工房探訪 安心感を提供できれば クラブはビンテージにできる Drop&Spin custom plus 店長 武恵一氏

古着、釣具との共通点がゴルフクラブには存在する
東京都荒川区町屋。下町風情を残す商店が軒を連ねる尾竹橋通り沿いで営業するのが『Drop & Spin custom plus』(ドロップアンドカスタムプラス)。その工房を一人で切り盛りするのが、武恵一店長だ。
店舗は実家ビルの1階だが、洋服店で販売員を経験した後、1995年からビンテージのジーンズやスニーカーを米国まで買い付けて販売する古着屋を営んでいた。一方で趣味であるバスフィッシングではプロとして活動。そのオフシーズンにバスプロ仲間と興じたのがゴルフだったという。
「特にバス釣りの釣り竿やルアーはゴルフクラブと同じで『エース』があり、それによって使い手との相性や釣果にも影響していきます。さらに、道具を大事にして飾るなどビンテージ感もあり、古着との共通点もあるんです。そんな中でゴルフにハマリ、道具にもハマっていったんです」
古着屋を知人に任せ、自分はゴルフパートナー(GP)に6年間勤務。もともと老舗工房の京葉ゴルフ(東京都足立区)に通いつめるほどのギア好きだったため、同工房店主の「自分で店を作った方が面白いよ」という後押しで、5年前にゴルフ工房を開業した。
「釣り具でお世話になっていたダイワさんに知り合いがいて、開店当初から『ロッディオ』を販売できるなど、ラッキーな部分はありましたね」
現在、GP時代からの顧客、開店後の新規の顧客、釣りや古着関係のゴルファーで常連客は50人程度。一種独特の武店長のフィッティングとは?
一発よりも安心感 ピンチを救うギアの提供
フィッティングは屋上の試打スペースや練習場へ弾道計測器「スカイトラック」を持ち込んで行っているが、
「気持ち良く振ることができるタイミングのシャフトを見つけることが重要です。クラブを速いスピードで振り抜けるタイミングの合ったシャフトは、インパクト前後で余計な操作をしません。余計な操作をするのは振りにくいタイミングのシャフトで、インパクトで左肘を抜いたり、オーバースイングになったりします。最近のシャフトはしなり量が多くても、撓り戻りの速いシャフトが多い。タイミングが合わせやすく、結果的に振りやすいシャフトとゴルファーが感じることが多いことにつながります」
藤倉コンポジットの『デイトナスピーダー』やループの『AI』などがそれで、結果としてヘッドスピードが上がり、スピン量も抑制できるという。
「インパクトゾーンが安定すればミート率が上がります。一発の飛びより安定性が向上すれば、スコアに結びつきますし、それがウェッジやパターならピンチを救うギアとなります。スコアアップすれば、活躍したクラブは『エースクラブ』になって、『お気に入り』のクラブになります。それが安心感にもつながり、ゴルファーとクラブの良い関係が構築できます。そういう意味では、我々は『エースクラブ』を見つけるお手伝いをしています」
武店長自身もパターで悩んだ時期があったという。そのため、パターでは武店長独特の調整を行っているという。
クランクネックを4度立てて「座り」の安心感を演出する
「実は僕自身、パターに悩んだ時期があったんです。引っかけが止まらなかった。そこでスラントネックをフェースに対して90度を保ちながら、徐々に立てていった。最終的に4度調角し、ライ角が74度になった時に、引っかかりがなくなりましたね」
一般的なパターのライ角は70度前後。それを4度もアップライトに調角するのは一見常軌を逸しているように思えるが、同氏は次のように説明する。
「僕自身が悩んだときに、なるべく近くに構えて、脇を締めて、引っ掛からないように縦振りをしたかった。それでライ角を4度立てたら、ソールの座りもよく、引っかかりもなくなったんです」
同氏が付け加える。
「重心位置もありますが、パターを構えた時にソールの座りが悪くてフェースが被ったり、トゥが上がったり、ヒールが上がったりなどがありますよね。パターを“ポン”と置いた時に、ターゲットに対してスクエアにフェースが向いて、座りがしっくりくれば、安心してラインに打ち出せる。これも安心感につながります」
パターはほかのクラブと比べて、いつでも練習できるギアで、スコアメイクに重要なギアだと同氏は語気を強める。
「だから安心感が必要なんです。釣り具も古着も安心して使ったり着たりするから長く大事に扱ってビンテージになります。ゴルフクラブも同じですよ」
古着屋オーナーから工房マンへの転身。共通点は安心感の提供と愛着に尽きるだろう。