~ゴルフ練習場経営者リレー連載~多田ハイグリーン(3) 部活動の地域移行を検証して持続可能な地域クラブへ挑戦!

~ゴルフ練習場経営者リレー連載~多田ハイグリーン(3) 部活動の地域移行を検証して持続可能な地域クラブへ挑戦!

■部活動の廃止

日本中学体育連盟は、2027年度より全国中学校体育大会において、部活動の設置率が男女とも20%を切る水泳など9競技を実施しないと発表しました。背景には少子化や教員の過労働があり、当社が位置する兵庫県川西市も、2025年度までに市立中学校の全ての部活動の廃部を目指しています。そして川西市は本年度より、部活動の代替組織を設立し「地域クラブ」として地域の事業者や団体へ公募し始めました。

■地域クラブの創設

そこで私達は、市内の公立中学校に通う全ての中学生を対象に「ジュニアゴルフクラブ」を創設し、市より「地域クラブ」としての承認を得て、本格的に活動を開始しました。このクラブは、毎週月・水・金の18時~19時の活動で、川西市教育委員会が市立中学校(全7校)に通う中学生を募集し、私達が支援する大阪大学ゴルフ部の大学生がボランティアで顧問・世話役を担い、野原興産株式会社が活動拠点として練習環境・練習用具を提供することで「産官学」が連携した「部活動の地域移行」のモデルケースとして注目されました。昨年10月・11月には体験会を開催、総勢52名の中学生が参加しました。

■地域クラブの現状

市が設立した「地域クラブ」には、48の事業者や団体が承認を受けて本年度6月より活動を開始しました。しかし、割安で義務感が強かった部活動と違い、割高で自由度の高い「地域クラブ」への学生の関心は低く、創設したほとんどの「地域クラブ」に学生が集まらず、活動が成り立たない事態になりました。「ジュニアゴルフクラブ」の体験会には52名の中学生が参加したにも関わらず、今春からの在籍者は3名となり、私達が期待するほどの中学生を集めることができませんでした。

■地域クラブの課題

青少年の育成と技能の向上として浸透してきた「部活動」の醍醐味は、青少年が「目標」を抱き活動することで自己肯定感を育み、自主性・協調性・責任感が養われることにあります。しかし「地域クラブ」の多くは、青少年が「目標」を抱く機会が用意されておらず、活動への動機づけが不十分な現状です。昨年実施したゴルフ体験会も、10月の受講率が85.5%に対して、11月は60.5%まで低下。つまり、関心を抱き一度は参加しても、日々の活動や練習に対する明確な「目標」がなければ、持続的な活動に繋がらないことが明らかになったのです。

■「目標」を抱く機会の創出

青少年が「目標」を抱く機会は、スポーツ系の活動であれば「大会・試合」、文化系は「演奏会・発表会」、習い事やスクールは「昇級・技能試験」です。こうした機会を定期的に用意すれば、青少年は目標達成を目指して持続的に活動しようと考えます。そこで、「ジュニアゴルフクラブ」を持続的な活動へ繋げるために2つの機会を用意しました。 1つ目は「ラウンド体験」の機会です。広大な自然の中でゴルフを体験することで「いつか18ホールをラウンドしたい」という動機づけに繋げます。2つ目は「技能検定」の機会です。日頃の活動成果を測る検定会を開催することで、青少年はスキルの現状を知り、階級に応じた合格証・認定バッヂを受け取ることで、「次回は1つ階級をあげたい」という動機づけに繋げます。

■ラウンド体験会&検定会の開催

そこで学生が参加しやすい夏休みに、川西市と所縁のある鳴尾ゴルフ倶楽部にて「ラウンド体験会&検定会」を開催。対象は、中学生に加えてゴルフに関心のある小学生まで広げ、チューター役として、大阪大学ゴルフ部にもサポートしてもらいました。事前告知は、教育委員会を通して小中学生の保護者宛にチラシの配布やメールを通知した結果、42名の申込みがありました。 当日の体験会では、練習場でパター・アプローチ・アイアン・ドライバーで練習した後、コースに出てラウンド体験。検定会では、ゴルフの歴史や文化を学ぶ座学を挟み、全日本ゴルフ練習場連盟が考案した「ジュニアゴルファー検定制度」を活用し、技能に合わせた「ペーパーテスト」と「実技テスト」を実施。テスト終了後には、結果に応じた1級~12級の認定級を個別に授与し、グループに分かれて表彰式を行い、盛大なイベントを開催できました。

■地域クラブの再定義

「ラウンド体験会&検定会」は成功裏に終わりましたが、私達の目的は「ジュニアゴルフクラブ」の1期生(2024年春夏)が3名だった現状に対して、2期生(2024年秋冬)を15名以上増やすことにあります。そこで「ラウンド体験会&検定会」に参加した学生へのフィードバックとして「合格証・認定バッヂ」と「ジュニアゴルフクラブの入会案内」を個別郵送し入会勧奨したところ、9名の入会があり、さらに教育委員会を通してメールで入会勧奨した結果、13名が入会。こうしたフィードバックのおかげで、2期生は22名の在籍となりました。 とても興味深いことは、22名のうち中学生の在籍は4名しかおらず、ほとんどが低学年の小学生だったことです。この傾向は、学生や保護者が「ジュニアゴルフクラブ」を、「部活動の代替」ではなく「習い事」として捉えており、いくら私達が「部活動の代替」として勧奨しても響かず、「習い事」として勧奨して初めて、関心を抱いてもらえることがわかりました。

■持続可能な地域クラブへ

今後、「ジュニアゴルフクラブ」を持続的な活動にしてゆくためにも、各期の終わりには、活動成果を測る機会としてゴルフコースにて「ラウンド体験会&検定会」を開催してゆきます。また、「大会や試合に出場したい」という目標を抱く学生を対象とした「ジュニアユースクラブ」の拡張も進めます。青少年が「目標」を抱き、自主性・協調性・責任感が養われる「地域クラブ」へと育むことで、いつの日か川西市からプロゴルファーを輩出できるようこれからも挑戦してゆきます。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年11月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら