前回は練習場経営において大事な指標となる「安定化率」について簡単に触れましたが、今回はこの点を深掘りします。
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安定化率は来場者の動きを調べたもので、「比較対象期間に安定化していなかった顧客のうち、集計期間に安定化した割合」のこと。安定化していなかった顧客とは「年間来場回数11回以下」の人であり、逆に安定化した顧客は「年間来場回数12回以上」と定義しますが、「12回以上」で分けた根拠は、以前当連載で紹介した山岸勝信代表(ゴルフ産業需要調査研究所)の、前年来場回数と翌年来場割合の図5を見るとわかります。
前年に12回以上来場した人は、翌年に「8割以上継続」して来場するというデータがある。つまり平均月イチ以上の来場者は、その練習場へ通うことが習慣化→安定化したと言えるかもしれません。
当社のシステムでは、図6にある分析システムで簡単に自分の練習場に関するこのグラフが確認できますが、私がざっと確認した感じでは、年間8回以上で8割を超える感じでした。それが年間12回を超えれば、ほぼどの練習場でも継続的に来場してくれると思います。
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図5[/caption]
図5でもう一つ大切な点は、年間1回しか来場しなかった人の多さです。有名練習場に出張ついでに、という一見さんが多い練習場は別として、一般的な練習場でもグラフの傾向は同じです。つまり、せっかく来てくれたお客さんの多くが再来場していない現実が明らかなのです。
そもそも、練習場経営にとって重要なことは、如何に「初めて来てもらえるか」です。1回目がすべての始まりなので、これがなければ2回目も3回目もありません。
初めてのお客さんは、ゴルフを始めようという人や、しばらくやめていた再開組、あるいは転居してきた人かもしれません。他の練習場に通っていた人に来てもらうこともそう簡単ではないでしょう。様々な事情や困難を乗り越えて「1回目」があるわけですが、にもかかわらず、2度と来ない割合がとても高い。その原因を分析して安定化率を高めることが如何に大事かわかります。
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図6[/caption]
実は、再来場を促すテクニックはたくさんあります。初回のチャージを、1回で使いきれない金額で入れてもらう施策も効果的だし、次回使えるクーポンなどを渡すのも良いでしょう。しかし、それよりも大切ななことは「ゴルフって楽しい!」「また来たい!」と思える体験をしてもらうことだと思います。
そのためには練習すること自体の楽しみに限らず、スタッフの気持ち良い対応や清潔な環境、コミュニティとしての居心地の良さなどさまざまな要因が考えられます。そのための対策を行った結果、年間12回を超える来場をしてくれれば、ゴルフの楽しさがわかり、その練習場にとって「常連化」→「安定化」したということになります。
この安定化率が、わずか10%にも届かない現状は深刻ですが、逆に考えれば、ゴルフを始めたい人を増やして安定化率を高められれば、まだまだ来場者を増やせるでしょう。
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図7[/caption]
顧客数増減クロス集計をグラフ化したのが図7の実稼働顧客増減です。週1ゴルファーは前に説明したように2022年に比べて2023年は28名減ったという感じに増減の様子が確認できます。トータルでは363名減少しています。コロナ禍ピークの2021年から徐々に減少傾向だったことは全国的なトレンドです。この練習場では年間1回だけの来場と、コースプレー準備中(年間2〜4回来場)の減少が多いので、常連はそれほど減っていないという見方もできます。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年5月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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