三菱ケミカルは7月、新軽量ブランド『VANQUISH』(4万4000円)を発売した。従来の軽量シャフトは非力な人向けというネガティブイメージが先行していたが、今作は軽量アスリートブランドとして豊富なスペックをラインアップしている。
そこで、多くのフィッティング経験を持つ、ゴルフ5 プレステージ新宿店の隠岐和也フィッターに『VANQUISH』の販売状況やゴルファーの声、どのようなゴルファーにマッチするかなどを聞いた。
まずは『VANQUISH(ヴァンキッシュ)』の販売状況を聞かせて下さい。
「『VANQUISH』は7月に発売したのですが、発売前1週間のイベントで10数本先行販売し、そこから一気に火が付きました。当初はプロギアの『RS』のみでしたが、ブリヂストンの『B3』にも入れられるようになったことで、さらに知名度が高まりました。
ヤマハから発売した『インプレス ドライブスター』レディスモデルの純正シャフトにも『VANQUISH』と入っていたので、人気の高まりを実感しています。当店ではドライバーからの流れで、3番ウッド、5番ウッドまでセット購入になることが多いです。平均で週販3本と安定して売れています」
その要因は?
「軽量帯の人気モデルだと藤倉の『エアスピーダー』や『エアスピーダープラス』もありますが、それぞれ1フレックスしかないので、対象者が限られてしまいます。
一方『VANQUISH』は軽量モデルなのに豊富なスペックがあり、特にフェアウェイウッドは振動数のフローが作りやすいんです。従来の軽量帯ではドライバーと同じフレックスにして、チップカットでなるべく硬さを合わせる対応をしていましたが、どうしても振動数が足りないケースが多かった。
その点『VANQUISH』なら、例えばドライバーがSで、フェアウェイウッドがXという選択もできます。こうすることでウッドトータルの振り感が揃って打ちやすくなるので、必然的に複数本の販売に繋がりやすい。フィッターとしてはフィッティングの幅が広がって助かります」
なるほど。ほかの軽量シャフトと比べてどんな特徴でしょうか?
「従来の40g台の軽量モデルは、アバウトに全体的にしなってしまうものが多かったと思います。特に40gのRなどはグニャグニャに軟らかいものが多く、つかまえに行くとチーピンが出やすくなってしまう」
その点はアスリートモデルの軽量帯を使うという選択肢もあるのではないでしょうか?
「アスリートモデルは全体的にしっかりしており、特に手元の硬さを感じる方がいます。手元が硬いシャフトはスイングテンポが速い方には合うのですが、それ以外の方は打ち急ぎやカット軌道に繋がります。
正直言うと、『VANQUISH』もスペック表記は先中調子ですし、見た目の第一印象からしてきっとバキバキに硬いシャフトなんだろうなと思っていました。ところが振ってみると、手元側の程良いしなりを感じるんですね。振動数は結構出ているのに、もっちり感があるというか、ガラス系ではなくゴム系のしなりを感じます。
軽量モデルなのに、軽さを感じない不思議なシャフトです。今までこういった挙動のシャフトは重めの元系しかなかったので、軽量モデルでこの振り感は『VANQUISH』以外記憶にないですね」
実際のゴルファーの声は?
「『先がしっかりしているのに手元までしなりを感じられる』、『軽くてしっかり振れるのに左に行かない』という声が多いです。トップで1拍間を置く方やゆったり切り返す方、ゆっくりしたテンポで振る方にマッチしています」
軽量モデルへのネガティブな声はなかったですか?
「その辺りはこのコスメが仕事しています。デザインが強そうでカッコいいので、軽量モデルの頼りないイメージを消してくれています。最近はプロでも軽めを使うので、お客様も抵抗がないようです。
先ほど言ったように程良くしなるので、普段はSが振れない人にもSを勧められるのも好材料です。4Sと5Sが最も売れているのがその証拠です。それと4R2あたりは女性でも合う方が多いです」
三菱ケミカルの軽量モデル『グランドバサラ』との棲み分けは?
「『グランドバサラ』は力のない女性やシニア向けの軽くて軟らかいモデルです。また『Diamana』の軽量帯は、しっかり感がほしい方向けに作られています。そういう意味でも『VANQUISH』は全く性格が違うと思いますね」
なるほど。従来の軽量シャフトとは一線を画すモデルですね。
「そうですね。現在はプロギア、ブリヂストン、PING、PXGくらいでしか選べませんが、他のメーカーでも選択できるようになれば、きっと売れると思います。フィッターとしては是非多くのメーカーに採用してほしい。
それと、今後は『VANQUISH』シリーズの違うタイプも出してほしいですね。例えば三菱ケミカルらしいマイルドな仕上がりの先調子が『VANQUISH』シリーズから出れば、『エアスピーダー』とさらに棲み分けができると思います。これで終わらず、是非これからも続いてほしいシリーズですね」
お問い合わせ:三菱ケミカル
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