神奈川県横浜市鶴見区獅子ヶ谷に「ニューツルミゴルフ練習場」はある。道路を挟んで広々とした「二つ池」があり、練習場の裏側には森も見え、都会にありながら緑を感じられる、環境抜群の練習場だ。最寄りのJR鶴見駅、東急綱島駅からのバス停が目の前で、運行は5分間隔、JR鶴見駅からはバスで約12分の好アクセス。同施設の成り立ちやコンセプトについて、運営する晝間産業有限会社・取締役支配人・晝間(ひるま)泰久氏に取材した。
ニューツルミゴルフ練習場の開場は1970年11月である。開場当時は2階建ての全40打席125ヤードの規模。晝間支配人の父・宏一氏が創業した。1985年3月には打席や鉄塔も含めて全面リニューアル、3階建て88打席と、大幅にスケールアップしている。
晝間家は代々、この地域で農業などを営んでいた。苗字の「晝」は昼の旧字ということで、
「読みづらいですよね。ゴルフ場のバッグ置き場で『は』行のところに置いてもらえません(笑)」
晝間姓はこの地域に十数軒あるという。祖父の代までは農業をしていて、練習場の前の「二つ池」は江戸時代から農業用水だった。
「父は日本郵船に勤務する会社員でしたが、27歳の時に先祖代々の土地を活用するため練習場を起業しました。2011年に亡くなったので、創業時の詳しい状況はわかりませんが、ゴルフ練習場を始める前に結婚して、母の父親がレインボーカントリー倶楽部のメンバーだったので、父も結婚後入会している。その影響があったのでは・・・・」
1985年の全面リニューアル時に晝間氏は中学1年生で、打席待ちが常に出るほど賑わっていて、練習場の仕事を手伝った記憶があるという。また、父親がゴルフ場の関係で松井功プロと親しくなり、リニューアル時には来場していた記憶もある。時代は、バブルへ向かうゴルフブームで、経営は順調だった。
晝間氏は大学卒業後10年ほど会社員をし、2005年に晝間産業へ入社。当時は父・宏一氏が社長で、晝間氏は取締役だったが、父親の他界を機に晝間氏が責任者として運営にあたっている。社長は晝間氏の兄だが、大手企業に勤めている。
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ニューツルミゴルフ練習場 ゴルフキッズ[/caption]
練習場のコンセプトは、
「敷居を低く、誰でもいつでも気楽に利用できるゴルフ練習場です。全てが叶う、地域ゴルフのハブ施設を目指しています」
同氏の経営参画後、そのコンセプトを実践すべく、いくつかの改革を実施。その一つが、2010年に中古ゴルフショップのゴルフキッズを練習場内の売店に誘致したことで、それ以前はグローブなど消耗品を少量置く程度だった。2018年にはゴルフキッズを「自社運営」にしている。今でこそ、ゴルフパートナーなど練習場に中古ショップが入ることは珍しくないが、すぐに試打できる練習場と中古ショップとの相性は良く、その先駆けと言える取り組みであった。自社運営にあたり古物商の資格も取得している。
##トラックマン無料
敷居を低くするためにリーズナブルな価格設定をしている。現在、入場料300円、平日1000円/90球で、100円9球も可。
「練習場のコンセプトとして『打席貸し』ではなく、じっくり考えながら練習するには『1球貸し』が良いと考えたのです。また、会員制にせず、いつでも誰でも同じ値段の安心感を提供してきました」
プリペイドカードやICカードを導入せず、シンプルに現金決済で入場料+ボール代でやってきたが、来場者から「買い物や交通機関で使っている電子マネーを使えないか」との声もあり、ゴルフ練習場総合プランニングの喜和産業に相談。2020年10月からSuicaやnanacoなどの電子マネーを、球貸しに使えるシステムを導入した。電子マネーの利用率は、
「開始半年で25%でしたが、現在は50%まで高まっています。利便性の向上と、若い世代との親和性も高いですね。また、電子マネーの決済額が直接銀行に入金されることで、現金の取り扱いが少なくなり、安全性も高まりました」
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ニューツルミゴルフ練習場 トラックマン[/caption]
若い世代への取り込みとして、2018年9月よりSNS(LINE、インスタグラム、X)でのPRも始めている。場内のあらゆる場所にQRコードを掲示するなど積極的に取り組んだ結果、LINE会員は7000人を超え、
「LINEの分析で年齢層や男女比率もわかるようになりました。男女比は78:22で、50歳以上が45%、40~50歳が22.5%、30~40歳が9.1%、20~30歳は14.5%と、細かく状況が把握できます。若い世代の増加を実感しています」
また、2018年12月からはゴルフ未経験者専門の「はじめてゴルフスクール」を開始した。
「未経験者の掘り起こしが目的で、2023年11月末で受講者が642名になっています」
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ニューツルミゴルフ練習場 打席[/caption]
料金は4回で4000円(入場料、ボール代、レッスン料込)と格安。若い世代を中心に、ゴルフ未経験者が最初にゴルフに触れる機会を創出している。
昨年10月には神奈川県の練習場として4番目にトラックマンレンジを導入したという。面白いのは導入後、トラックマンの使用料を取っておらず、値上げもしていないことだ。その理由について、
「トラックマンの導入効果で入場者が増えると考えており、使用料を取らなくても、集客増で採算が取れると見込んでいます。たしかに初期投資にはお金がかかりますが、コロナ禍で収益が増加した分、お客様に還元したかった」
と、利用者にとっては嬉しい話。
ニューツルミゴルフ練習場は、少し離れたところに天然芝で1000m2のアプローチ専用練習場もある。ゴルファー創出の拠点として、今後の活動にも期待が高まる。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年2月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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