工房探訪 2017年12月号 練習場工房は飽きさせない 商品構成と時短作業が鍵 エスワンゴルフ 代表 松成修一氏

工房探訪 2017年12月号 練習場工房は飽きさせない 商品構成と時短作業が鍵 エスワンゴルフ 代表 松成修一氏
東京都小平市花小金井。新青梅街道沿いでは、多くの練習場やゴルフショップが鎬を削っている。そのひとつがゴルフ練習場のワールドゴルフで、場内で営業するのが1997年に開業したアムゴルフクラフト。工房を一人で切り盛りするのが加藤明代表だ。 加藤代表の実家は杉並で有名な老舗割烹料理店だった。物心ついた頃から、包丁を握っていたという。学校を卒業後、家業を継ぐつもりで10年間、都内の有名日本料理店で修業。その時に覚えたのが「飾り切り」だという。 「大根を桂剥きにして、それを使って牡丹や菊など四季折々の花を作る作業を覚えました。それがアイアンやウエッジを研磨する細かい作業に似ています。細工の仕事はまず、頭の中で作る物を三次元でイメージします。ウエッジのフトコロやネックとの繋がりなどは、飾り切りの思考回路と同じだと思いますね」 美しい形状のイメージはゴルフクラブも同じだという。得意技は左を向いたフェースを真っ直ぐにする匠の技。その手法は後述するが、フェースが左を向いていることに気付いたのは中学生の頃だったという。 「小学生の頃に近所のプロゴルファーに7番アイアンを1本もらいました。プロがレッスンしている練習場で週に一回練習させてもらい、実は料理よりゴルフにハマったんです」 その7番アイアンに疑問を持ったのが中学生の頃。 「クラブの知識はないのですが、なぜフェースが左を向いているのか? 疑問に思って、公園に行ってトンカチでフェースを真っ直ぐに叩いてましたよ(笑)」 商売で使える「フェースを真っ直ぐに調整する技」を工房歴23年の間に独学で習得して、工房のウリにしているという。 【鍛造ヘッドは収縮するから フェースが被ってしまう】 なぜ、フェースは左を向くのか? 同氏の説明を聞こう。 「鍛造のアイアンやウエッジはスプリングバックだと思いますが、商品になった時点で素材が収縮してしまいます。具体的にはフェースとネックの繋がりの部分ですが、そのフトコロが収縮するのでフェースが左を向くのです。最大2度ほどですが、上級者になるほど引っ掛かる原因になります」 調整方法は、ライ・ロフト調整器を使って、ライ角を寝かせる方向に曲げ、違った方向に戻す。それを2〜3度繰り返すことで、ライ角とロフト角を変えることなく、フェース角を調整するという。 1本の作業時間は2〜3分。スクエアに調整したフェースとの繋がりを考慮して、シャフトも右から挿入することもあるという。 「このフェースの調整が口コミで広がって、多くの上級者ゴルファーが集まってくれました」 特にウエッジはフェースの向きを含めて、すべてが凝縮しているクラブだと加藤代表は強調する。 「ネックとフェースの繋がり部分が盛り上がっている場合や、リーディングエッジの頂点がトゥ寄りにある場合、トップエッジが平行な場合などは、フェースの向きが定まらないことが多いと思います。それを含めて、研磨して欲しいという依頼も多く、オリジナルのアイアンやウエッジの販売にも手を出しています」 【クラブの軽量化に 両面テープは少しだけ】 パーシモンクラブの修理や調整に比べれば、いまのドライバーの組立は簡単になったと話す。ところが、それでも悩みはある。ドライバーの軽量化だ。その対応策を自ら考案した。 「多くのゴルファーは、60g台のドライバーシャフトを選びたがりますが、60g台のシャフトを装着すると、多くの場合は総重量が310gを超えてしまう。それを45インチで302g程度にしたいと編み出したのが、両面テープの使用量を極端に減らすことです」 同氏によると、製造公差で軽くできてしまった46〜48gの軽いグリップを採用すると同時に、グリップテープはバット側で2cm、ティップ側で1.5cmしか使わない。それによって重量は約2g軽量化でき、 「シャフトのフィーリングがクリアになることもプラス要素です」 23年も工房を営んでいれば、20年来の常連客も多い。気付かぬうちに年を重ね、310g超のクラブに体力が伴わないゴルファーも多くなる。 「トレンドは50g台のシャフトですが、フィーリングが損なわれます。やはりシャフトの性能やフィーリングを考えれば60g台のシャフトを使用することで、ダウンスイングからの心地良い振りやすさも体感できるんです」 四半世紀に迫ろうとしている工房店主は、ゴルファーと共に歩んでいる。その中で生み出された技がゴルファーのプレー寿命を延ばしている。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2017年12月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら