<進化するゴルフ練習場の舞台裏9>商品としての 「打席の売り方」を考える(後編) 日本シー・エー・ディー代表 小俣光之

<進化するゴルフ練習場の舞台裏9>商品としての 「打席の売り方」を考える(後編) 日本シー・エー・ディー代表 小俣光之
今回は前号の続きです。福島県いわき市の練習場・荒川ゴルフクラブのデータから、打席の「売り方」による収益の変化を見ていきます。 [surfing_other_article id=84580][/surfing_other_article] 図6は平均ボール売上です。どの時間帯でも客単価が下がらないようなバランスの良い価格設定で実績を上げています。 [caption id="attachment_86418" align="aligncenter" width="788"] 図6[/caption] 図7は総ボール売上です。平日は一般的に夜の売上頼みの練習場が多いのですが、午前中はもちろん、特に来場が少ないと言われる平日午後にも「サービスタイム」が売り上げに貢献している様子が分かります。 [caption id="attachment_86419" align="aligncenter" width="788"] 図7[/caption] 続いて土日祝日の様子を見てみましょう。図8は時間帯ごとの「打席商品」別の来場回数です。平日の図4とは全く様子が変わり、土日祝日は「球貸し」が中心です。コロナ以降、夜の来場が減ったことから土日祝日の夜間のみ「ナイトサービスタイム」をプランに加えました。 [caption id="attachment_86420" align="aligncenter" width="788"] 図8[/caption] 図9は総ボール売上です。土日祝日は日中の売上がしっかり見込めますが、コロナ以降、夜の来場が減った分を「ナイトサービスタイム」が売上に貢献しています。 [caption id="attachment_86421" align="aligncenter" width="788"] 図9[/caption] 続いて年代別の様子を見ましょう。図10は平日、年代別にどの打席商品を利用しているかを示しています。平日の9時~12時の「打ち放題」の年代別の様子を見たいので、図11のように時刻範囲を指定してみます。すると図12のように、平日9時~12時は60歳〜79歳の利用が多く、「打ち放題」を選択する割合が高いことが分かります。 [caption id="attachment_86422" align="aligncenter" width="788"] 図10[/caption] [caption id="attachment_86423" align="aligncenter" width="788"] 図11[/caption] 12時~16時半を指定すると、図13のように「サービスタイム」「球貸し」の様子が分かります。平日午後の来場は60歳〜69歳が多く、「サービスタイム」「球貸し」の選択はちょうど半分ずつという感じ。時刻範囲指定はこのように使います。 [caption id="attachment_86424" align="aligncenter" width="788"] 図13[/caption] 図14は土日祝日の「時刻範囲指定なし」の様子です。土日祝日は若い人も多く、逆に70歳〜79歳の割合は減る感じですね。 [caption id="attachment_86425" align="aligncenter" width="788"] 図14[/caption] 「ナイトサービスタイム」の様子を見るために、時刻範囲指定を16時~23時にしてみた様子が図15です。半分ずつの割合で選択されている感じです。 荒川ゴルフクラブの2024年3月の平均客単価は1700円を超え、平均打球数は180球を超えています。地方の練習場は客単価1000円を目指しても苦戦するケースがありますが、都心並みの客単価を実現している背景には、来場者の様子をしっかり分析・観察し、来場者が望むようなプラン、そして練習場が誘導したいプランをしっかり考えてきた結果です。さらに、単価を高めにしても来場者が喜んで来てくれるような練習環境・雰囲気作りができているからこその結果です。 この練習場の周辺には、ほとんど民家がありません。そのような立地条件でこの客単価・集客を実現している佐藤社長の話を聞くために、私は多くの練習場関係者を当地にご案内しました。 「練習場ごとに立地条件も環境も違うのだから、全く同じことをやっても同じ結果にはなりません。だから、業界の役に立つなら、知りたいことはなんでも教えます。こちらが話をすれば、逆に我々が参考になることも多く得られます」 と、佐藤社長は何時間でも説明してくれます。 同氏は分析システムができる遥か前から自分で分析していましたが、せっかくの練習場システムなので、当社では分析機能の充実を進めてきました。現状把握もせずに経営判断をすることは、目隠しで車を運転するようなものです。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年8月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら