの予備を1台は持っておくことです。ウィンチは回転速度によってネットの上がり方が異なるため、同型の機器をそろえる必要がありますが、壊れた時にすぐに手配できるものではありません。あらかじめネット業者に依頼しておき、廃業した練習場の中古品を仕入れるなどして用意しておくことをお勧めします。
ティーアップ機は、全自動方式の場合は機種による優位さよりもカードシステムの優位さの方が大きいように思います。この点は打席の号で既報したのでそちらを参照願います。ボール販売機方式の場合は、ボールをティーに乗せるとティーが下から上がってくる方式が急速に増えています。こちらを導入する際もカードシステムの優位さをチェックしましょう。
ボール洗浄機は、ローラーの上で水をかけながらボールを転がし洗浄する方式と、加圧しながら洗浄する方式の2種類を組み合わせることをお勧めします。注意が必要なのはボール洗浄液の使用です。塩素系の洗浄液はボール表面の塗膜をはがすのでボールの傷みが早まります。中性の洗浄液は大丈夫なので、洗浄液の成分を調べてから使うことをお勧めします。
フェアウェイの人工芝は近年、材質や張り方が大きく変わり、ボール集球の性能や色の付着の問題も徐々に改善されているようです。私は2種類のフェアウェイチェックを行っていました。一つは営業中に人工芝部分を見てまわり、ボールが溜まっている部分の有無を確認。特にU字溝を先頭にしてボールが溜まっている場合は、U字溝の縁が下がっている証拠で、状況がはなはだしい場合は部分補修をします。
また、私は早朝のフェアウェイを底の柔らかい靴でくまなく歩き、足の裏でフェアウェイの凹凸を感じることで、水の流れる道が出来ていないかをチェックしていました。道ができると徐々に広がり、人工芝を破ってしまう。段差が大きくなったと感じたら、費用をかけてでも部分補修した方が人工芝は長持ちします。天然芝の場合は、雨の上がった日の朝にシャフトを持って裸足で歩くと、足の裏で潜っているボールを感じ取れるので掘り出していました。
打席近くの人工芝部分や2階打席の前のひさしの部分に張った人工芝が、カビで黒くなったケースを見かけます。フェアウェイ用人工芝のナイロンは水を吸うためカビが生えますが、色が付くので敬遠されるポリプロピレンは、融点は低いが水を吸わないのでカビが発生しにくい素材です。このため打席近くの部分や打席前のひさし部分は、ポリプロピレン製の人工芝を張ることをお勧めします。
練習ボールの有意差は施設によって違うので判断が難しいですね。シニア層が多い施設は手に優しいワンピースボールがいいでしょうし、若年層が多い施設はツーピースが良いものの、ツーピースは打ち出し角が高いのでボールの飛び出しに注意が必要です。
私がこだわったのはマットです。手の衝撃をやわらげるためとマット価格を下げるため、アイアンマットの下を掘り込んでスポンジゴムを入れました。マット自体の厚みを減らせるので、長い目で見ればコストダウンにつながります。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年10月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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