<進化するゴルフ練習場の舞台裏7>長期的経営に不可欠な 「安定化率」を考える(後編) 日本シー・エー・ディー代表 小俣光之

<進化するゴルフ練習場の舞台裏7>長期的経営に不可欠な 「安定化率」を考える(後編) 日本シー・エー・ディー代表 小俣光之
今回も前号に続き、来場者の「安定化」を判断する分析手法です。来場回数で見ていきましょう。 [surfing_other_article id=82460][/surfing_other_article] [surfing_other_article id=82957][/surfing_other_article] 図8は来場回数の増減クロス集計表です。表の見方は顧客数クロス集計と同じで、赤字が2022年に比べて2023年が減った部分です。月1ゴルファーだった人が週1ゴルファーになれば来場回数は当然増えます。横軸の月1ゴルファーに縦軸の週1ゴルファーの値を見ると、3990回で来場回数は増えていますが、逆に週1ゴルファーが来場しなくなった分は横軸の週1ゴルファーに縦軸の消滅または休眠のマイナス503回とわかります。 [caption id="attachment_84621" align="aligncenter" width="788"] 図8[/caption] 図9は来場回数の増減と該当顧客数をまとめた表です。さらに図9からトップ5をまとめた表が図10の来場者数・来場回数増減結合のTOP5です。2022年に1回も来場しなかった人が、月1ゴルファーになった人の231名・5639回が最も増えた区分で、逆に最も減ったのは、週1ゴルファーだった人が月1ゴルファーに降格した136名のマイナス4759回です。 [caption id="attachment_84622" align="aligncenter" width="788"] 図9[/caption] さらに、来場者数・来場回数増減結合のTOP5をグラフにしたのが図11です。減った部分は月1もしくは週1ゴルファーだった人の部分が大きく、常連の来場頻度が減ったという感じです。 [caption id="attachment_84623" align="aligncenter" width="788"] 図11[/caption] 上位要因の階層別該当顧客数が図12のグラフです。2022年に月1ゴルファーだった人が、2023年に週1ゴルファーとなったのは、人数的には94名ですが、3990回分増えた様子も掴めます。 図13は2022年・2023年での各階層の回数比較で、常連階層の来場回数自体は増えています。また 図13の差分を表示したのが図14で、回数としては常連が支えている様子がわかります。 [caption id="attachment_84624" align="aligncenter" width="788"] 図13[/caption] [caption id="attachment_84625" align="aligncenter" width="788"] 図14[/caption] 図13・図14のグラフの数値を表にしたものが図15です。月に1回以上来場している「安定ゴルファー」の人数は27%程度ですが、回数としては88%程度を占めている。このことから「安定ゴルファー=常連」の来場回数や打球数が増える工夫をすれば、売上に直結すると言えます。練習場が定期的に行なう月例コンペや来場特典は、常連のゴルフ活動が活発になるきっかけ作りに役立つと言えるでしょう。とはいえ、今の常連が永遠にゴルフ練習場を支えてくれるわけではありません。 [caption id="attachment_84626" align="aligncenter" width="788"] 図15[/caption] 図16は、以前紹介したゴルフ産業需要研究所・山岸勝信代表のものです。コロナ特需ピークの2021年前後の様子を見ても、新規・休眠層から再開層の上乗せがなければ、来場者数も来場回数も基本的には右肩下がりになります。引越しや高齢での引退もありますので、経営を維持していくためには新規・再開層を積み上げる必要があるわけです。 [caption id="attachment_84627" align="aligncenter" width="788"] 図16[/caption] このグラフも当社の分析システムでは図17、図18のように簡単に表示できます。なお、今回データを提供いただいた西の森ゴルフパークは2021年に当社システムに入れ替えたため、それ以前のグラフは出ていません。細かいデータが多いので理解が難しいかもしれませんが、山岸代表が話すように「単に来場者の増減だけを見るのではなく、その内訳を分析することで施作の成果がわかる」ことは確かです。 [caption id="attachment_84628" align="aligncenter" width="788"] 図17[/caption] [caption id="attachment_84629" align="aligncenter" width="788"] 図18[/caption] 新規来場者の「集客と常連化」は経営の最重要課題です。そのために何をすべきかをデータを元に考え、成果をデータで振り返る。その繰り返しが大切なのです。 なお、このシステムでは自社の練習場の来場詳細分析だけでなく、分析システムを利用している全練習場のデータを使った分析結果も参照できます。商圏等が違うため、他社との比較分析が万能ではないものの、全体の動向を把握することは経営判断の参考になるでしょう。 西の森ゴルフパークの中川支配人とは先日、分析画面を一緒に確認しながら、課題や改善ポイントを議論しました。他の練習場の取り組みも同時に説明しましたが、それでも理解するのに骨が折れたそうです。 ただ、この原稿を事前に読んで頂いたところ「だいぶ理解できた」とのこと。近年のシステムは、データ自体はデータベースにしっかり溜まっていますが、使用者が理解しやすい状態で表示することがシステム提供者としてすべきことです。さらに、その分析結果をどう理解してどう活用すべきかまで紹介・提案できてこそ、初めてシステムが活きてきます。誌面で紹介する機会を頂き、感謝しています。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年6月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら