「ゴルフはパット!」と意気込んでパターマットを買うも、いつしか自宅の床で埃をかぶっているというゴルファーも多いのではないだろうか? パターの練習は単調なうえ、上達具合が分かりにくい。コツコツ続けるにはそれなりの根気が必要だ。
そんな中、パター練習に特化したNintendo Switch™(ニンテンドースイッチ)用のソフトが7月4日に発売になるという情報が入ってきた。タイトルは『おうちでゴルフ練習 パターうまくな~る!』。開発したのはイマジニアという会社で、これまでエクササイズゲームの『Fit Boxing』シリーズや『スマート対策』シリーズなど、Nintendo Switch用のソフトで多くのヒット作を世に送り出している。
同作はPGAツアープロの渡邊義徳氏を監修に迎え本格的なパター練習ができるというが、そうは言ってもゲームである。多少懐疑的な気持ちを感じながらも、渡邊プロレクチャーの元、体験させてもらった。
「フェース角」がパッティングを極める?
同ソフトは、Nintendo Switchの専用コントローラー「Joy-Con™」をパターのグリップのように握って、実際に振りながらプレーする。基本モードは、
➀フォームを固める
➁距離感を養う
➂傾斜感覚を鍛える
という3つから構成されている。
早速➀の「フォームを固める」からプレーした。同モードは0.5~5mの範囲で距離を選んで練習できる。基本の距離は1、2、3、5mだが、0.1m単位で自分の好きな距離を練習することも可能だ。グリーンの速さは一般営業のゴルフ場に多い9フィートに設定されている。記者は真ん中をとって3mを体験してみた。
Joy-Conのストラップを手首につけてグリップ。実際のパッティングのようにアドレスしてXボタンを長押しすると、画面の下にパターを真上から見た映像が登場し、フェース角が表示される。
最初は0度にセットされているが、手先の細かい動きにも敏感に反応し、フェース角が0.1度刻みで微妙に変化する。試しに極端に手先の開閉動作をしてみたが、即座に反応する。手を左右に動かすと、それに応じて画面上のパターも左右に動いているのが分かる。
ストローク動作に移ると画面が切り替わり、パターの映像が拡大された。これはパッティング時のゴルファーの視点を再現しているので思わず没入してしまう。早速そのままインパクトしてみると画面の中のボールも即座にピンに向かって転がった。タイムラグも全く感じない。
結果は3mを大幅にオーバー。打った後は画面に「転がった距離」と、「ボール初速」が表示される。初速が表示されるのは玄人向けだ。
2球目はなるべく0度を維持したままストロークしようと意識したが、手先の細かい動きが忠実に再現されるためスクエアに当てることが難しい。
3球試してみたが全体的にフェースが開いて当たり、右にプッシュする傾向が出た。実は記者は実際のラウンドでもカップの右に外すことが多く、自分のミスまで可視化されてしまった。ストロークを見ていた渡邊プロからは、
「手先でJoy-Conを振っているため右手が前に出てフェースが開いています。3球の距離がバラバラなのも手を動かしてストロークしているのが原因です。このモードはインパクト時になるべく0度になるようにストロークを鍛えるモードです。パッティングはまずはフェースをスクエアに保てないと距離感も合いません。これはパッティングの基本だと考えて下さい」
と指摘された。今度は渡邊プロのアドバイス通り、肩甲骨の間を意識して体幹でストロークしたところ、手先がブレずにフェース角の開きが抑えられた。「所詮ゲーム」と侮っていたが、体幹を意識して構えるだけで汗をびっしょりかいてしまった。まるでエクササイズのようだ。
実際のパターは重量があるため気づかなかったが、軽量のJoy-Conでストロークしたことで、いかに自分が手に頼ってストロークしていたかが分かってしまった。手打ちを撲滅し、正しいストロークを養う効果がありそうだ。
「距離を打ち分ける」重要性
一方、➁の「距離感を養う」というモードはロングパットの練習がメインだ。ポイントは5m、7.5m、10m、12.5m、15mと次第に打つ距離が長くなっていく点にある。
「我々プロがよくやるのが、2~3m刻みで距離を伸ばしながら3球ずつ打っていく調整法です。これをやることで自分の中の距離感を確認します。このモードはその調整法を取り入れたものです。アマチュアにとっては距離感を養うことに繋がります」(渡邊プロ)
早速、Joy-ConをグリップしてXボタンを長押しする。先程は気付かなかったが、パターの映像の周りにストロークの軌道を示す水色のガイドラインが2本あるのが分かる。よく見るとガイドラインは緩やかなインサイドイン軌道になっており、開発のこだわりを感じる。
「パターは真っすぐ引いて真っすぐ打つと思っているゴルファーが多いですが、実は若干のインサイドイン軌道になるのが普通です。それをイメージしやすいようにしています」(渡邊プロ)
5mからスタートしていくが、次第に距離が長くなるので難易度も上がってくる。やっていくうちにロングパットではカップに入れるというよりも、カップ周辺に近づけることを意識するようになった。ここにロングパットの距離感を養うヒントが隠れていそうだ。
自宅のパターマットは一般的に3mが主流だ。そもそも一般家庭にはロングパットを練習できる広さ、環境そのものがないためこれは仕方のないこと。しかしいざコースに行くとファーストパットを3m以内から打てることはほとんどなく、普段練習していないロングパットをいきなり打つことになる。その意味では家庭でロングパットの距離感を養えるこのモードの可能性を感じる。
さらに傾斜も平ら、上り、下りの3つから選択できる。もちろん、1つの距離を選択して重点的に練習することも可能だ。
プロも実践する練習法で傾斜を攻略
最後は➂の「傾斜感覚を鍛える」というモードを体験。傾斜のあるグリーンの想定で、カップ中心に時計回りで12か所からストロークしていく練習だ。距離は0.5m、1m、2m、3mが基本だが、これも0.1m刻みで任意の距離を設定できる。さらに傾斜の角度も、0.5度、1.0度、1.5度から選択可能でかなりマニアックだ。
記者は距離を2m、傾斜角度1.0度を選択して試してみた。ストローク画面には右上にグリーンのアンジュレーションを色分けした図が表示されている。暖色系は高く、寒色系は低くなっている。この辺りは時計型のGPS距離計に慣れているゴルファーは直感的に理解できるのではないだろうか。さらにその下には「緩やかに下りのスライスライン」といった形でラインの説明が出るのでイメージしやすい。
打ってみたが、これもなかなか難しい。特に下りの曲がるラインは本番さながらの緊張感があり、Joy-Conを握る手に汗が滲む。
今まで必死で気付かなかったが、ストロークが良いとカップに転がっている最中にピンがズームする演出が入る。これが出たにもかかわらず一筋でカップを外すと思わずため息が漏れる。一方、カップインした場合、カップ側からの視点に変わり、ボールがカップに転がり込んでくる演出が入る。これが出た時の気持ち良さは本番さながらで、思わずガッツポーズが出てしまった。
それと画像をよく見てもらうと、カップの側面に2つの穴が開いていることが分かる。これについて渡邊プロがこう話す。
「ゴルフ場は毎日カップを切り直していますが、この穴はその際にカップを持ち上げる器具を通す穴なんです。そういった雑学もゴルファーに知ってほしくて忠実に再現しました。細かいでしょ?(笑)」
また全モード共通だが、Joy-Conのボタン操作で、打ち出し方向の調整や4つの視点変更もできる。このモードは傾斜を読んで打つ練習なので、打ち出し方向の変更を多用することが多かった。
パター練習を飽きさせない多彩なモード
その他にも息抜きで試せるモードも搭載されている。
1つ目は、18ホールをワンパットでクリアしていく「ワンパットゲーム」だ。各ホールには難易度を示すHDCPが表示されており、この辺りも実際のゴルフ場さながらのこだわりだ。またスタンダード、アドバンスド、プロフェッショナルの3段階でレベル分けされており、プロフェッショナルは超高速グリーンの11フィートに設定されている。記者は18ホール中2ホールしかカップインできず悔しい結果に終わった。
2つ目は、1日1回お題に挑戦する「デイリーミッション」だ。プレーした日はカレンダーにボールマークがつくため、溜まっていくと達成感を味わえそうだ。
さらに各モード共通でプレー履歴を確認でき、フェース角などのデータを一覧で見て傾向を分析することもできる。ゲームソフトの域を超えたパター測定器に近い仕様だ。
応用練習にも使える細かな設定
今回の体験取材はテレビに映して行ったが、Nintendo Switch本体をドックから外して床や机の上に置くと、ストローク時の画面が実際のパッティング時の視点に近くなるため、よりリアルな練習ができる。携帯もできるのでゴルフ場に持ち込んで練習グリーンで併用するというのもありかもしれない。
それと設定画面を見ると、右打ちと左打ちが設定できるため、レフティーは左用のJoy-Conを使って練習ができる。またパターのヘッドもピン型、マレット型、ネオマレット型の3種類から選べる。この細かすぎる設定はプロゴルファーをしっかり監修に入れて、こだわり抜いて開発したことが見て取れる。
それと応用編として、右打ちのゴルファーがあえて左用のJoy-Conを使うことが有効な練習だと渡邊プロが語る。
「右打ちの方で右手が強すぎると、フェース角が安定せずストロークに影響します。そんな時に私が生徒さんにやってもらうのがクロスハンド。左手で引く動作に変わるので右手が悪させずフェース角が安定します。左用のJoy-Conを使うことでクロスハンドと同じ感覚でストロークできるので記者さんには有効です」
試しに記者もやってみると、確かにストロークが安定した。Nintendo Switchの仕様をフル活用してストロークの矯正にも使えるようにしている点は実践的だ。
ゲームではない「パター練習器具」
昨今、練習場やインドアには弾道測定器が搭載されており、ショットのデータを分析することにゴルファーも慣れてきた。しかし、パターに関しては意外と自分のストロークの傾向を知らないゴルファーが多いのではないだろうか。前述したが、今作はパター測定器として自分のパッティングを可視化することができる。
「3mのパターマットでは自分の物差しを作ることはできますが、それ以上の距離はイメージできません。それがこのソフトを使うことで自分のストロークと転がる距離の関係性をつかめます。
それと私はパッティングにおいてフェースアングルが最も重要だと思っており、これが安定しないとパットは入りません。このソフトでは『体幹を使ってフェースをスクエアにすること』を大きなテーマに掲げています。これができるようになれば実際のパッティングのストロークも安定するでしょう。パターマットと併用する練習もお勧めです。
弾道測定器やシミュレーターは数十万円~数百万円するため、一般のゴルファーにはなかなか手が出せませんが、このソフトなら手軽に自宅のリビングでパター練習ができるのでセルフチェックに最適です。ゴルフ未経験者も手軽にプレーできるのでゴルフの裾野も広がると思います」(渡邊プロ)
記者も当初、所詮ゲームだと軽く見ていたが、実際のパッティングを研究し尽くしたパター練習器具だというのがよく理解できた。真剣にやればやるほど体幹を使って汗をかいてしまう。ゴルファーにとっても、Nintendo Switchユーザーにとっても入り込めるソフトに仕上がっている。
普段パター練習にまで手が回らない忙しいゴルファーにこそ使ってみてもらいたい。
■『おうちでゴルフ練習 パターうまくな~る!』公式サイト
https://putt-umakunaru.imgs.jp
©Imagineer Co., Ltd.
※Nintendo Switchのロゴ・Nintendo Switchは任天堂の商標です。