東京で桜が満開を迎えた3月28日、日本最大級の250ヤード、300打席をもつロッテ葛西ゴルフ(東京都)で「SAKURA TEE Fes23」が開催された。昨年末に全打席にトップトレーサー・レンジ(TTR)が導入されたことを記念し、TTRの販売代理店であるGDOが企画したもの。ゴルフをする、しないに関わらず、誰もが楽しめるエンターテインメント空間の提案を目的としたイベントだった。
今回は「近未来型ブース」をテーマに16打席を活用し、2打席を1ブースにして1グループ4名で90分間遊べるように設定。手ぶらで気軽に来てもらえるようレンタルクラブを用意し、メディア、インフルエンサーをはじめ、クライアントやTTRの新規導入を検討している練習場幹部など総勢100名を招待。お弁当やお菓子を食べながら、ゲーム感覚で楽しむ姿が見られた。
当日は、来場者全員が一斉にホールインワンチャレンジを実施。ロッテ皆吉台カントリー倶楽部プレー券やGDOポイントなどの賞品獲得を目指して、真剣に遊ぶ姿が印象的だった。
また、井上莉花、今井鮎美とのニアピン対決や、日本シャフト、グラファイトデザイン、USTMamiya、KBSのシャフト試打会も行い、単に練習目的ではなく、様々なゴルフレンジの活用方法を業界内外へ発信した。
GDOの練習場ビジネスユニット佐藤昌巳ユニット長にイベントの意図と感想を聞いた。
「趣旨はTTRのローンチ記念と同時に〝近未来のゴルフの魅力〟を感じてもらうことでした。また、施設と利用者や関係者とのコミュニケーションを深め、GDOやTTRに対する期待感を高めることも狙いです。サービスの魅力を発信し続ける大切さを全社で実感するため、当日はGDO社員60名以上が総出でイベント運営やお客様対応にあたりました。大勢の人々に来場いただき、TTRに対する関心や期待が高まっていることを実感しましたし、施設スタッフとの協力があったおかげで、イベント自体もスムーズに進めることができ、成功裏に終わることができました」
イベントに参加したプロゴルファーの井上莉花は、
「普段はトータルの飛距離に注目しがちですが、TTRでキャリーの飛距離を知ることで、コースマネージメントに役立てることができます。気温や雨や風などの天候で飛距離が変わるので、正確な数値をデータで知っておくのも大切。お友達とラウンドモードで真剣に対決すれば、実践的な練習になりますし、ニアピン、ドラコンモードで盛り上がるのもおススメ。辛い反復練習より、楽しみながら上達できたほうがいいですよね」
と語った。
日本では、ラウンド前の練習を目的として一人黙々と集中して打席に立つゴルファーが主流。ゴルフブームにより、初心者や若者がグループで練習場に押し寄せて、既存のゴルファーとマナーをめぐってトラブルになるケースが増えたと聞く。一方、アメリカではお酒を片手に音楽を聴きながら光り輝くターゲットに向かってボールを打ってゲームを楽しむトップゴルフや、ドライブシャックなどの施設が急成長を見せている。米ナショナルゴルフファウンデーション(NGF)によると練習場にしか行かない「オフコース・ゴルファー」は1320万人でコロナ禍をきっかけに急増した。
辛い練習を積み重ねればいつかは報われると信じてきた世代にとっては、ゴルフレンジでパーティと聞くと違和感が生じるのも理解できる。
日本では文化や環境が違うので馴染まないと言われてきた「練習場のエンタメ化」だが、イベント参加者の満足した表情を見る限りでは、ゴルフコース外での楽しみ方にはまだまだ開発の余地があるし、そのポテンシャルは大いにあると感じた。
■コメント
参加者にイベントの感想やTTRの活用方法を聞いた。
谷口明夏氏(株式会社ZOZO)
TTRを利用したのは初めてでしたが、ゲーム性があり、チーム戦でわいわいできて、とても楽しかったです。プライベートでも複数人で遊びに来たいなと思いました。もっと飛んでいると思い込んでいたので、ドライバーショットの飛距離を見てショックを受けましたが、自分の実力を知ることができて、練習の目標設定に役立つと思いました。
杉本夏希氏(株式会社ALBA)
TTRを活用し、招待客だけでなく、練習場内すべての人を巻き込む企画は、とても素敵だと感じました。練習場は一人で黙々とやるイメージが強く、初心者やこれからゴルフを始める人にとってなかなか行きづらい場所という認識があります。今回のような取り組みが定期的に開催されれば、ボウリングやダーツなどのように仲間内で「ちょっと遊びに行く場所」の選択肢に練習場も入ってきそうだと、わくわくしました。
村上侑妃氏(株式会社ゴルフトゥデイ社)
本当に「豪華なイベント」としか言いようがないです。初心者から上級者まで楽しめるTTRが体験できて、お花見感覚で気分も上がりましたし、お弁当やお菓子を食べながら、ゴルフ初心者のお友達と楽しく練習ができました。全打席でのホールインワンチャレンジの開催時間になると、みんなが一斉に真剣に打ちまくっている姿が面白かったです。女子は体力が無く練習し続けるのが辛いので、ボウリング場やダーツに行く感覚で気軽にできてよかったです。
鍋島のぞみ氏(BULLET株式会社)
練習場がこうなって欲しいな、と思う理想の姿でした。夜景を見ながら練習ができるので「新しい大人の夜遊び」的な見た目の楽しさもあり、ゴルフをしたことが無い人も誘いやすいですね。ゴルフは重い腰を上げないと始められないスポーツだと思われがちなので、カジュアルにきっかけをつくれる空間があるのは嬉しいことです。練習場がエンターテインメントのひとつとして成り立つ可能性は十分ありますね。食事後の2軒目として、カラオケよりコミュニケーションもとれるし、屋外で安全だし、すごくいいと思います。ロッテ葛西ゴルフはアクセスがよく、24時間営業なので、仕事帰りでも間に合うから、こうしたイベントには最適です。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年5月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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