<進化するゴルフ練習場の舞台裏13>マクロとミクロを組み合わせて 来場者の動きを観察する 日本シー・エー・ディー代表 小俣光之 

<進化するゴルフ練習場の舞台裏13>マクロとミクロを組み合わせて 来場者の動きを観察する 日本シー・エー・ディー代表 小俣光之 
先月号まで3回連続で、ゴルフ需要産業調査研究所・山岸勝信代表によるマクロ分析をシステム化した様子を紹介しました。その初回で「将来的には自分の練習場に関するデータだけは見られるようにしようと考えています」と予告しましたが、その機能が完成したので紹介します。 前回、福島県いわき市の練習場・荒川ゴルフクラブのデータを、佐藤社長のご好意により掲載させていただきました。今回は都心部の練習場にも相談してみましたが、許可がもらえなかったため、荒川ゴルフクラブのデータで紹介します。 まず、荒川ゴルフクラブを中心とした半径15kmの円が表示されています。黒色でマークがあるのは圏内の競合ゴルフ練習場の場所です。半径15kmを圏内としている理由は後で説明します。 地図表示を他のパターンにして、いわき市がどのくらい大きいかをわかるようにしてみました。前回までのマクロ分析画面と違い、今回の画面では練習場実データも扱っています。2024年は、いわき市から5万5920回来場があると表示していますが、いわき市は巨大で半径15kmをはるかに超え、これでは来場分布がよくわかりません。 来場分布を市区町村から郵便番号に変更すると、大きな市でも来場分布がよくわかるようになります。平愛谷町一丁目から7464回来場がありました。郵便番号もエリアの大小ありますが、様子は掴めます。 地図を航空写真にすると地形もよくわかります。直線距離でほぼ15km離れている四倉町鬼越から1113回も来場がある様子がわかります。 前回も説明しましたが、最適商圏はこの表からわかります。商圏を広げると対象人口が増えますが、競合練習場があると競合打席数が増え、競争力が等しい場合を仮定しているマクロ分析では、期待可能来場回数が分散して減ってしまいます。 荒川ゴルフクラブでは半径15kmが最も良い数字でした。実際には直線距離15kmはかなり遠い印象ですが、実データを見ると四倉町鬼越から多くの来場があります。競合練習場が北側にないのが大きな理由だと思いますが、このようにマクロとミクロを合わせて考えると見落としが防げます。 荒川ゴルフクラブの実際の年間総来場回数は、この画面でも同時に見られるようにしました。マクロ分析での「年間期待可能来場回数」は2万1000回くらいですが、2021年のコロナ特需ピークでは8万8000回を超えていました。今年も11月時点ですでに年間期待可能来場回数を大きく上回っています。 また、いわき市では震災復興特需がちょうどリニューアルした2014年直後にありましたので、その様子も数字に表れています。図5でわかるようにこのエリアでは、人口減少の割合が比較的高く、2020年に対して2035年には2割5分減ってしまいます。とはいえ、日本ではゴルフをやったことのない人の割合が非常に高いので、地域でゴルフ体験を増やすなどの努力で人口減少とは関係なくゴルファーを増やすことは十分可能なはず。学校との連携など、子供たちがゴルフに触れる機会を増やす取り組みを始めている練習場も増えています。 荒川ゴルフクラブでは、インドア練習場も併設してレッスン環境を整備したり、毎月のコンペなどイベント開催にも力を入れ、11月12日には昨年に続きプロアマコンペを開催しました。今年は女子プロの卵を各組に入れて楽しんでもらおうと、本誌連載中の加藤陽さんの協力により、20組のコンペを開催してお客さんを楽しませていました。 「練習場は装置産業だなんて言う人がいるが、全然違う」 と佐藤社長は言います。続けて、 「スタッフの挨拶・笑顔、掃除、整理整頓、そしてお客さんがびっくりするような体験を提供し続けることが大切。練習場でのお客さんの様子を観察して、データを確認し、頭を使わないと練習場経営をしている意味はありません」 佐藤社長は変化を見逃さず、すぐに手を打ちます。この積み重ねにより、マクロ分析を圧倒的に超える集客力を実現しているのです。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年12月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら