桑木野 近ごろは、カートナビの充実によりウォッチ型GPS距離計の使用頻度が減っていたのだが、酷暑の今夏は熱中症対策のため、プレイは無駄なくスマートに、効率の良い時間の使い方を意識し、ウォッチ型に頼ることが多かった。
変化があると最新機種に興味が湧いてくるものだが、そんな時、昨年末にレビューした『Voice Caddie(ボイスキャディ) T‐ULTRA』の次の新製品が出るとのことだった。『ULTRA』の完成度はかなり高かった。今回は「GPS」とあって期待感が膨らむ。
11代目の進化
『ボイスキャディ T11 PRO』。11代目の「Tシリーズ」だ。ウォッチ型GPS距離計が多くのゴルファーの必需品となってまだ5~6年のことなのに、すごいスピードで進化していることになる。「ボイスキャディ」のレーザー距離計は女子プロの使用率が高いが、GPS距離計でも積極的に市場へ存在感を示しているのだ。
初めて手にした『T11 PRO』は、軽い(約48g)のに画面が大きく、時計のアナログ表示の文字盤が格好良かった。ポイントの青色が効いている。緑色にも切り替えられるらしい。さらにデジタルの文字盤が2種類とゴルフっぽいデザインが1種類、切り替え可能だ。普段使いもしてほしいという新たなメッセージを感じた。
左手首に装着すると、ベルトがインナーに収めるタイプに変更されていることに気付く。プレイシーンに適した細かい気配りも進化の一つのようだ。
撮影を兼ねたテストラウンドは、千葉セントラルゴルフクラブ。まず、練習場へ向かう。スタート前の「Tシリーズ」の特徴といえば、スイングテンポだと思い出した。自分自身のベストショットが出る時のスイングテンポを数値化する。例えば、ラウンド中にミスショットが出た時に「早打ちだったかも」という感覚を数値と赤、青、黄の色で客観的にミスの原因を教えてくれるのだ。以前の記憶をたどると、確か「2.6」だった気がするが、改めて計測しても私のナイスショット時のスイングテンポは「2.6」だった。
自分仕様にカスタマイズ
使用ラウンドはAコース。1番ホールは581ヤードの長いPAR5。右側には長い池。確実に前に進めることが大切なホールだ。
左腕の『T11 GPS』を覗く。1.39インチと大きくなった画面は見やすく、鮮明な色が印象的だ。日差しが強い日は、反射して見えにくいことが多いのだが、新採用の「AMOLED(有機EL)」によって常に明るく表示してくれるうえ、動きもサクサクだ。ノンストレスで快適にプレイできる。
今回の進化のキーワードは「カスタマイズ」。スタート前にスマホのアプリと連動させて、さまざまな機能を好みに合わせて設定するとトップ画面が自分仕様になる。「ボイスキャディ」独自の、立ち位置に応じたコースレイアウトが変化する「V.AI機能」と合わせて、プレイ中に欲しい情報がひと目で分かるので便利だ。
アプリ上で各クラブの飛距離の目安を入力すると、残り距離に合わせたクラブを推奨する機能が使える。ラウンドを重ねてリアルな数字が蓄積されれば、より精度の高いクラブ推奨をしてくれる。
240ヤードに設定したドライバーの落とし場所付近に赤い曲線が引かれた。一方、グリーン側からは新たな機能「デュアルピンアーク」でグリーンから逆算した50、100ヤード付近に白い円が描かれ、コース戦略を立てやすくなった。
その他、58段階のグリーンアンジュレーション表示やお馴染みの「アクティブグリーン」機能など充実した機能をON・OFFと選びながら自分仕様を作り上げていく。右利き・左利き、右打ち・左打ちを選べるのも気が利いている。
その中で私が特に「これ使えるなあ」と思ったのが、風向き、風速の表示だ。トップ画面に風向きが矢印で、風速が数字で表示される。さらにタップするとコース図全体に風向きを示す矢印がたくさん表れて、リアル感が伝わり非常にわかりやすい。難しい風の読みを迷うことがなくなりそうだ。
リアルとの融合
その日は、台風が近づいていた。ティーイングエリアでは強烈なアゲインストの風。『T11 GPS』を覗くとやや右からの毎秒4mのアゲインスト。右の池は240ヤードの曲線のはるか先まで続いている。
飛ばなくてもいいから、右に行かせない。フェアウェイキープを心掛けてコンパクトに振り抜いた。事前のインプットを意識しすぎたのか、ややチーピン気味な弾道は斜面に当たってフェアウェイ左に置けた。スイングテンポは2.4と表示。やや早打ちだったが、事前インプットに基づきリスクヘッジしたマネージメントの結果だと思い納得。
2打目地点に移動するとドライバーの飛距離が218ヤード、次が2打目と表示されている。スイングを感知して自動で打数をカウントする機能がついている。改めて『T11 PRO』でコース状況を確認し、2打目もフェアウェイキープ必須で前に進むことを意識し、7番ウッドを選択した。仮にUTの方が得意なら、事前にアプリで同距離の場合はUTを推奨するという設定もできる。
3打目に向かう途中、自動で画面が切り替わった。V.AIが状況に適したレイアウトを表示してくれる。フロントエッジ、奥までの距離を確認。スワイプするとグリーンの表示に切り替わった。高低差を58段階の色で表現しているから150ヤード以上離れた地点からでもグリーンの形状、傾斜がわかる。
グリーン上を長押しすると幅25m、奥行き27mと表示。グリーンの形状、大きさまでわかる新機能だ。傾斜を表す矢印もグリーン全体に配置され瞬時に脳内変換できた。7番アイアンを振り抜くとグリーン左手前にギリギリ乗った。
GPSたる所以
ロングパットが残ったグリーンでも『T11 PRO』は活躍した。まず58段階の傾斜画面と目の前のリアルを合致させる。次にピンまで歩いてフラッグボタンを押すとグリーン上の正しい位置にピンが移動。
そしてボール地点に戻り下のボタンを押すと残り距離が表示された。さらに矢印とともに「左1m以上が狙い目」の表示。遠くからキャディの声が聞こえてくるようだった。
『T11 PRO』の魅力と優れている点を3つ挙げてみる。
・自分仕様のカスタマイズ
・リアルと融合する有益な情報
・プロキャディのような信頼感
『T11 PRO』の「PRO」は自分専用のプロキャディが左腕に内蔵されているという意味なのだと勝手に解釈した。
【動画】くわっきーが『T11 PRO』をコースで徹底検証