【メンバーのクラブを面倒見る 老舗専門店のゴルフ工房】
関西を中心に6倶楽部8コースのゴルフ場を運営する信和グループ。そのゴルフショップが京都市中京区に店を構えるフジゴルフ。1964年創業の老舗で、京都府下のみならず、関西一円からゴルファーが集まる。
同店で工房を任されているのが、工房チーフクラフトマンの塩崎敏伸氏だ。25歳まで系列のゴルフ場で研修生生活を送り、その後、クラフトマンとしてフジゴルフに着任した。
「当店の顧客はゴルフ場のメンバーが多く、『信和さん』といってもらってご贔屓にしてもらっています。工房は、藤倉ゴムの『スピーダー661』などが流行した時代にリシャフト需要が増えたことからスタートしました」
店内は大手メーカー品のクラブ売場、アパレルやアクセサリーの売場に加え、レッスンができる試打席が4打席。それに加えて工房を完備している総合専門店。
その中で工房は、コアゴルファーの細かい要望に応える重要な存在になっている。
「当初は完成品の売上が8割でしたが、今ではクラブ販売で地クラブが5割に達しています。最近ではゴルファーの要望に応じてパーツを仕入れるので、地クラブのブランド数は年々多くなっています。増えすぎるのもゴルファーを迷わす原因になるので、その点は注意していますね」
その塩崎氏のフィッティングについて聞いた。
【クラブだけでは解決しない レッスンもあるフィッティング】
塩崎氏はフィッティングについて、
「フィッティングは、トライファスのABマップとサイエンスアイでの計測値を参考にしますが、特にシャフトは最近種類が多すぎて困惑するケースが多くなっていると思います」
塩崎氏はシャフトフィッティングで「つかまり具合」と「ミート率」に注目し、「つかまり具合」は飛びに、「ミート率」は平均値に繋がると考えている。その上で、グリップの握り方にも注目する。
「ボールがつかまらないグリップの握り方、つまりウィークに握って大型ヘッドのクラブを振り回すと、強引にヘッドを返してしまうゴルファーが多い。ボディターンでのスイングを勧めますが、上半身、特に腕力が強いラグビーや野球経験者に多いですね。その場合は、腕力だけで振りにくい重柔シャフトを勧めます。例えば癖のない挙動の『アッタス5GoGo』の重柔スペックです」
とはいえ、同店は多くの常連客がメインのため、地クラブも指名買いが多い。
「もちろん、お客さんと相談しながら試打をしてもらってモデル、スペックを決めていきますが、クラブだけでは良い結果を得られない場合もありますから、その場合はスクールやラウンドレッスンも勧めています」
この循環は同店ならではだ。
「クラブのフィッティングやクラフトは私の仕事ですが、スイングはスクールで、その流れにあるラウンドレッスンはグループのゴルフ場で対応します。ゴルファーへのワンストップサービスが当店のウリですから」
【ニーズに応えるために 我を消して標準に組む】
常連客の多くが系列ゴルフ場のメンバーなため、工房利用者はこだわり派が多い。なので、
「基本的には、極力要望に応えるように努力しています」
時には、クラブバランスをゴルファーのわがままに合わせるためネック内に重量調整用の鉛を入れたり、接着剤も多めに使用することもある。
ただし、注意するのは、
「特にアイアンですが、特別な要望がない限りニュートラルに組み立てること、素材を生かしたクラフトを念頭に作業することを心掛けています」
なぜなら、ゴルフ場のメンバーが多く、クラブをゴルフ場で試すのが日常。ゴルフ場ではショットの状況も様々だから標準的に組み立てることで、その先の調整の方向性が見えるのだとか。
加えて、
「もちろん、ゴルファーは当店だけを利用するわけではありません。関西にはクラフトに大変こだわっている工房さんがあります。万が一、その工房さんに持ち込まれても恥ずかしくないように組み立てています(笑)」
さらに、ニュートラルにクラブを組み立てれば、スイングの修正点も見えやすいという。
「クラフトマンがこんなことをいうのは変かもしれませんが、ゴルフはスイングが8〜9割だと思っています。ニュートラルに組み立てたクラブだからこそスイングの修正点が分かりやすく、スイングはスクールがサポートできます。我を消して安定感のあるクラフトを行うことが、当店における工房の役割だと思っています」
ゴルフ場とショップ、スクールの三位一体の中にある工房は、役割分担が明確。その中で安定感のあるクラフト技術が、ゴルフ場メンバーの愛着心向上にも繋がっている。
この記事は弊誌月刊ゴルフ用品界(GEW)2019年4月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
月刊ゴルフ用品界についてはこちら