客前で作業を見せる調角で万力を使わなくなった
神奈川県横浜市都筑区。横浜市営地下鉄グリーンライン川和町駅から徒歩10分。閑静な住宅街で営業しているのが、キングゴルフ。一人で切り盛りするのが石森敏晃社長だ。本間ゴルフに入社し営業マンとして9年、ゴルフショップで9年、ゴルフキングとして独立してから13年、業界歴30年以上のベテランだ。
「本間ゴルフに入社した頃は、直営店を増やしていた頃です。営業職で入社しましたが、直営店を転々として、その頃にパーシモンの修理などを憶えました。その後、先輩が独立したゴルフショップに呼ばれ退職したんですが・・・」
ゴルフショップに9年勤めたものの、経営不振で倒産。13年前にゴルフキングとして独立した。
「本間時代は直営店で4店ほど勤務しましたから修理もそこで学びました。それが今でも生きていますが、いまでは使わない技術もありますね」
当時は万力に直接ヘッドを挟んでロフト角、ライ角などの調角を行っていたという。
「当時学んだ職人さん達は同じだと思いますが、専用の工具を使わない方が作業が速かった。もちろん、目盛りはないですが、感覚で数値は合っていましたからね」
しかし、近年は作業風景を顧客に見せることも工房の信頼に繋がる。だから、
「お客さんが見ていますからね。万力に直接ヘッドを挟むことはなくなりました。作業時間は少しだけ遅いですが、専用の工具を使っていますよ」
そんなベテラン工房マンのフィッティングとは?
「軟らかいシャフトは曲がる」は誤解、オーバースペックを見直す
店内には多くの試打クラブが用意してあり、ドライバーだけでも100本以上。
「常連さんは100人ほどで、そのほとんどが試打クラブを借りていきます。長く付き合っていますので、ゴルファー自身がスペックを決めることが多い」
とはいえ、いまだにオーバースペックのゴルファーは多いという。
「オーバースペックのゴルファーは多いですね。特にシャフトのフレックスを『S』にこだわる。軟らかいスペックは曲がると思っているゴルファーも多い。それを見直すことは重要です」
ヘッドの大型化、シャフトの進化によって、全体的には高弾性繊維を採用し、先端強度も高まっているシャフト。それによって、昔のフレックスSと今のSは違うという。
「人間の体は、重すぎたり硬すぎたりする道具を使うと無理に振ろうとします。力みや撓り不足が曲がりに繋がるのです」
実際には「スピーダーエボリューションVI」の60g台のSからまず重量を落として50g台のS、そして50g台のRというように、重量、フレックスをダウンスペックすることで、曲がらずに飛ばすことを推奨しているという。
「昔よく言っていた『お客さんは力があるから70g台のSフレックスですね』という時代じゃない。僕ら工房マンの反省点でもありますね」
用具の進化を見てきたベテラン工房マンだから、説得力がある。
そんな石森氏はパーツメーカーにもお願いしたことがあるという。
ヘッドを重く、グリップも重く クラフトマンゆえの悩み
「パーツブランドのヘッドはもう少し重く設計してもらいたい」
クラフトの作業で、悩むことがあるという。
「大手クラブメーカーの軽量クラブは、ヘッドも軽量化するかわりにグリップも軽量グリップを装着してバランスを適正化しています。最近の地クラブヘッドの場合は、ヘッド重量が軽量だから通常のグリップを装着して短めに組むとバランスが出にくいのです」
石森氏はグリップに関して、重いグリップの方が手元は緩まないという。さらに、グリップが緩むことで方向性を逸しているゴルファーは意外に多いと指摘する。
「だから、198gのヘッドだったら、あと2g位は重くても良い」
それによって重いグリップを装着できてグリップが緩まず、少しだけ短く組んでもバランスも確保でき、飛距離と方向性のバランスの取れたクラブ作りができるというのだ。
「長くても45.5インチまでです。それ以上長いと振りづらくなる。短い方が振りやすくなりますし、方向性も安定しますから」
ただ、ゴルファーはわがままでもあるという。
「曲がらないクラブが欲しいといっていても、結局は飛距離も欲しいというのがゴルファーの本音。ワガママな部分も加味してフィッティングしています」
クラブ長でも、短尺だと方向性が安定するが飛距離を失う。ゴルファーが求める按配を会話の中から得ることができるのも、歴30年以上のベテランクラフトマンの匠の技かもしれない。
この記事は弊誌月刊ゴルフ用品界(GEW)2019年11月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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