AED(自動体外式除細動器)をご存知だろうか? 近年は様々な商業施設やゴルフ場などでも設置しているが、使用法について十分に啓蒙されているとは言い難い。
「消防白書」(総務省消防庁)によれば、日本では心原性による突然の心肺停止が年間約7万5000件以上発生しており、そのうち約2万5000件以上が一般市民の目の前で起きているという。交通事故死が年間約4000人、自殺者は約3万人(警察庁調べ)だから、「突然死」がいかに多いかがわかるだろう。
「突然の心肺停止に対するほぼ唯一の手段が、AEDを使った心肺蘇生法です。心臓突然死は男性の高齢者がなるものという固定観念があるかもしれませんが、実際は性別や年齢に関係なく、誰にでも起こる可能性があるのです。そして40~50代のスポーツ種目突然死件数(日本医事新報)ではゴルフが41件で1位、ランニング(2位、33件)より多いというデータもあります」
そう警鐘を鳴らすのは、今年のジャパンゴルフフェアに出展したキヤノンマーケティングジャパン(CMJ)ビジネス推進課の田中泰之氏。同社はキヤノン製品の国内販売会社で、カメラ・医療機器等を主に手掛け、AEDは他社製品の販売代理店業務を行う。同氏が続ける。
「仮に心肺停止時に救急隊到着まで何もしなかった場合、1カ月後の生存率は8・9%、社会復帰率は5・0%といわれています(消防庁調べ)。傷病者を発見してすぐに119番通報をしても、到着まで平均で約8・5分かかり、この間、心肺蘇生法を行わないと、1分ごとに7~10%も蘇生率が低下するといわれます。脳に酸素が供給されないと脳障害などの後遺症が残るため、5分以内の電気ショックが必要。AEDを要請し、服を脱がせパッドを装着するまでの時間を考えると、往復で2分以内の場所(約300mごと)にAEDが設置されていることが望ましいのです」
現在、国内のAED設置台数は約50万台だが、往復で2分以内の場所に設置するには計300万台以上が必要だという。AEDを使った心肺蘇生法を施すと生存率が50・2%、社会復帰率が43・1%と飛躍的に向上するため、「突然死1位」のゴルフ場で設置は急務といえる。
「大半のコースはクラブハウス内に1台は設置していると思いますが、実際には2ホールごと、または2組に1台の割合でカードに積んでいることが望ましい」(田中氏)
その際、問題はコストで、AEDの設置にはメンテナンス費を含め1台約30万円かかるという。仮に9ホールに設置すると300万円ほどの出費となる。また、AEDは気温が0℃から50℃の環境下での使用が推奨されており、カートに積載しっぱなしというわけにはいかない。アコーディア・ゴルフ広報部の庄司竜太主任は、
「当社はすべての施設にAEDを1台以上設置しており、心肺蘇生講習もコース単位で行っていますが、今後は設置場所を含め、台数を増やすことも視野に入れなければと思います」
CMJは、AEDの普及活動を積極的に行っている。2009年の発売を契機に、翌年からは社員インストラクターの養成活動を手掛け、約250名まで増加した。そのメンバーが全国で心肺蘇生講習を実施しており、昨年末現在で心肺蘇生講習を5908回、講習受講者は累計8万3770名にのぼるという。
「心肺停止状態で倒れている人に遭遇したら、迷わずAEDを使ってください。使い方は、すべてAEDが音声ガイドでサポートしてくれますから誰でも簡単に使用できます。突然死を減らしましょう」(田中氏)
なお、講習は60分間・20名まで訪問料込で1万9800円だという。問い合わせは、
キヤノンマーケティングジャパンHPへ。