将来独立するために勉強できるのは中古ゴルフ屋だった
栃木県足利市。東北自動車道・佐野藤岡ICから車で15分の県道沿いにゴルフショップBACK-9は店舗を構える。元は自動車部品の設計技師だった戸塚大介店長は、独立気質が強く、当時ハマっていたゴルフで独立しようと27歳のときにゴルフパートナー(GP)に就職。
「当時GPは伸び盛りで、店長お任せ経営の出来高給料制でした。だから比較的自由に商売させてもらい、勉強して独立したのです」
とはいえ、すぐに店舗を構えたわけではない。2年ほど自宅を事務所兼倉庫として、楽天、ヤフオクなどを駆使してクラブを販売していた。
「ところが一人で売りさばける量には限度があって、売上は月400万〜500万円で頭打ちになったのです。店を構えれば、店内は売場兼倉庫になるし、GP時代のお客さんも来てくれる。それで2009年に店を構えたのです」
開店当初は新品と中古、そして並行輸入品をリアルとネットで販売していたが、2年も経たないうちに同業者が現れて、それを機に地クラブを扱うようになったという。今では売上の8割がパーツとなっているが、
「だからといって、地クラブなら何でも販売するわけではありません。自分が気にいった商品を本気で勧めます。ゴルフは遊びですから、商品に対する価値観をゴルファーと共有できることもこの仕事の楽しみなんです」
とはいえ、しっかりとしたフィッティングも行っている。
【先入観は持たせない スペックは見ないで!】
フィッティングで戸塚店長が重視するのが、スイング中の切り返し直前の『間』だという。クラブがゴルファーにとって振りやすいのか、振りにくいのか。それは総重量と『間』で判断する。
「スイング中にクラブが重そうな仕草が見られるゴルファーは、トップからダウンスイングに入る直前にクラブを引っ張り起こそうとする間があります。これがダフリや振り遅れの原因になると判断しています。逆に軽そうに振っている場合は、トップが浅くなり手打ちになりがち。そのあたりを見極めて、総重量を合わせる作業を行います」
例えば、320g(D2)のドライバーを重そうに振っている場合は、ワンランク軽いシャフトを装着して310g(D4)に仕上げる。総重量は軽量化されるがバランスは2ポイント上昇して、
「物質的な重量は軽くなりますが、感性の部分はバランスD4で軽く感じない。錯覚みたいなもの」
それに加え、
「とにかく、スペックは気にせず打ってくださいとクラブを手渡します。先入観を持たずに試打することが、正しいフィッティングへの近道だと思いますから」
自動車部品の設計に携わってきた戸塚店長にすれば、工業製品としてのゴルフクラブに、完璧な数字を求めることに違和感があるという。
「だって、ホーゼル穴が完璧に垂直なのか。それすら絶対的に正確じゃない場合がありますよね。そのような数値にこだわりすぎるより、試打した感じとコースで使った結果が一致した方が、ゴルフは楽しくなるはずです。数値は目安であって正義ではない」
数値では表すことのできない感性と結果。それを重視するのも工房マンの技術として必要なのだ。
【目を引く商品を奨めることで ゴルフが楽しくなる手助け】
ところで、店内を見渡すとゴルフ工房と思えないほど、ゴルフアパレルの売場が充実している。並行輸入物が多く、すべて戸塚店長のセレクトだという。
「まずは格好いいという商品を勧めたいですね。仕入れのポイントは“悪そう”“ド派手”“さわやか”などがキーワードですが、実際に目を引くウエアを提供しながら、ゴルフを楽しむ手伝いをしたいというのが本音です」
だから、もちろん性能は重視するが、シャフトならデザインが奇抜な「クレイジー」や「クライム・オブ・エンジェル」、アパレルなら「ラウドマウス」などを揃えているという。
「ゴルフが下手だからといって、使ってはいけないブランド、着ることが恥ずかしいアパレルはないと思っています。それと、上達へのサポートはしますけど、上達しなければならないという考えもありません。だから、ゴルフが下手でも、そのブランドがカッコ良くてゴルファー自身の気持ちがよければ、ゴルファーの満足度は高いと思っています」
ゴルフが下手でもいい―。そして気軽に工房に通ってクラブの相談にのってもらえる。そんな工房なら通ってみたい気持ちになるだろう。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2017年11月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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