帝王ジャック・ニクラスの名前を冠した 茨城県つくば市のゴルフセンター~シリーズゴルフ練習場ビジネス~

帝王ジャック・ニクラスの名前を冠した 茨城県つくば市のゴルフセンター~シリーズゴルフ練習場ビジネス~
「ジャック・ニクラスゴルフセンターつくば」は、1985年に「科学万博つくば」が開催された跡地に建設された科学万博記念公園に隣接、茨城県つくば市水堀大塚に位置している。つくばエクスプレスの万博記念公園駅から徒歩15分、つくば中央インターから車で5分の便利な場所にある。建屋入り口の外観はお洒落な別荘風で高級感があり、ジャック・ニクラスの名前に相応しい雰囲気を漂わせている。 その成り立ちについて田辺正博支配人に取材した。 同練習場はその名が示す通り、ゴルフの帝王・ジャック・ニクラスが監修、1992年に開場した。ニクラスのメジャー大会18勝は、タイガー・ウッズ(15勝)も破れなかった金字塔だ。設立時は三菱商事とサントリーが出資した会社が運営し、社長は三菱商事から、支配人はサントリーからという体制であった。 [caption id="attachment_82452" align="aligncenter" width="1000"] 2_ジャック・ニクラスゴルフセンターつくば 開業ニクラス来場[/caption] なぜ、ニクラスの名前を冠したゴルフ練習場が出来たのか? 実は、サントリーは1984年にマグレガージャパンの株式を75%取得しているが、ニクラスは『ターニー』などマグレガーのクラブを愛用し、米国マグレガーの経営にも関わっていた。当時サントリーの副社長だった鳥井道夫氏はゴルフ事業に関心があり、ニクラスとは個人的にも親しかった。その関係で、米国のジャック・ニクラスゴルフアカデミーのノウハウを導入。そのような流れが練習場開業の背景にある。 当時マグレガージャパンはサントリーのゴルフ事業部門といった位置づけで、男子ツアー「サントリーオープン」の運営にも関わっていた。田辺支配人は大学を卒業後マグレガーに入社してすぐ、研修を兼ねてこの練習場に1年間出向していた。 [caption id="attachment_82454" align="aligncenter" width="1000"] ジャック・ニクラスゴルフセンターつくば 初期パンフレット[/caption] 「ジャック・ニクラスゴルフセンターつくば」が1号店で、東京の大森に2号店もできたが、バブル崩壊の影響もありそれ以上の展開は見送られた。その後、三菱商事、サントリーは撤退し、もともとこの施設を所有していた地元のつくばゴルフガーデン株式会社が運営している。 田辺支配人は10年前にこの練習場に再就職、5年前から支配人を務めている。同社はジャック・ニクラスの商標を、米国のゴールデンベア・インターナショナル・インクからライセンスの許諾を受けている。大森店は別の経営になり、練習場の名前も変わっている。 [caption id="attachment_82455" align="aligncenter" width="1000"] ジャック・ニクラスゴゴルフセンターつくば ミスト設備[/caption] 打席は2階84打席240ヤード。ニクラスのコンセプトで、コース同様のアンジュレーションを持つフェアウェイ、ターゲットグリーン、バンカーが巧みに配置され、打席ごとに景観が変わり、「狙い」「アドレス」の戦略的な練習ができるように設計。打席から見るとゴルフ場で打っているのと同じような感覚だ。 現在、日本でジャック・ニクラスの名前が付いたゴルフ練習場はここだけである。スタッフウエアの胸には、ニクラスがパターを入れた瞬間の刺繍があしらわれている。1992年10月の開所式には、ニクラスが来場し始球式を行った。その写真がフロントに飾られ、クラブハウスのそこかしこにニクラス関係の写真が見られる。田辺支配人は、 「ニクラスは年配の皆さんはご存じですが、若い20代では知らない方が増えてきています」 と、時代の流れを感じている。

バンカーの砂にもこだわる

随所にこだわりが感じられる。 「お客様にゆったりと過ごしていただきたいので、打席幅は2.7mと広く、椅子も木製で、2人掛け用も一定間隔で配置しています。ボールのオートセッターは、この地域では少ないですね。レストランやヨガスタジオ、カイロプラクティックの併設も特徴で、ゴルフに関係なく来場される女性の方も多いんですよ」 [caption id="attachment_82456" align="aligncenter" width="1000"] ジャック・ニクラスゴルフセンターつくば 野菜販売[/caption] レストランでは地元の野菜や和菓子なども販売され、クラブ工房も併設されている。 「エリアでナンバーワンの練習場を目指しています。建屋などの設備に負けないよう、スタッフの接客などソフト面も充実させたい。マットとボールを常に綺麗にすることを心掛けており、ボールは毎年少なくとも3万球は交換しています」 打席の横には屋根付きのバンカーも備えており、 「こだわっているのは茨木県高萩産の砂で、近隣の茨城ゴルフ倶楽部や東筑波カントリークラブで使われているのと同じ砂で練習できます」 また、夏でも快適に練習できるよう、10年以上前から全打席にミスト設備を設置。井戸水の使用でコストも抑えられるとか。冬の寒さ対策として遠赤外線の暖房を天井に設置。 [caption id="attachment_82457" align="aligncenter" width="1000"] ジャック・ニクラスゴルフセンターつくば ジュニアスクール[/caption] そもそも練習場の始まりはスクールで、現在3名のJPGAティーチングプロが、ジャック・ニクラスゴルフアカデミーの認定プロとして教えている。スクール生専用のアプローチエリア、バンカー、パター練習場など充実した設備を備え、実技前の座学用の教室もある。スクールは8回がワンクールで年に6期あり、開業から190期を数える。女性ビギナーのための基本レッスン、より高いレベルの安定したスコアを目指すレッスンやジュニアコースなど、多様な6コースで対応する。 新規の来場者が多いのも特徴で、学園都市に位置するため来場者の中心は40~50歳。この練習場事業を健康産業の一環として地元つくばに貢献したいとの思いが強く、60歳以上のシニアには価格を低く設定している。課題について田辺支配人は、 「開場から30年以上経過して、設備の維持・メンテナンスをきちんとしなければなりません。ゴルフ人口の減少をどうやって食い止めるかも課題です。一練習場としてやれることは限られますが、接客で敷居を低くして若い人が来やすくする、コミュニティ誌に練習場の情報を掲載してゴルフに興味を持ってもらえるよう努力しています」 [caption id="attachment_82458" align="aligncenter" width="1000"] ジャック・ニクラスゴルフセンターつくば 外観[/caption] ゴルフ振興のためにも、若い世代が集う筑波学園都市の「ジャック・ニクラスゴルフセンターつくば」が賑わうことを期待したい。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年7月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら