千葉県八千代市大和田新田にある「明治ゴルフセンター」を訪ねた。駐車場に車を停めて歩を進めると、入り口横の天然芝のパッティンググリーンの美しさに目を奪われる。今回は、2016年3月にリニューアルオープンした「明治ゴルフセンター」の経営会社・サンカジロの上代修大専務に話を聞いた。
上代(かじろ)という苗字は千葉県の大網白里町北今泉付近にルーツがあり、更に遡れば、島根あたりが発祥で、和歌山を経て千葉に来たのではないかとのことである。
曽祖父が明治時代の後期に、現在の江東区亀戸の大島団地付近で酪農を始め、「上代牧場」として乳牛を飼育していた。明治、大正と時代が進み、都市化の影響で現在の八千代市に昭和11(1936)年に移転した。八千代地域では酪農のパイオニアだったという。
「乳牛の交配センターを近隣5つの牧場と共同で創設するなど、地域発展のために尽くしてきた。八千代市の小学校の教材にも取り上げられているんです」
祖父の代も酪農は続き、上代専務の父・修二氏は次男だったので、長男が牧場を継ぎ、次男は新しいことを始める必要があった。1970年代はボウリングブーム。銀行や知人の紹介でボウリング場を始めようとの話もあったが、父親がオーストラリアを2か月旅行したときに、現地のボウリング場は米国の中古品を使ってのビジネスとなっており、先がないのではと考えて、ゴルフ練習場事業に踏み切った。
1972年7月、牧場の飼料畑の跡に2階100打席の練習場をオープンする。当時父親は東京農大の学生で、社長は祖父であったが、専務としての学生起業であった。開業1年後には9ホールのショートコースもオープン。開業時の名称は「明治ゴルフセンター」で、ショートコースがオープンしてからは「明治総合ゴルフセンター」となった。
「明治ゴルフセンター」の名前の由来は酪農経営に由来する。上代専務の説明を聞いてみよう。
「上代牧場の取引先に明治乳業がありまして、当時明治乳業の社長だった国生義夫さんから『練習場をするなら明治乳業の名前とロゴを使ったらどうか』との話があって、『明治ゴルフセンター』としたそうです。上代牧場はピーク時、乳牛を100頭飼育しており、明治乳業にとっても重要な取引先でしたから」
牧歌的な時代だった。というのは2016年のリニューアルを機に、コンプライアンスの観点から明治ホールディングスと話し合い、明治の名称は残すが「ロゴは使わない」となったからだ。
地域貢献の構想
1989年、練習場の敷地を東葉高速線が通ることとなり、練習場建屋を建て替え、2階120打席、3階スクール打席、アプローチエリアも併設した。その後、鉄道近隣の練習場は事故が起こる可能性もあるため、車で約5分の現在の場所に土地を購入、移転することになる。
新施設の開場は2016年3月で、約2万3000坪の敷地に250ヤード、2階98打席のドライビングレンジと、5面の天然芝パッティング・アプローチグリーンにゴルフショップも併設している。
「明治ゴルフセンター」で目立つのは、入り口付近にある3000坪を超す天然芝のアプローチエリアと、400坪を超すパッティング専用のベントグリーンだ。練習場のホームページには「本芝のアプローチ練習場を備えた、アスリートのための練習場」と誇らしげに謳ってある。
西郷真央などプロゴルファーも練習に訪れ、ナショナルチームのジュニアには無料で開放している。アプローチ、パッティングエリアは、クラブハウスからICカードで自動扉を出入りできる。料金は30分700円だ。400坪のグリーンはオーガスタの18番ホールを模して非常にハイクオリティだ。
「明治ゴルフセンター」を経営するサンカジロのグループには本千葉CCも入っており、週に一度、同コースのサブキーパーが来て、芝を管理しているという。
打席は250ヤードで、1階は自動ティーアップ機の44打席、2階はカゴで提供する44打席で、練習ボールはウレタン2ピース。「アスリートのための練習場」にふさわしく、球の落ち際や弾道を確認できる。上代専務がこう話す。
「施設のハード面は充実していますが、大事なのはソフト面です。特に接客は重要で、細かい配慮をしています。フロント担当がお客様の顔と名前を憶えるのは当たり前。グループでの来場者には必ず打席を並べるようにしています。バラバラに空いている打席をご案内した方が効率は良いのですが、お二人できたときに楽しく練習してもらえるようにしています。ご案内する順番が前後することも含めて、お客様が気持ちよく練習してもらえるように、フロントは気を張っていると思います」
競合練習場は半径5㎞圏内に12施設あり、屋外も6施設あるのだが、「明治ゴルフセンター」が一番の賑わいをみせているとか。また、練習場「友の会コンペ」も充実しており、毎月15~18組で近隣の中山CC、総武CC、船橋CCなど名門コースで実施している。
上代専務の父親で社長の修二氏は八千代商工会議所の会頭を15年間勤め、トップアマであったことを含めて人脈が広い。これも集客の武器になっていることは間違いない。
年間来場者は昨年実績で約18万人とのことである。この付近は東京のベッドタウンであり、来場者は40代20%、50代25%、60代10%。女性比率も17%前後と比較的高い。
「来場者は千葉が中心なんですが、20%弱は都内からが占めます。充実した練習環境を目当てに来場されるのだと思います」
その充実した施設の継承については、ホールディングス化を含めて検討しているそうだ。相続税問題で廃業する練習場が増える中、事業としての盤石を目指している。
「地域貢献の一環としてバッティングセンター、ドローン練習場、フットサル施設を立ち上げて、スポーツ・モビリティ・パークとします。今後もいろんな複合施設をつくっていきたいですね」
練習場が地域貢献の重要な役割を果たすことを期待したい。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年1月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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