愛知県名古屋市の「CRゴルフ名古屋」が、屋外型の全14打席に弾道測定システム「RAPSODO RANGE」を導入した。同施設の奥行きは約23ヤード。一般的な大型練習場と距離では競えないという弱点を、最新テクノロジーによって強みに変えようという試みだ。各打席では11項目のショットデータに加え、スイングとインパクトを2つのカメラで確認でき、シミュレーションゴルフやゲームも楽しめる。導入後は若い利用者が増え、打席の滞在時間は従来の約2倍になったという。導入を決めた同施設支配人の佐藤篤志氏と、ラプソードのインターナショナルマーケットディレクター、マット・リグビー氏に、導入の狙いや成果、日本市場における今後の展開を聞いた。
まずは動画で
「短い」という弱点をテクノロジーで強みに変える
―まず、CRゴルフ名古屋の施設概要と、ラプソードレンジを導入した経緯を教えてください。
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佐藤篤志氏[/caption]
佐藤篤志氏(以下、佐藤)屋根のある屋外型の打席が2階と3階に合計14打席あり、別に室内打席を4打席備えています。ラプソードレンジを導入したのは屋外型の14打席です。
当社がこの施設の運営を始めたのは2026年2月からですが、奥行きが約23ヤードしかありません。大型練習場と比べれば、ボールを遠くまで飛ばして弾道を見ることができない。これは施設として明確な弱みであり、従来と同じことをしていては競争できないと考えました。そこで、運営を始める段階から「弾道測定器は必ず必要になる」と考え、さまざまなシステムを比較しました。
―その中からラプソードレンジを選んだ決め手は何だったのでしょうか。
佐藤まず、奥行きが23ヤードという条件では設置できないシステムがありました。また、打席の正面側に測定器を置くタイプでは、ドライバーとアイアンを打つときに機器の位置を動かさなければならないものもあります。
ラプソードレンジは打席の後方から測定できます。さらに、専用のモニターまで一体になっている。測定器とは別にタブレットなどを用意する必要がないことにも驚き、「これしかない」と思いました。
―14打席すべてへの設置には、どれくらいの期間がかかりましたか。
佐藤 約3日です。実際には、丸々3日かかったという感覚もないほどスピーディーでした。弾道を測定できるところまで仕上げてもらいました。施設のリニューアルから営業開始までのテンポが速かったのですが、ラプソード側にもそれに合わせて対応してもらえました。営業を長期間止める必要がなかったことも大きかったですね。
「いらない」と話していた利用者も導入後は「すごい」
―導入直後、利用者からはどのような反応がありましたか。
佐藤 とにかく「すごい」という声が多かったですね。「この場所で、こんなことができるとは思わなかった」と驚かれました。導入前には、常連のお客様から「測定器はいらない」「付けなくてもいい」と言われたこともありました。それが実際に使ってみると、帰り際に「すごいわ」「何だ、これは」と声をかけてくれる。導入してよかったと実感しました。
―来場者数や稼働率、滞在時間などにも変化は表れていますか。
佐藤 特に大きく変わったのは、一人のお客様が打席にいる時間です。従来と比べて約2倍になっています。ボールを打つだけならすぐ終わりますが、ラプソードレンジでは打った後に数値を確認し、スイング映像を見て、インパクト映像も見る。一球から得られる情報が多く、それを楽しみながら確認するため、自然に滞在時間が長くなります。利用者の満足度も高まっていると感じます。
―客層にも変化はありましたか。
佐藤 若い方が明らかに増えました。若いゴルファー、特にゴルフを始めたばかりの人は、必ずしも細かな数値を測りたいわけではありません。シミュレーションゴルフやゲームを楽しみたいというニーズが強い。遊びの感覚でゴルフに触れられることが、若い世代にとって大きな魅力になっています。
若い方たちが打席で声を上げながら楽しんでいる光景をつくりたいと考えていました。それが狙いどおりに実現したことは、とてもうれしかったですね。
映像と数値がレッスンの「証拠」になる
―スクールやレッスンでは、どのように活用されていますか。
佐藤 施設に入っているスクールのコーチは、弾道や数値を確認しながら指導しています。特に役立っているのが、スイング映像とインパクト映像です。
口頭で「ここがこうなっています」と説明しても、受講者にはなかなか納得してもらえないことがあります。しかし、実際のインパクトやスイング、球筋を画面で示しながら説明すれば、「本当にそうなっている」と理解してもらえる。指導内容の“証拠”になるわけです。コーチは教えやすくなり、受講者も目で見て理解できるので、一石二鳥だと思います。
―運用する中で、改善してほしい点や追加を期待する機能はありますか。
佐藤 練習データをスマートフォンなどに持ち帰れる機能です。自分のショットデータを自宅で振り返り、課題を見つけて再び練習場に来る。その循環ができれば、練習の質が高まり、リピーターの増加にもつながると思います。
また、一定期間のニアピン大会などを開催し、参加者の順位を表示できる機能も欲しいですね。イベントを集客に活用でき、利用者にも目標を持って楽しんでもらえます。
―導入を検討している練習場経営者に伝えたいことはありますか。
佐藤 以前のゴルフ練習場は、来場者を待っていればよい商売だったのかもしれません。しかし、これからはイベントを行ったり、お客様に還元したり、弾道測定器を入れたりと、施設側から攻めなければ来場してもらえません。守りに入れば、お客様は他の施設へ行ってしまいます。お客様を第一に考え、積極的に新しいことへ取り組む必要があります。
ラプソードレンジは全打席に入れる必要はなく、2打席から導入できます。例えば最初は数打席だけに設置して効果を確認し、その後に増設する方法もある。導入のハードルは比較的低いので、まず試してみる価値は十分にあると思います。
日本の練習場に「手の届くテクノロジー」を
―ラプソードレンジを開発した背景を教えてください。
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マット・リグビー氏[/caption]
マット・リグビー氏(以下、リグビー) ラプソードは約10年前、野球用の製品で日本市場へ参入しました。その後、ゴルフ分野でも世界各地で評価された2機種の一般消費者向け弾道測定器を発売し、日本も重要な市場の一つになりました。その次の進化として、ゴルフ練習場向けのシステム開発へ進んだのです。
開発にあたって重視したのは、大規模な練習場だけでなく、あらゆる施設が導入できる価格と仕組みを実現することでした。今回のCRゴルフ名古屋のような奥行きの短い施設から、100打席を超える大型施設まで、規模にかかわらず対応できるシステムを目指しました。
―日本のゴルフ練習場市場をどのように見ていますか。
リグビー 日本には、立地や地域によってさまざまな規模、形態の練習場があります。私たちは日本でラプソードレンジを展開する前に、1年以上をかけて市場を調査しました。その結果、小規模な施設から段階的に増設できるシステムへのニーズがあると判断しました。
少数打席から導入でき、施設の状況に合わせて拡張できることは、練習場経営者にとって大きなメリットです。柔軟性とプロフェッショナルな機能を両立させることが、私たちの強みだと考えています。
―日本では、ゴルフ人口の高齢化や練習場数の減少といった課題に直面しています。このような課題に対して、テクノロジーはどのような役割を果たしますか。
リグビー 従来の練習場にはなかった付加価値を提供できます。ラプソードレンジは操作が分かりやすく、多くのゴルファーが知りたいデータを表示します。年齢、性別、ゴルフ経験を問わず使えることが重要です。子供からシニアまで、データや映像を通じてゴルフを楽しめるツールになっています。
2つの映像と柔軟な導入条件が最大の特徴
―競合するシステムと比較した際の優位性は何でしょうか。
リグビー 最大の特徴はビデオリプレイシステムです。後方からスイング全体を確認できる「ショットビジョン」と、インパクトの瞬間を捉える「インパクトビジョン」の両方を、一球ごとに記録します。この2つの映像を提供できることが、他のシステムとの大きな違いです。
ドップラーレーダーと2台のカメラを組み合わせた技術は、個人用弾道測定器「MLM2PRO」で培ったものがベースになっています。奥行きの短い練習場にも対応でき、2打席から100打席規模まで導入できる柔軟性も特徴です。
―少数打席からの導入や、柔軟な契約条件を設定した狙いは何ですか。
リグビー 日本市場を調査する中で、従来の選択肢では条件が合わず、弾道測定システムを導入できなかった施設が多いことに気づきました。私たちは練習場向け事業の新規参入企業だからこそ、既存の仕組みに縛られず、少数打席から大規模施設まで対応できるプランを提供しようと考えました。
初めに2打席へ導入し、利用者の反応や収益性を確認しながら増設することもできます。導入の負担を抑え、これまでテクノロジーを持てなかった施設にも新たな価値を提供したいと考えています。
導入後も施設ごとに成長を支援
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「50~100施設への導入を目標に」とリグビー氏が言うと「うちの近所には入れないで」と佐藤氏がお願いする場面も[/caption]
―導入施設には、どのような効果を期待していますか。
リグビー 第一に、質の高いカスタマーサービスと継続的なサポートを提供することです。導入して終わりではなく、それぞれの練習場に合った活用方法を一緒に考えるパートナーでありたいと思っています。
クリニックやイベント、利用者が集まる企画など、施設の地域性や客層に合わせた取り組みを支援していきます。ラプソードレンジは日本での展開開始からまだ約半年です。導入施設から意見を聞きながら、運営支援の仕組みも構築している段階です。
―公式サイトにはマーケティング機能も紹介されています。
リグビー 今後は、各施設に合わせて画面をカスタマイズし、施設のロゴや地域企業の広告、イベント情報などを表示できるようにする予定です。将来的には顧客管理など、より幅広いマーケティング活用も検討しています。
また、全打席の状況を一つのパソコンから確認・操作できる管理者向けポータルも開発しています。グラフィックスの品質向上やサービス面の強化を含め、現在のシステムを継続的に進化させていきます。
―故障や不具合が起きた場合のサポート体制はいかがでしょうか。
リグビー 日本国内のオフィスが窓口となり、技術サポートを行います。電話での相談に加え、ハードウェアの修理が必要な場合には、日本のサポート担当者が現地へ出向いて対応します。アフターサービスは、私たちが最も重視していることの一つです。
2年以内に国内50~100施設を目指す
―今後、どのような機能を追加していく予定ですか。
リグビー 最近ではフェース・トゥ・パスやアタックアングルなどのクラブデータを追加しました。今後はグラフィックス、施設管理、マーケティング、アフターサービスをさらに強化します。
ニアピン大会などで参加者の順位を継続的に表示するリーダーボードや、新しいゲーム機能についても多くの要望をいただいており、次の開発段階に入っています。公開時期はまだ示せませんが、開発は進めています。
―日本国内での導入目標を教えてください。
リグビー 今後1~2年で、50~100施設への導入を目標にしています。CRゴルフ名古屋を一つのきっかけとして、これから導入施設を増やしていきたいと思っています。
これまで費用や設置条件を理由に、弾道測定システムを諦めていた練習場にも、テクノロジーを導入する機会を提供することが私たちの使命です。ラプソードレンジは、今回のような小規模・短距離の施設にも、一般的な大型練習場にも対応できます。日本のより多くの練習場に新しい価値を加え、ゴルファーがデータと映像を使って楽しめる環境を広げていきたいと考えています。
「RAPSODO RANGE」とは?
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主なプレイモードは「RANGE」「TARGET RANGE」「COURSES」の3つ[/caption]
「RAPSODO RANGE」は、ドップラーレーダーと2台のカメラを組み合わせた練習場向け弾道測定システムだ。キャリー飛距離、トータル飛距離、ボールスピード、クラブスピード、ミート率、打ち出し角など11項目のショットデータを計測する。240fpsのスローモーション映像で打点を確認できる「インパクトビジョン」と、後方からスイングと弾道を表示する「ショットビジョン」を搭載。レンジ、ターゲットレンジ、コース、ゲームなどのモードで楽しめる。防塵・防水設計の22インチタッチディスプレイ一体型で、打席後方約2メートルに設置。2打席から導入でき、最短1日で設置できる柔軟性も魅力だ。
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キャリー飛距離、トータル飛距離、ボールスピード、クラブスピードなど、全11項目のショットデータを計測する[/caption]
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後方カメラからスイング動画を撮影し、ショットごとに確認できる[/caption]
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240fpsのハイスピードカメラでインパクト時の打点やクラブヘッド挙動を見ることができる[/caption]
お問い合わせ:Rapsodo TEL.045‐319‐4871
https://www.rapsodo.co.jp/