<進化するゴルフ練習場の舞台裏1> 進化する練習場の「顧客データ」分析システムとは?

<進化するゴルフ練習場の舞台裏1> 進化する練習場の「顧客データ」分析システムとは?
ゴルフ練習場のシステムは、次の経緯で進化してきました。まず、現金・コインでのボール販売機からプリペイドカードでの前払い制度が広がり、そしてボールをカゴで運ばなくても自動でティーアップされるようになり、さらにリライトカードのチャージ制度が登場した。近年、一番増えているのはICカードでのチャージ制度でしょう。さらに横浜市のハンズゴルフクラブのように、カードは使わず「顔認証」でチャージやチェックインができるようにもなりました。 来場するゴルファーとしては料金の払い方やチェックインの方法が変わるくらいの印象だと思いますが、練習場側にとっての大きな変化は「来場者データの統計処理が可能になった」ことでしょう。 リライトカードやICカード、そして顔認証のように来場者を練習場側で管理して、顧客ごとに残高管理ができるようになり、来場者の属性データが得られるようになった。これは、練習場経営上とても大きな変化です。性別・年齢・住居地域の把握だけではなく、来場の特性(来場頻度や曜日・時間帯など)や行動の特性(一度の来場でのチャージ額、打球数や打席の選択など)を統計処理して分析できるようになる。来場者の傾向分析ができれば、料金体系やキャンペーンなどの検討が高い精度で可能になります。 [caption id="attachment_81508" align="aligncenter" width="788"] グラフ2[/caption] 私がお付き合いしてきた練習場経営者や支配人は戦略家が多く、システム化される前から自力でデータを積み重ねて分析し、実際に成果を出してきた現場をたくさん見ました。その一方、ICカード化をしたのになかなかデータを活用できていない練習場もありました。 そこで私は、当社のゴルフ練習場向けシステムを使い、データを有効活用してもらえないだろうかと考えました。もともと様々な分析が可能な帳票なども装備していましたが、どちらかというと財務処理的に必要なものが多く、練習場の経営戦略を検討する目的で使いやすく提供したいと考えたわけです。 ハンズゴルフクラブの元支配人で、売上を大幅に改善した実績のある山崎博之さんは練習場コンサルティングの仕事をされています。全日本ゴルフ練習場連盟の会合などでご一緒する中、コンサルティングの仕事で使う分析の仕方をシステム化したいとの話もあり、システム化できれば山崎さんも、練習場システムからエクスポートしたデータをExcelでグラフ化するなどの手間がなくなるので「是非やりましょう」と意気投合。練習場分析システムの開発を進めました。 当初は山崎さんのコンサルティング内容で使うグラフなどを中心に用意したので、どちらかというと「全容を把握した上で目標設定をして達成度管理を行う」ための機能が多かったのですが、できた機能から順次練習場で使ってもらうと、「目標設定の前に、現状把握をもっと細かく行いたい」との要望が多く、具体的な希望を叶える形で次々とシステム化していきました。 [caption id="attachment_81509" align="aligncenter" width="788"] グラフ3[/caption] 本当は開発コストも回収しなければならないので、分析システムに関わる月額利用料をいただこうと考えましたが、もともとシステム全体の保守費をいただいており、さらに上乗せするのは抵抗を感じたことと、せっかく便利な機能なのでまずは使用施設を広げたいと考えて、追加費用なしで提供しました。

データは「宝」です!

多くの練習場で導入され、私自身がサポートしながら、データがきちんと集計されているかなどを確認しつつグラフを眺めると、実は練習場それぞれに特徴があり、それは各練習場の営業方針の違いや、立地条件の違いなどが見事に反映されていると分かってきました。 練習場の皆さんと会話する中で、「よそはどうなの?」との質問も多く、金額的な生々しい情報は話しませんが、傾向程度を紹介すると「とても参考になる」と喜んでいただけます。次の目標は「お互いに開示しても支障ない、参考にしあえるデータは見られるように」というシステム化を検討しています。 さて、具体的なグラフを紹介しましょう。 グラフ1は日単位での売上げ・利用額・総来場数・新規来場数のグラフですが、ここでは総来場数を表示している状態です。昨年同期と比べると今年の状況が分かりやすいのですが、日付で重ねるよりも曜日で重ねた方が比較しやすいと思います。 グラフ2で気象データを見ながら検討することもできます。気温・降水量・最大風速が折れ線で表示されています。12月になって寒くなると来場数も少し減った感じでしょうか。雨が降ると減ったり、強風でネットを下げてドライバー禁止の時にも減少する様子が分かります。 [caption id="attachment_81510" align="aligncenter" width="788"] グラフ4[/caption] 次に、打席ごとの様子を見るグラフ3では、打席回転数(1日に何回打席が利用されたか)を表示しています。この例では1階の方が2階よりよく使われているのが分かります。端の打席のデータがないのは、この例では個室で別管理になっているためです。グラフ4で打席ごとの平均打球数は1階も2階も大差なく、特定の打席だけ多い感じですが、特定打席でのスクールやイベント等が関係しているのかもしれません。 球貸し・時間貸しの傾向もグラフ5・6のように見ることができます。この例の球貸しでは平均160球くらい打っている感じですが、なぜか去年より今年の方が打球数が増えていますね。弾道シミュレータを導入した影響など何らかの背景があるはずです。 [caption id="attachment_81513" align="aligncenter" width="788"] グラフ6[/caption] 時間貸しの方が球貸しより打球数が増えるのは、どの練習場も同じです。このグラフを見る感じでは、時間貸しは去年より増えているというわけでもありませんね。 今回はデータ分析の様子をざっと紹介しましたが、次回からは詳細な話しや、協力練習場の生の声も紹介します。現状を分析せずに方針を考えても意味はなく、ICカード化などでデータが採れても、活用しなければ宝の持ち腐れです!
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年2月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら