【ゴルフ場のインショップ 工房は入店しやすい】
埼玉県さいたま市にアコーディア・ゴルフのノーザンCC錦ヶ原ゴルフ場がある。東京都内から一般道でも約1時間。会員制ながら、初心者も楽しめる。
そのインショップの一画で営業しているのが、嵯峨ゴルフ工房だ。週4日間の営業を一人で切り盛りしているのが、嵯峨義章社長である。
父親の影響により二十歳でゴルフを始め、東京ゴルフ専門学校へ入学。卒業後は、ゴルフメンテナンスアーバンの豊政保宏氏に弟子入り。16年ほど修業して、10年前にアコーディア・ゴルフが試験的にゴルフ場で工房を開業する際、独立してアーバン三鷹として委託業務を受け、6年前に嵯峨ゴルフ工房として再スタートした。
「当時、アコーディア・ゴルフさんは大厚木CCと習志野CC、そしてノーザンCC錦ヶ原の3ヵ所で試験的に工房を始めたんです。そこにアーバン三鷹として仕事を受けたのがスタートです」
ノーザンCC錦ヶ原は、都内から近いということもあり、来場者数は多い。工房の常連客も自営業のメンバーが多く、とはいえ、入場者全員が潜在顧客だという。
「路面店の工房は常連客でなければ入りにくいですが、ここは全てのゴルファーがターゲットになります。工房はレストランへ続く階段から見える場所にあって、作業場の外にヘッドやグリップを陳列しているので、何をやっているのかすぐわかる。グリップ交換は気軽に依頼してくれます」
グリップ交換は重要で、
「ゴルファーは工房の力量をグリップ交換で見ています」
それで工房の技術が認められれば、クラブ調整やクラブの購入につながるという。そのフィッティング術とは?
【飛びを味合わせながら 後調整を考えた3/4インチ】
嵯峨社長は、
「特別なことを行っているつもりはありません。ただ、ひとつ挙げるなら上半身の使い方を診るかもしれません」
同氏が続ける。
「シャフトのしなりを上手に使えるゴルファーもいれば、そうではないゴルファーもいます。トップの切り返しでもわかりますが、上半身の使い方が上手なゴルファーは、しなりを使えるゴルファーだと思います」
しっかりとスイング中に体を捻転させることで、上半身を上手に使えると指摘するが、
「それができ、さらに理想のクラブ挙動を作るために体をどう動かすかを理解している人は、フィッティングがしやすいですね」
フィッティングする際に心掛けているのが、
「プレー中に自信が持てるクラブに仕上げること」
自信が持てるクラブとは?
「例えば、ドライバーなら一発の飛距離なのか、フェアウェイキープ率なのか。一発の飛びなら、当初は3/4インチほど長く作るだけに留めます。なぜなら、それを味わってもらうことも重要だからです。ただ、飛べば曲がりますから自信が持てなくなるので、その後、フェアウェイキープ率を上げるクラブに調整するため、短くすることを想定した3/4インチなんです」
【朝はカーボン、昼はスチール ゴルフ場ならではのサービス】
そのようにゴルファーのクラブと向き合っているが、場合によっては同じゴルファーが持参したクラブで前半のハーフはカーボンシャフト、昼からはスチールシャフトを試打してもらうこともあるという。実際に可能なのか?
「このゴルフ場は入場者が多く、土日祭日の昼食休憩は1時間半から2時間ほどと長いんです。その時間を使って、アイアン1本ですが同じヘッドでリシャフトして、午後のラウンドで違うシャフトを試してもらうこともあります。全ての条件が揃った時にできる特殊なサービスですが……」
ゴルフ場の状況に左右されるが、パーシモンからクラフトを学んだベテランの知恵や技術も、それを可能にしているという。
「ヘッドとシャフトの接着は、真空状態にすることが重要なんです。それによって接着材の硬化時間は短縮します。私の経験から、シャフト素材と接着材とホーゼルの素材の密着度を高めるために、セルロイドのCABシートを挟み込みます。密着度が高まり、硬化時間が短縮するのです」
ベテランの技や知識が必要だが、とはいえ、そのようなサービスをすべての工房で提供できるとはいえないだろう。クラブハウスの一画に工房を構え、多くのゴルファーが来場するゴルフ場ならではのサービス。それも、全ての状況が整うことが条件だ。
「ゴルファーはここにいます。だからこそ路面店ではできないサービスがあります。これから工房を開業しよう、または、ロードサイドでは商売が厳しくなってきたという工房マンには、参考になる事例だと思います」
来場者の多いゴルフ場の一画。待ちの営業スタイルから攻めの営業スタイル。嵯峨ゴルフ工房の経営手法は、ひとつの参考例となりそうだ。
この記事は弊誌月刊ゴルフ用品界(GEW)2019年3月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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