葛飾区で自社生産を行うシャフトメーカーがシンカグラファイト。
産声を上げたのが2014年と比較的新しい会社だが、2017年の「ゴルフ5レディス」で優勝したO・サタヤ、2018年の「アクサレディス」で勝利したフェービー・ヤオ愛用のシャフトとして一躍名声を得た。高弾性繊維を大胆に使った『LOOP(ループ)』シリーズがそれ。
これまでLPGAツアー2勝、レジェンズツアー4勝を誇る。
モノつくりの背景にも目を見張るものがある。この道40年にわたり、様々な名作シャフトを生み出してきた熟練の職人技があるのをご存じだろうか。メイドインジャパンにこだわった設計→巻き→研磨→仕上げの製造工程によって、1本1本のシャフトに魂が注ぎ込まれている。
そのLOOPの最新ドライバーシャフト『バブルウエイトSE』(6万4000円)、『プロトタイプLT』(同)の2機種をギアに精通するソクラテス永井延宏プロに検証してもらう。
[surfing_voice icon="https://gew-web.com/wp-content/uploads/2017/05/photo_nagai.jpg" name="永井延宏プロ" type="l big" bg_color="eee" font_color="000" border_color="eee"]1969年埼玉県生まれ。アメリカ・オーストラリアでの経験をもとに、グローバルな視野と独自のティーチングメソッドを構築。NPO法人ゴルフアミューズメントパークの理事として、ゴルフ市場の発展や指導者の育成にも携わる。2006年度レッスンオブザイヤー受賞[/surfing_voice]
『バブルウエイトSE』の第一印象は?
LPGAツアー4勝を獲得した『プロトタイプBW(バブルウエイト)』の後継機種ですが、どのようにブラッシュアップされたのか?
まず、目を引くのがカラーリング。鮮やかなスカイブルーをベースにスピードとハジキを感じさせるデザインを採用。手元から中間部分にかけてLOOPの象徴ともいえる水玉模様があしらわれています。
手に持った印象は、ストレート層のシャープな挙動を感じ、ミッド部分のシッカリさがありますね。そこは、カウンターウエイトになっている部分とリンクするのかな。身体の力を伝えていくと、スムースな軽い振り心地でヘッドのポテンシャルを引き出してくれそう。
試打クラブは硬度S(58g、46.8インチ)にヘッドはJGE『KZ‐5』(ロフト角:10度)を装着。早速打ってみましょう。
強烈なしなり戻り、インパクト効率も良い
インパクト時の強烈なしなり戻り、スピードが印象的です。
厚いインパクトも特筆すべき点で、最近流行の大型ヘッド、即ち慣性モーメントの大きいタイプに負けない、シャフトが持つコシの強さが出てきます。第一印象通り、手元部分のしっかりさから、全体のスピード感をムチのように連鎖していくので、タイミングも取りやすい。
シャフト挙動をコントロールできれば、ツアーで戦う女子プロのように、セパレートされたコースでも、フェアウェイをキープすることができるでしょう。
換言すれば、自分のドライビングテクニックを引き出してくれるということ。
トラックマンのデータをみてもそのことは明らかです。ミート率1.50でインパクト効率も良いですし、HS43でキャリー231.6Y、トータル265.7Yを記録。ボールスピン量も1790rpmで、棒球が一発目から打てました。
個人的にはもう少し叩いていけそうな感じがするので、自分の能力を余すことなく、いい方向に導いてくれるシャフトだと思います。
『プロタイプLT』の第一印象は?
続いて『プロトタイプLT』。手元側のカラーリングはゴールド。先端にかけてブラックのグラデーションが特長的です。ループの象徴である水玉模様も健在で、全体的に高級感を醸し出しています。
試打クラブはSX(60g、44.4インチ)でヘッドはPING『G410 LST』(9度)を装着。
構えた印象は、グラデーション効果による視覚効果により実際の長さよりも短く感じるので、振り抜きやすさが際立っています。ワッグルすると、積層の厚さがあり、シャフト全体の剛性の高さ、しっかりさが伝わってきます。
また、シャフト径もやや太く感じますので、叩いていけそう。私のHS(43~44)でギリギリ打てそうです。
叩いて飛ばすハードヒッターに!
先ほど打った『バブルウエイトSE』とは全く性質の違うタイプですね。
シャフトの強さを非常に感じます。全体的なしなりスピードというよりも、いかに叩いていけるかが問われる。ねじれが少ないので、手元からヘッドまでのレスポンスがダイレクトに伝わります。
先端部分が特にしっかりしていて、エネルギー効率の良さと左へのミスを防いでくれるでしょう。叩いて飛ばすというゴルファーの本能を引き出すタイプのシャフトでハードヒッターにおすすめ。
『バブルウエイトSE』と『プロトタイプLT』はどんなゴルファーにおすすめ?
今回、2タイプのシャフトを実際に打ちましたが、その性格は対照的。
『バブルウエイトSE』は、ひとくちでいうとスピード感のあるシャフト。スイング中のリストコックやテコの動きを、シャフトの力で増幅してくれる。試打クラブは46.5インチでしたが、長めで組むとさらに飛距離を出しやすくなる。
レジェンズツアーでやや体力の落ちてきた技術のあるプロが愛用する理由も納得。シャフトで大きなスピード&パワーを得ているのが分かりました。スライスで悩むアマチュアにもお勧め。
一方、『プロトタイプLT』は、アイアンでスチールシャフトを愛用している方に推奨。グラデーション効果により、実際の長さよりも短く感じるので、スチールシャフトアイアンの長さと振り心地がマッチしてくる。
シャフト挙動は全体で球にぶつかっていく印象で、先端部分もかなりしっかりめ。非常に再現性の高いしなり戻りで、インパクト効率も高く、左にもいきづらい特性。HSの速いゴルファーやスイングが一定しない、方向性に悩んでいる方にミート。