<進化するゴルフ練習場の舞台裏10>マクロデータ分析から見る 「自社商圏」の現状と将来予測(前編) 日本シー・エー・ディー代表 小俣光之

<進化するゴルフ練習場の舞台裏10>マクロデータ分析から見る 「自社商圏」の現状と将来予測(前編) 日本シー・エー・ディー代表 小俣光之
今回も分析システムの新機能について紹介しますが、この機能は今のところ、ゴルフ練習場向けには公開していません。システム管理者である当社のみ使える機能ですが、将来的には導入施設が自社のデータを見られるようにするつもりです。 見られるのは練習場の実データではなく、マクロデータです。当社の顧問で、ゴルフ需要産業調査研究所の山岸勝信代表が長年手がけた「マクロ分析手法」をシステム化したものです。画面イメージを紹介しながらわかりやすく説明します。 マクロ分析では、全国のゴルフ練習場のデータを扱いますが、屋外練習場とインドア練習場も扱います。図1では無理やり日本全体を表示して練習場の位置を表示しましたが、もう少し拡大した様子が図2です。当たり前ですが、山ばかりのところに練習場はないものですね。 さて、漠然と練習場の場所を見ていても仕方ないので、特定の練習場の様子を見てみましょう。マクロデータは練習場の実データを使うわけではないので、どの練習場を紹介しても良いのですが、実データと比較するとわかりやすいので、今回も福島県いわき市の荒川ゴルフクラブのデータを見ていきます。 荒川ゴルフクラブを中心とした半径10㎞の円が表示されて、周辺練習場の位置も表示されます。練習場の位置をクリックすると、図5のように練習場名とともに「指定する」ボタンが出てきます。これを押すと図6の表が表示されますので、その内容を詳しく説明します。 [caption id="attachment_86430" align="aligncenter" width="788"] 図5[/caption] 「練習場名」に続いて「系列」がありますが、これは「ゴルフパートナー」など複数の練習場を運営している場合に「系列」が表示されます。手作業で入れた情報なので、参考程度にしてください。 「形態」は「通常」か「インドア」です。ここも手入力でデータを入れました。「打席数」は練習場の打席数です。「競合打席」は該当行の練習場を中心とした圏内(ここでは半径10㎞)に存在する練習場の打席数を合計したものです。 「指定圏内練習場来場回数」は、指定圏内(ここでは半径10㎞)で、年間何回ゴルフ練習場に来場する見込みがあるか、です。この部分が山岸代表のノウハウで、総務省「社会生活基本調査」のゴルフ人口に、当社の練習場データ傾向を加味した情報と、国立社会保証・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」を元に「期待可能年間来場回数」を計算した結果です。人口データは計算可能最小単位の「全国町丁別」に計算しました。これまで山岸代表が一人で作成したものは、2015年に公開されたデータを使って、2030年までの「将来予測」を計算しましたが、当社と連携したことで、2020年の公開データを使って2035年までの将来予測も計算しました。 「1打席あたり来場回数」は、「指定圏内練習場来場回数」を「競合打席数」で割った値です。全ての打席の魅力が等しく、ゴルファーは均等に分散するという仮定での、1打席あたり年間来場回数です。将来予測も計算してあります。 「年間期待可能来場回数」は、「1打席あたり来場回数」に該当練習場の「打席数」を掛けたものです。これが該当練習場のマクロデータによる年間来場回数の推定値です。 以上について簡単な言い方をすると、「該当練習場を中心とした半径10㎞圏内の年代別人口を元に、社会生活基本調査のゴルフ参加率、ゴルフ活動率、さらに当社の練習場実データでの傾向を使って計算した年間来場回数推定値」という感じです。 ゴルフ練習場に限らず、新規店舗を出店する際には商圏調査を行います。その際、国勢調査の人口データを使えば大雑把につかめますが、より高い精度で推定したのがこのデータです。推定値より実来場回数が多ければ、競合練習場よりも集客力が高い可能性があります。 また、将来の来場回数予測を見れば、将来を考えた投資計画や客単価の目標設定などに役立ちます。全国的には、2030年には2020年前後に比べて8割から6割に減る予測です。若者が多い地域は8割程度、若者が少ない地域は6割近くまで減少しますが、ゴルファー比率は非常に低いので、全国の改革は無理としても、近所のゴルファーを増やす努力をすれば、そこまで減少しない可能性も十分あります。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年9月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら