【ゴルフ嫌いな銀行マンが 脱サラして工房ビジネス】
太平洋に面する茨城県鉾田市。その南西部に位置する当間地区。見渡す限りの田畑の中に、ゴルフシステムワークス エム・ギアはひっそりと営業している。
約20坪の店内には弾道計測器スカイトラックを完備した試打室1打席に、ドライバーの試打クラブが100本以上を完備。その工房を切り盛りしているのが、元銀行マンの大畠正人代表だ。
新卒で就職したのが地方銀行で、当時は取引先とのゴルフは業務命令。それが嫌で嫌でたまらなかったという。
「配属された支店によりますが、支店長の肝いりコンペを毎月行う支店もありました。それでゴルフを始めたんですが、毎回ニギリを強いられて負ける。で、レッスンに通い始めたんです」
取引先の練習場にレッスンプロを紹介してもらって練習開始。
「そうなるとゴルフ雑誌を読み漁り、道具にも興味を持ちますよね。次第に道具に関する疑問が浮かんでくるのですが、複数のレッスンプロに聞いても納得いく答えが得られない。『そうだ! これは仕事になる』と思い込んだんです」
ただ、脱サラからのゴルフ業界への転職は、周囲の猛反対にあったという。
「『カタギの仕事をした方が良い』といわれましたが、生業にする人が少ないということは、逆に商売になると考えたんです。だから、ゴルフ好きが高じての開業ではありません」
開業したのは2001年1月。ゴルフシステムワークス(東京都練馬区)の研修を受け、その講師だった浅野ゴルフサービスの浅野幹雄氏に師事。1年間の修業の後、開業に至った。
【客とゴルフをしないのが 円満経営の最善策】
大畠社長は開業以来、師匠である浅野幹雄氏の教えを守り続けているという。
「お客さんとゴルフをしないことです。誰かとラウンドすると、ほかのお客さんともラウンドしないと平等ではなくなります。でも出来ない事もあって、それでお客さんのプライドはキズつくわけです」
以前、顧客同士の間接的な誹謗中傷に触れ、心身共に病んだ時期があった。
それに加え、大畠社長は自身をクラフトマンと位置づけている。
「基本的にはクラブの組立をするのが私の仕事。ゴルフ場ではクラブよりスイングやライなどがプレーに影響します。その部分はレッスンプロの仕事です」
そのため、顧客がスイングに悩んだときの受け皿として、3人のティーチングプロと契約してスイング面のサポートを行っている。
ところで、茨城県鉾田市は2011年3月に起きた東日本大震災の影響を大きく受けた地域。同地区の震度は6強で、いまでもエム・ギアの床は2度傾いている。
「震災直後は当然客足も減って、2年ほどは年間400〜500万円の赤字が続きました。ただ、震災後に何か意識が変わったというわけではありませんでした。淡々と仕事を熟していました」
楽観的な思考の背景には、周囲がゴルフ場銀座という環境や、茨城県鉾田市には年商1億円を超える農家が100世帯以上も存在して、金持ちゴルファーの巣窟だからだろうか?
「実際、ゴルフ場のメンバーや自営業が多いのは確かです。ただ、そこがベースではなく、自分自身が楽観的な性格だからですよ(笑)」
それはともかく、工房の鍵となるエム・ギアのフィッティングとは?
【切り返しのタイミング重視でも スイングは治しません】
大畠社長のフィッティングはオーソドックスだと断言する。
「切り返しでタイミングの『速い』『遅い』でシャフトへの負荷が変わります。速い人はクラブがトップに行くまでにダウンスイングに入るのでシャフトにかかる負荷が大きく、撓り系のシャフトだとさらにシャフトに負荷を掛けてしまいますから」
例えば、切り返しのタイミングが速いゴルファーには、「ワクチンGR450」、遅い人には「ワクチンGR330」などを勧める場合もあるという。
ただ、
「トップの位置での手首の角度にもよって、切り返しでの力の入り具合も変わってきます。こうなるとシャフトも変わりますが、打ち方なのでクラフトマンの範疇じゃありません。レッスンプロを紹介することにしています」
一貫して自身をクラフトマンとして位置づける大畠社長は、スイングについては「プラスアルファー」と考えているという。
「ゴルフの仕事は分業制だと思っています。そうでなくては、クラブの基本的なことを伝えられない。もちろん、工房自体も長続きしないですから」――。
大畠社長はゴルフ好きが高じて工房を開業したのではない。ビジネスとして成立するのが、ゴルフ工房だった。
「クラブはこうあるべき」「スイングはこうあるべき」という工房が多い中、割り切ってクラブに集中する工房の存在も、工房の本来の姿といえるだろう。
この記事は弊誌月刊ゴルフ用品界(GEW)2019年2月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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