千葉県千葉市。ゴルフ場が多い地域でトッププロから地元のアマチュアゴルファーの面倒を見るのが、S-one GOLFの松成修一代表だ。10年ほど前に独立開業して、練習場・フジゴルフパークの空きスペースを借りて営業している。そんな松成代表が20代からクラブの相談にのっているのが現在40代の女性ゴルファーAさん。平均スコア80台半ばと上級者だが、ドライバーが若い頃と比べて振り切れないことで飛距離が停滞、弾道が散らばるのが悩み。男性用クラブでゴルフを始めたから、重く硬いクラブでゴルフを覚えている。今回のフィッティングの肝は「固定概念に捉われないこと」だとか。どんなフィッティングを施したのか?
ツアー選手の影響で度の過ぎるアンダースペック
トッププロから一般のアマチュアまで、幅広いゴルファーのクラブをサポートする松成代表。最近、対応するゴルファー にある傾向があるという。
「それこそ4~5年ほど前までは、日本人特有というか、見栄を張るゴルファーが多く、ヘッドが難しすぎたり、シャフトが硬く重すぎるスペックを好むゴルファーが多かったですよね。それが最近は逆で、度の過ぎたアンダースペックを希望するゴルファーが多いんですよ」
松成代表が説明するには、
「例えば、ローリー・マキロイですがシャフトは 50g台のSフレックス。それで、ヘッドスピード45m/sの男性ゴルファーが『 マ キロイが50gのSでしょう。だから俺は40gのRで十分なんだよ』と」
ヘッドが進化して、どんなシャフトでも曲がらない。単純に振りやすさを求めすぎて軟らかいシャフトを選ぶのだとか。
「特に女性ゴルファーには軟らかいシャフトを薦めがちです。でも今回のAさんは逆ですね」
若い頃と比べ振り切れず、飛距離が停滞し、球が散らばるAさん。薦めたのは、軽量で球が上がるワクチンコンポの「WACWAC8」(ワクワクエイト)のHT(11.5度)のヘッドと、棒みたい硬いと言われる藤倉コンポジットの「ベンタスブラック」(初代)の5S。簡単なヘッドと硬いシャフト。それで悩みは解決したのか?
スイング中にヘッドを感じない シャフトはしなりを感じるのが嫌

Aさんのスイングは身体が軟らかいこともあり、インサイドからクラブが出てくるドローヒッター。しかし、アッパーなスイングではないから打ち出し角が低い。加えて、スイング中のヘッドの位置は感じないが、切り返し直後に感じるシャフトの「グニュッ」としたしなりが嫌いだという。
「それでヘッドは軽く、ロフトの多い『ワクワク8』のHTを選びました。そのヘッドに初代の『ベンタスブラック』のSフレックス。ヘッドスピードが38m/s前後ですから、ヘッドは良いとしてもシャフトは一見オーバースペックですよね」
Aさんは重く硬い男性用クラブでゴルフを覚えた。当時はヘッドを感じていたが、加齢とともにクラブが重く感じて振れなくなったという。
「スイングの特性もあって、『ワクワク8』はロフトが多いけど少しだけ前重心。ソール後方にもウエイトがあって、インパクト時にフェースが上向くんですが、低スピン。打ち出し角が高くなり、高弾道低スピンになりました」
一方の「ベンタスブラック」だ。
「Aさんはシャフトのしなりを感じやすい。だから違和感を覚えて振り抜けないという原因もあった。もともと硬いシャフトが好きだったので棒みたいにしなりを感じない『ベンタスブラック』のSシャフトにしたんです」
ヘッドが軽くカウンターバランス。だから、クラブを重く感じず振り切れるようになり、飛距離も若い頃にもどり、球の散らばりもなくなったという。
「固定概念」対「クラブの進化」 その戦いがフィッティングの鍵

Aさんはこれまで、若い頃と異なり飛距離が停滞して球が散らばるから、
「OBが多くてゴルフが苦しくなっていたと言っていました。女性にしては200ヤードを超える飛距離の持ち主だったこともあって、自信もなくしていた。それが今回のフィッティングで解消されて、ゴルフ熱が上がったと聞いています」
今回のフィッティングで松成代表は改めて気づきがあったという。
「クラブが進化して、どんなシャフトでも曲がらなくなった。だから振りやすさ優先で軽く軟らかいシャフトを選びがちですが、それが振りにくいゴルファーもいます。『固定概念』と『クラブの進化』の戦いで、いかに『固定概念』を打ち破るかが、ゴルファーにとって最適なクラブ選びにつながることに気付きました」
過去の経験に当てはまらないゴルファーの存在。フィッターによる固定概念の打破が、マイカスタムの極意となっているのは間違いない。
メーカー担当者コメント
グラビティー 代表取締役 原田安浩氏
「『ワクワク8』(HT)の設計は、ロフトが11.5度と多めながら、結構な浅重心なのでリアルロフト通りの中弾道が出るヘッド。ところが今回のケースは高弾道低スピンの球筋になっていますね。スイングやシャフトによってメーカーの意図と違う良い結果になっている。新たな発見だと思います」
S-one GOLFとは
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ブログ:http://ameblo.jp/s-onegolf
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2025年5月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。