個人経営の限界を払拭したドン・キホーテの箱
東京の副都心・池袋。首都高速中央環状線と同5号池袋線が交わる場所に24時間営業のドン・キホーテがある。その中に会員制インドアレッスンスタジオ「inGolf」があり、その一角に2・5坪のゴルフ工房・チップゴルフが営業している。
もともとチップゴルフは2002年、世田谷区経堂(東京都)に中古ゴルフショップとして開業。5年ほどしてリシャフトブームに乗ってパーツを中心とした工房に業容を切り替えるが、個人経営の限界を感じて、2年前にドン・キホーテ北池袋店がインドアゴルフビジネスに参入するのを機に、同店内に移転した経緯。安達哲治店長が説明する。
「中古店は趣味が高じて始めた店で、次第にリシャフトが増えて工房ビジネスが中心になりました。しかし、個人経営だから、なかなか流行りの計測器などに投資ができない。それで知人の紹介で、いまの場所に移ってきました」
それが2年前。現在では会員制インドアスクールと連動しながら測定機器を活用してフィッティング。データを活用してゴルファーのクラブ相談に乗り、世田谷時代からの常連客の世話もするのだが、毎年常連客とテーマを決めて、それに向かって取扱商品や推奨品を決めていくという。その内容が興味深い。
【毎年会合でテーマを決める いま辿り着いたのは短尺理論】
世田谷で店を構えていた時代から、常連客や出入りするプロゴルファー、そして安達店長はシーズンオフに20~30人規模のコンペを開催。1年間のゴルフの問題点を洗い出し、翌シーズンに向けてどのようなクラブを提供するのかを話し合うという。
「問題点や情報を共有して、それを解決するクラブやスイング理論を提供するのです。だから毎年テーマは違うし、推奨するクラブも年ごとに異なります」
背景にはこれまで面倒を見たゴルファー2人がプロテストに合格し、ノウハウが蓄積されたことが自信になったのだという。その上で、上達志向の強いゴルファーを常連客として持ち、さらにいえば上達志向の高くないゴルファーには、他の工房を勧めるという徹底ぶり。だから、
「ドン・キホーテの中に間借りしていますが、劇的に客数が増えたということはありません(笑)」
そこまでこだわり抜く理由は、工房として突出したサービスを持たなければ生き残れないという危機感がある。それで行き着いたのが、短尺+軽量+柔らかいクラブとスイング理論だとか。
「その理論に従ってくれるゴルファーだけに向けて、いまは商売しています」
その理論を実践するために、オリジナルシャフトまで作った。その理論とは?
【クラブは長くなるほど 硬くなるほどタメができない】
安達店長が強調するのは、
「フィッティングでは、ひとつの要素として切り返しの瞬間を見ています。その切り返しで、プロも含めて95%のゴルファーはタメができない。クラブが長すぎて硬すぎて、ついでに重すぎて遠心力でオーバースイングになり、その反動でリリースが速くなる。簡単に説明すれば短く、柔らかく、軽いクラブを使い、それに合わせたスイングをする方が、アマチュアは飛ぶというわけです」
そのため、ドライバーなら38gのオリジナルシャフトで43・5インチ仕上げ。スイングバランスがC台も珍しくないという。
「実は私が注目しているのは、インパクトの現象なんです。飛距離に通じるインパクトの現象を毎回同じようにできるかどうか。そのためにクラブを仕上げますが、グリップも重量を合わせるために1機種のサイズ違いしか装着しないことにしています」
そのグリップはゴルフプライドの『MCC+4』。同じモデル(サイズ違い)で3つの重量帯(47g、52g、66g)があって重宝しているが、贅沢をいうなら各番手用に同一モデル5g刻みの重量帯で25gから65gまでのグリップが欲しいという。
こだわりが半端じゃないかわりに覚悟もしている。
「クラブを変えますから、スイングも変えてもらいます。上達したいゴルファーしか顧客になってもらわなくて結構です(笑)」
全国で2000店を超えるといわれるゴルフ工房。その中で生き残る術は個性的なサービスに特化することだろう。退路を断った工房の生き様が見えた気がする。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2017年10月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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