AIで弾道測定器に「新領域」? レッスンとフィッティングの幅を広げる『FOCUS』の実力

AIで弾道測定器に「新領域」? レッスンとフィッティングの幅を広げる『FOCUS』の実力

本格展開を開始した「第3の領域」「AI CLUB TRACER」

今年1月、「PGA Merchandise show」(PGAショー)での発表を皮切りに本格的に展開を開始したアンプラスの自社製品『FOCUS(フォーカス)』(176万円)が既に数十台を販売しインドア市場にじわりと浸透し始めている。 同社は『FOCUS』をシミュレーターでもなく弾道測定器でもない「第3の領域」として位置付け、「AI CLUB TRACER」(AIクラブトレーサー)と命名し商標登録もしている。 この新領域「AIクラブトレーサー」の秘密は同社独自のクラブを自動認識するAI技術(特許取得済)にある。アドレスするだけでアイアンとドライバーの違いも自動検知するため、事前準備不要で使うことができる。 さらに、他と一線を画すのは打った直後のまだ余韻が残っている段階で即座にショットを分析して「足元」にデータを投影する点にある。実際にショットされたマットの位置(=ゴルファーの視線上)に、実際のフェース軌道を描くので、ゴルファーの直感に訴えると同時にさらなる理解に繋がり、スイングやショットも改善しやすくなるというわけだ。 また、データはあえて削ぎ落としシンプルかつ直感的に表示しており、レッスンやフィッティングで最も重要なインパクト前後40~60cmのヘッド軌道をアニメーション表示することで実際のスイングを再現している。 一般的な弾道測定器では「クラブパス」や「フェース角」を「数字」で表示するため、読み解くには専門知識が必要だ。ましてや一般ゴルファーはこの数字を羅列されてもどう改善に役立てればいいのか困るだろう。 一方、『FOCUS』は視覚的にアニメーションでヘッドの動きが表示されるため、一目でエラーと改善点が分かるというわけだ。 アンプラス FOCUS 「5UNDERS GOLF RANGE」(港区)を運営する山田直知プロによると、 「『FOCUS』はインパクト前後のヘッド軌道を可視化できるので、生徒さんにミスの原因となっている軌道のエラーを伝えやすくなり、納得感も上がりました。レッスン現場で多いのは、その場では上手くできても次のレッスンまでの自主練でできなくなってしまうケースです。『FOCUS』を使えば自主練の質も上げられると思います。 それと私は上達の近道は球の曲げ方を習得することだと考えています。そのためにはクラブ軌道の変え方や仕組みを理解することが必要で、『FOCUS』は正にそういったレッスンがしやすい。私の指導法に合致すると思ったのが導入の理由です」 また、クラブ軌道のアニメーションの下に表示する3つのデータは、例えば飛びの3要素であるボールスピード、打ち出し角、スピン量を表示し、飛距離アップレッスンや飛ぶクラブのフィッティングに活用するなどといった変更も都度できる。現場目線で作られた製品と言えるだろう。

独自計測項目「ゾーン角」とは?

さらに『FOCUS』独自の計測項目として「ゾーン角」が表示できるようになっている。「ゾーン角」(商標登録申請中)とはインパクトの約30㎝手前のフェース角のことを意味しており、これが20度~30度の間になっているとインパクトでフェースをスクエアに戻しやすい傾向があるとしたものだ。同社の膨大なショットデータにより導き出したもので、今後も検証を重ねていく構えだ。「ゾーン角」によってレッスンやフィッティングの幅が広がりそうだ。

『FOCUS』×Foresight Sportsのコラボが実現

アンプラス FOCUS 実は『FOCUS』はPGAショーのForesight Sports(フォーサイト・スポーツ)社のブースでも展示され、世界中の業界関係者から注目を浴びた。その結果、フォーサイト・スポーツ社の『GC』シリーズと『FOCUS』をパッケージにして販売するコラボ製品『FOCUS powered by Foresight Sports』が実現した。 アンプラスは『GC』シリーズと『FOCUS』を連動させ、モニターと足元に同じ数値が出るように改良。新製品の『GC3アナリシスパッケージ』の価格はソフト込みで70万4000円(税込)と従来の『GC』シリーズに比べて安価だ。 『FOCUS』と組み合わせても246万円程度と、『GC』シリーズの最上位機種『GCクアッド』と遜色のない金額で導入できる。そのことからも同コラボ製品が今後の主流になっていくことが予想される。両社は協力して同コラボ製品だけでなく『FOCUS』単体も北米を始めとした世界中に広めていく構えだ。

打席セットアップがスマホで自動化

さらに同社は導入施設向けに、遠隔で施設のあらゆる電源の自動ONOFFや操作ができる新機能の提供を開始した。操作はスマートフォンから行うだけで予約システムとの連動も可能だ。直前まで電源をOFFにしておき、予約者が入室する5分前には打席と画面映像が全て準備できているという流れが綿密に計算され自動化されている。これが広がれば無人インドアの省電力化にも繋がりそうだ。

実務も「足元」を重視

新技術を次々と展開する同社だが、営業マンには数か月~1年に渡る打席の施工現場を経験させることでインドアの打球事故で多いボールの跳ね返りを始めとする危険察知能力やユーザーへの安全対策を徹底的に体で覚えさせ、これをクリアすることを必須としている。 一見技術集団に思われるが、このような愚直な営業育成プロセスにこだわることで創業以来20年以上ボールの跳ね返り事故0件を守り続けている。『FOCUS』のコンセプト同様、営業方針も基本の「足元」を大切にしてきたことが同社の現在と未来の成功を物語っている。