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  • キュルキュル時田由美子「わたしがゴルフで起業したわけ」

    時田由美子
    株式会社CURUCURU代表取締役。前職SE時代にゴルフにはまり、女性のゴルフ環境をもっと良くしたいとゼロから起業。女性会員7万人の女子ゴルフサイト「CURUCURU」を作り、「女性とゴルフをつなぐ」をテーマに...
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    月刊ゴルフ用品界2016年7月号、8月号掲載 なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
    「どうして起業しようと思ったのですか?」――。 イベントで登壇したり、メディアの取材をうける機会が増えた今、必ず聞かれるのがこの質問。そこで今回は、私がなぜゴルフ業界で起業したのか、なぜCURUCURUは「女性」に特化しているのかについて触れてみたい。 なぜなら、弊社の企業理念には私自身の原体験が色濃く反映されており、苦しくても成功するまであきらめないという想いの源泉があるからだ。

    5才の決意

    「将来、女性のための会社をつくって貢献したい」と最初に思ったのは、私が5才のころだった。 4才の時に父が病気で他界し、はたらく母の背中を見ていたことがきっかけだった。父の死後、看病のために無職になっていた母が、2つ年上の姉と私を抱えながら、正社員の仕事をさがすのは容易ではなかった。シングルマザーは急なお休みが多くなり、企業にとっては採用リスクが高いからだ。 その後、祖母の同居により正社員の仕事を見つけたものの、当時はまだマイノリティだった母子家庭で子供が偏見の目にさらされないよう母は、人並みの習い事をさせてくれたり、借家から一軒家を買ったりした。 子どもの前では明るく振る舞いながらも、影で寂しさや辛さに耐える姿を見ていて私は、日本はおかしいと思った。日本はなんて弱者に冷たいのか!と。 その想いが「将来、女性のための会社をつくって貢献したい」との決意を抱かせた。もちろん子どもなので、深刻な固い決心というよりは、私が変えるんだ!と明るくハツラツとした心持ちだったように記憶している。 我が家のように、一家の大黒柱である旦那様が急にいなくなることは珍しくない。母親が大切な家族を守るためには、女性でも望めば経済力をもてる社会が必要だ。 また、女性には「喜びや悩みを共有しあえる仲間」が人生に欠かせないのだとも気付いた。幸い母は社交的だったので、ママさんバレーの仲間に悩みを話したり、近い境遇の友達と交流することで、一人で頑張らなければいけない孤独感から開放されていたように思う。 私は、女性にとって友達や共感できる場は、人生を豊かにするために欠かせない要素と確信した。このような幼少期の経験と、10代を通じて自分に起きた様々な出来事がプラスされ、現在の弊社のビジョンである「はたらく女性を応援したい」「人と人のつながりをつくり、孤独にならない女性を増やしたい」という人生テーマが、自分のなかで言語化されていった。

    最初の起業から学んだこと

    実は、私の起業チャレンジはCURUCURUが最初ではなく、それ以前に挫折した経験もある。最初の失敗はよい経験になったので、2つの学びを紹介したい。 いつか起業したいと考えていた私は、20代前半に最初の起業チャレンジを行っている。当時、パソコンとインターネットが日本に普及しはじめたタイミングで、勤務先ではじめてエクセル・ワードに出会った。そのとき、パソコンスキルは女性の働き方を変えるに違いないと確信し、OLさんのためのパソコンスクールチェーンを全国につくり、資格取得やスキルアップに貢献したいと考えた。 その後、自身もインストラクターとなり起業準備をしたが、こんな魅力的な市場を大手が見逃すわけがない。すぐにアビバなど大手が参入し、店舗出店合戦による低価格化・業界飽和がおきた。 当時の私は、彼ら以上の価値を提供する自信を持てず、結局この夢は2年強であきらめることになる。失敗からの1つめの学びは、市場は変化するという概念と、資本力のある大企業とまともに戦っても勝ち目はないということだ。小さな企業は大手企業ができないことをやる視点が欠かせない。 この間、小さな成功体験を得ることもできた。趣味で作っていたOLさん向けのPC系資格取得応援サイトが、そのジャンルで日本最大規模になり、PC系の資格をとりたいOLさんの人気Q&Aサイトになったことだ。 なるほど、インターネットを使えば、地方在住でも資金がなくても、自分の能力以上のことができると実感でき、次に起業するときは絶対にインターネットを活用しようと決めた。これが2つ目の学びだった。 大手ができないことにこそこだわる、インターネットを使う。失敗から、今につながるコンセプトを得た。

    ゴルフとの運命の出会い

    ゴルフに出会ったのは、夢を失い地元名古屋のIT企業に再就職し、SE兼責任者(CTO)をしていたときだった。取引先との定例コンペに紅一点で参加していた先輩が、妊娠によってゴルフができなくなり、お願いだから半年後のコンペにでて欲しいと、クラブ一式を譲ってくれた。 最初はイヤイヤ始めたが、次第にゴルフの素晴らしさに気付いた。まず、普段接することができない人たちと新しい親交を持つことができた。見渡せば、親戚や夫婦で、おばあちゃんも楽しんでいる。「つながりや仲間をつくる」という、まさに自分のビジョンと一致するツールの発見だった。 しかし、すぐに若い女性にゴルフは優しくないと感じるようにもなった。万単位でお金がかかる・着たいウェアがないといった目に見えるものだけではない。 ゴルフをやらない人のみならず、ゴルフ場や年配ゴルファーさんたちまで、若い女性を偏見の目で見る。調べると、そこには男性文化があり、若い女性は長らくマイノリティで、業界にとって投資価値が低いという背景が見えてきた。このままでは普通のOLさんはゴルフができない!と思うと共に、この市場に未開拓なニッチ分野を発見した瞬間だった。

    創業前の失望

    性別や立場を超えて新しい友だちがつくれ、家族や仲間との交流をはかれるゴルフ。ゴルフを始めた会社員時代の私は、子供のころからの志であった「女性応援」「人と人のつながりを作る」に照らしあわせ、もっと多くの女性がゴルフができると、みんなの人生が豊かになるのではないかと考えるようになった。 しかし、昔からナゼナゼと考える癖がある私は、早々に沢山の違和感を感じた。例えば、男性が使うティーグラウンドはキレイなのにレディースティは端にありボロボロな違和感。ゴルフ雑誌をはじめて見た時、中のマンガが青年誌調の画でエロ的に見えた違和感‥‥。 なぜこの業界は女性の居心地が悪いのだろう? さっぱり理解ができなかった。 疑問に思ったことは調べる派なので、ゴルフ市場を調べてみることにした。市場規模・男女比・年齢分布・業界プレーヤー・歴史‥‥等々を調べるうちに、当たり前のことに気付いた。ゴルフは昔から中高年男性中心の遊技で「若い」女性は超マイノリティでお飾り的な存在。ゴルフ業界は固定費型ビジネスが多く、日本の人口が減ることが経営課題になっていくはずなのに、若い女性プレーヤーが少ないから、常に後回しになるのだと。 ゴルフをはじめてから自分が感じていた疑問‥‥。ゴルフウエアのMサイズが日常着のMサイズより大きくデザインも可愛くない理由、女性用のクラブが少ない理由、キャディさんが男性だけにヤードを言って私に言わない理由‥‥。すべて納得できた。 さらに、働き手も男性が多く、誰も本気で若い女性のことを考えてくれない。私は、これではいつまで待っても普通のOLさんがゴルフを楽しめる世界はこないとがっかりした。

    創業時の苦労

    でも、あきらめられなかった。誰も女性に真剣じゃないなら、自分が動くしかない。ビジネス的にもニッチでいけばチャンスはあると感じた。そこで、自らコミュニティサイトをつくり、アンケートで自分と同じ不満を抱えている女性がいることを確かめることにした。 当時は名古屋の自宅で一人で活動をしている段階だったが、インターネットで都内のIT企業の広報やメディアで活躍するような女性たちと交流するうちに、ゴルフは「おやじのスポーツ」から「オシャレな趣味」になると手触り感を得ることができ、私はゴルフでの起業を決意した。 コミュニティサイトの次に行ったのが、若い女性向けのゴルフファション通販サイトを作ることだった。なぜなら、百貨店がないようなエリアではオシャレなウエアが買えなかったり、東京にしかないブランドがあり、アンケートなどでもウエアに対する不満が多かったからだ。 しかし、ここから大苦戦がはじまる。 私は営業や物販の経験がなかったし、大した資金もなかった。そして、ゴルフ業界にもアパレル業界にも知人がなく、展示会という言葉も知らないほど必要な知識がなかった。 仕入先を開拓するだけでも四苦八苦した。よく分からなさすぎて、最初に黄色のタウンページで探したほどに。 特に当時はネットショップが今ほど信用されていなかったので、「試着もせずゴルフウエアをインターネットで買う女性はいない」「(私の)経験がないから売れなくて安売りするのではないか」などと、事業計画書を見せても厳しい意見を沢山いただいた。 しかし、ぜったいに御社の価値を下げるような安売りはしません。これからはネットでウエアを買う時代がきます。女性は求めていますと、熱意とデータで話すうちに協力するよと言っていただける方が増えていった。 もちろん不安ばかりだった。だが、ネットショップをOPENしてすぐに、ゴルフブームも重なって、女性誌のananやNHKの番組から取材を受けることができ、この方向性で間違っていないと確信した。あの時代に、実績のない素人の話に耳を傾け、厳しい意見をいただいたことを今ではとても感謝している。 その後、法人化し近年もサービスを拡充しているが、業界のみなさんの手が回らないことをやるのが弊社のコンセプトゆえ、みなさんには一瞬引かれるような企画の説明にあがっているような状況である。 例えば「女性はお店での試打が恥ずかしいから、試打クラブのセットを作って無料で宅配レンタルしたい」など。最初は女性の反応や既存サービスへの影響を心配されたが、現在では主要ブランド全てにご協力いただいている。 何事も結果は後からしか見えない。心配しながらも参画いただいているのは、弊社の、女性を取り巻くゴルフ環境を良くしたいと願う熱意が伝わっているからと思わせていただきたい。

    専業としての覚悟

    繰り返しになるが、私がゴルフで起業したのは、「人と人のつながりをつくるゴルフ」を、もっと多くの女性、特に平均年収に近い女性でも楽しめるようにしたかったからだ。 しかし、この業界に飛び込んで分かったことは、業界のみなさんが私たちと同じように女性にゴルフをして欲しいと思っていて、でも費用対効果の悪さにジレンマを抱えていることだ。もう業界を批判していても始まらない。業界が儲かるやり方じゃないと動くに動けないのだ。 私たちは専業だからできることがある。小さく、しがらみが少ないからこそ提案していけることがある。私たちは、顧客目線でサービスを提供しそれを広げることによって、女性にとって・業界にとっての課題を解決していく。 それができてはじめて女性におけるゴルフのライフスタイルを変えていけるのだ。そして、それが弱者の戦略でもあるのだ。
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    女性
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