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  • 若者ゴルファー激増は本当か? 業界各所を総力取材

    片山哲郎
    1962年8月3日生れ。月刊誌GEW(ゴルフ・エコノミック・ワールド)を発行する(株)ゴルフ用品界社の代表取締役社長兼編集長。正確、迅速、考察、提言を込めた記事でゴルフ産業の多様化と発展目指す。
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    巷間、新型コロナウイルスの第三波襲来が懸念され始めた。その一方で米ファイザーが感染症に有効なワクチンの完成間近を発表するなど、コロナ禍を巡る動きは新たなステージに入ったようだ。 そのコロナと関連して、この秋口、国内の若者ゴルファーが激増したという話もある。コロナでレジャーの選択肢が狭まってしまい、「3密」を回避できる屋外スポーツのゴルフに注目が集まったというわけだ。 「若者」の定義はいくつかある。労働人口で捉える場合は「15~34歳」だが、別の視点では「39歳以下」もある。本稿では39歳以下としたいが、ゴルフ界には「プレー人口」に関わる定義がなく、年代別のプレー状況もつかめないため、「若者が増えた」は単なる印象論。実態は藪の中といえるだろう。 そこで、論より証拠ということで、業界を訪ね歩いてみたら、想像以上の盛り上がりがわかった。コロナはヒトの命を脅かす感染症であり、一刻も早い撲滅が望まれるが、若者需要の開拓に長年苦しむゴルフ界にとっては追い風となっているようだ。 実際、どうなのか? そのあたりをレポートしよう。

    若者需要は毎年2割増?

    ゴルフ場予約サイト大手のGDOは今年6月末現在、436万人の会員がいるという。さらに昨年末時点での年代別会員構成比は、19歳以下がほぼゼロで、 20代=5・6% 30代=16・0% 40代=28・6% 50代=26・2% 60代=15・3% 70歳以上=8・1% という割合だ。40~50代で5割以上を占めており、同社が「若者」と定義する20~30代は2割を少し超えた程度。ゴルフが中年のスポーツであることを側面的に裏付けた。同社でゴルフ場事業企画を担当する野中隆伸グループ長がこう話す。 「当社はこれまで、若者に特化した企画には注力していませんが、コロナ禍における各指標を分析すると、若者の意識がゴルフに向きはじめたという仮説は成り立つでしょう」 そこで、同社の予約サイトを通じてゴルフ場に足を運んだ会員の動向を示してもらった。基点を2015年に設定し、以後、毎年の「予約状況」を経年変化で辿ったもので、最新は今年9月末までの累計となる。 補足すれば、同社が把握する「年代別予約状況」は予約した代表者に限定され、同伴プレーヤーの年齢は不明だが、予約者の年齢から全体がほぼ類推できるという。 これによれば「39歳以下」の予約割合は、2015年が全体の1割強(10・9%)だったが、以後毎年1~2%程度の伸びを示し、昨年は18・1%。今年9月末時点では累計で2割(21・6%)を突破した。 次に「若者予約」の伸び率を見ると、2016年は前年比19・0%増だったが、以後、毎年コンスタントに2割超の伸びを示し、17年=28・0%増、18年=24・1%増、19年=21・8%増となる。 コロナ禍の今年は8・9%増(9月末累計実績)と伸び足は鈍っているものの、同時期の「40歳以上予約」は12・8%減と落ち込んでおり、若者のゴルフ意欲は相対的に旺盛といえる。 ちなみに「40代以上」の経年変化は2016年の前年比8・9%増が最高で、2018年の3・6%増が最低だった。ダウンした今年を除いては、いずれも一桁成長にとどまっており、若者の高い伸び率が際立っている。

    若者が伸びた理由は様々

    GDOゴルフ場事業企画 野中隆伸グループ長
    以上のデータを踏まえながら、野中グループ長との一問一答を再現しよう。 コロナで「若者需要」の台頭が指摘されるが、予約実績の観点から見えるものは? 「たしかにコロナの影響で、若者需要が高まったとはいえるでしょう。ただし、その伏線を丁寧に見る必要があって、2011年の東日本大震災でプレー単価が下がったことも見逃せません。 土日のプレー単価は2008年の1万4476円がピークでしたが、震災の11年に1万3338円となり、以後、このレベルで落ち着いてます。同じく平日は9448円から8825円に下がったことで、若者の財布に優しくなった」 それ以外に「伏線」はありますか? 「あります。これは2014年頃の動きですが、土日に集中していたシニアメンバーの予約が平日にシフトした動きも注目です。 当時は団塊の世代がリタイアを迎える『2015年問題』が懸念されましたが、その流れでシニアが平日需要に移行して、さらにその後『働き方改革』の影響で現役世代は平日の休みがとりやすくなった。2016年あたりから、単価が安い平日の予約が目立って伸びているのです」 それらの伏線にコロナの「3密回避」が加わって、若者需要の台頭が一気に表面化したわけですね。 「という仮説は成り立ちます。特に金額面の低減は若者需要の促進につながったはず。なぜなら今年4~5月の平日単価はコロナ禍で8000円を切ってしまった。通期では8000円台前半になると予測しています」 PGMやアコーディアなど、100コース以上運営するゴルフ場は客単価9000円台の維持が生命線。8000円台前半はかなり厳しいわけですが、客単価の下落はスルーの浸透も大きいでしょう。 「おっしゃるとおりで、非常に大きいと思いますね。当社の予約サイトを使って集客する提携コースは約2000で、全体の9割を占めていますが、例年スルーの枠を設けるのは400~500コースだったのに、今年はコロナの危機感がピークだった時期で1100~1200に激増しています」 通常の2~3倍になったわけですね。「3密」の回避で食堂を閉めるコースも多かったし。 「そうですね。で、昼食がない1ラウンドのスルー単価は1500円ほど安くなるので、これを機に、当社はスルー枠の維持をゴルフ場に働き掛けました。ゴルフのカジュアル化を進めるためです。 ただ、これだとゴルフ場は収益面で苦しくなるので、反応はなかなか厳しいです」 コロナ騒動が落ち着いてから「通常運営」に戻すゴルフ場が多く、日照時間が短い秋はスルーの枠を設定しにくい。 「はい。それで10月にはスルー枠を設けるところが550コースにまで減ってしまい、前年同月の350よりは増えたもののピークからは半減です。 これは個人的な想いですが、日々の収益にとらわれて長期的な視点をもてないゴルフ場が多いのが残念です」

    「予定調和」の企画は通用しない

    スルーの定着で若者需要の促進を図ったものの、実際には現実的な問題が優先される。 「そこは残念なんですが、ただ、スルーが若者を活性化させた理由だと単純化できないフシもあります。実際、スルー需要で一番伸びたのは60代以上なんですよ。 たしかに若者も伸びたけど、コロナが重症化しやすい高齢者は『スルーで安全』が効いたと思われます」 なるほど、物事は多面的に見る必要があると。御社は実データをもつ強みがある。これを生かした若者需要の創造策は? 「実は、当社は年齢で区切った若者への企画はあまり注力してないんです。ゴルフ場への企画づくりはマーケティング部の担当で、ここはゴルフ場へのサービスデザインと集客販促の2チームが各10名、平均年齢30代前半でやっていますが、ゴルファーを年齢で切り分けた企画は重視していないんです。 先ほどの話、夏場のスルーは体力がある若者にウケると想定しても、実際には高齢者の需要が伸びている。また、若者の自働車保有率が低いから『電車でゴルフ』を提案しても、若者ウケがいいとは限りません」 推論と実際値は常に乖離するため、予定調和的な企画は通用しない。 「そう思います」 すると「若者企画」は打つ手がない? 「いや、当社ができることは沢山あると思います。これは当社に欠けている部分ですが、サイト上でゴルフ場分類を細かく表現することは有効だと考えられます。 たとえば(1)サッと行ってサッと帰れるゴルフ場、(2)口うるさいメンバーがいないゴルフ場、(3)平日7000円で若者の財布に優しいゴルフ場、(4)ドレスコードが低いゴルフ場とか・・・」 現状は外形的な分類にとどまっている。林間コースや山岳、河川敷、名門コースといったように。 「ですから、もっとマインドに焦点を当てた切り分けで、選択肢を提示することは有効でしょう。国内の総ラウンド数は年間8600万回で、そのうちネット予約でプレーする比率は当社や楽天、ゴルフ場単独のウェブ予約を含めて3割を占める。つまり、ネットで得る情報が予約の決定要因になるわけです。 当社では集客アプリ経由の予約も伸びていて、これは20~30代が中心です。そう考えれば、ネットの有効活用で若者需要は伸ばせると思います」 以上、野中グループ長との一問一答を紹介した。同氏の話から浮き彫りになるのは、コロナで若者需要はたしかに増えたが、それだけが理由ではなく、様々な要因が「伏線」としてあったことを見る必要がある。 これらを丁寧に掘り下げれば、ゴルフ場個々の企画作りに役立つはずだ。

    スルー専用を設けたPGM

    ゴルフ場運営大手のPGMも「39歳以下」の来場者が激増中とか。広報担当の大嶋智氏がこう話す。 「今年3~9月の累計では、全体の来場者は落ちています。緊急事態宣言の影響が大きいのですが、39歳以下に限れば3割ほど伸びているんですよ。女性はもっと凄くて4割ほど増えています。全体が減少した中で特筆すべき動きでしょう」 同氏は若者需要の急伸について(1)スルー枠拡大による短時間化、(2)一人予約&スルーの積極展開、(3)コロナ感染防止策の徹底と告知、(4)プレーウエアでの来場推進による手軽さ。これらが複合的に作用したのではないかと考えている。 特に(4)は感染防止のロッカー未使用で、着替えずに帰ることを推奨した結果、ドレスコードの敷居が下がった。それが好感されたと推測している。 大嶋氏が話を続ける。 「特に感染防止対策は注力しました。フロントやレストランにシールドを設け、カートは殺菌を徹底、浴場はシャワー限定などをHPやメルマガで発信して、安心安全につながった。むろん、一日を有効に使いたい若者にスルーの短時間化がウケたのも大きいと思います」 そこで同社は新たにスルー専用の2コース(栃木・ピートダイGCロイヤルC、茨城・玉造GC若海C)を設けたという。 「昼食がないと1000~1500円ほど安くなるので、ゴルファーの財布に優しくなります」 このあたり、前出の野中グループ長と同じ考え方だ。 ただし、それ以外のコースでは日照時間が短い秋にスルー枠の設定が難しく、通常運営でスルーを導入している北海道、沖縄などのリゾート系を除いては50コースほどにとどまっている。同社の田中耕太郎社長は以前、本誌の取材に対して、 「緊急事態宣言下では積極的にスルー対応しましたが、秋口になると減るでしょう」 と話していたが、現状のスルー対応は系列コース全体の3割強に減っている。先述のスルー専用2コースは実験的な意味合いもあり、収益モデルが確定すればさらに広がる可能性もありそうだ。

    屋外練習場も好調

    全日本ゴルフ練習場連盟(JGRA)の横山雅也会長
    ゴルフ練習場もコロナ禍で入場者を伸ばしているようだ。室内のインドア施設は「3密」で休業を迫られるなど苦戦したが、 「屋外については全国的に好調という声が届いています。コロナで好調を声高に言いにくい面もありますが、我々練習場業界は住宅地に近接するため、ゴルファーを増やす最前基地。この機を捉え、活性化策につなげなければ」 全日本ゴルフ練習場連盟(JGRA)の横山雅也会長は、そう言って眦を決するのだ。同氏は千歳ゴルフセンター(都内世田谷区)の社長として「現場」に携わっているだけに、追い風を敏感に感じている。 JGRAの加盟施設は約450で、全体の1割強と組織率は低いが、近年は台風による鉄柱倒壊やコロナへの対策づくりなど国との折衝が増えており、必要情報の発信が頻繁なことから加盟施設は増加中。それだけに、現状分析にも力が入る。 現在、情報収集と対策の詰めを急いでおり、まとまった段階で公表するというが、JGRAのデータとは別に、千歳ゴルフセンターの最新状況を提供してくれた。 今年9月と前年同月の「年代別来場者」を比較したもので、左の数字が会員数の増減率、右の( )内が来場者数の増減率だ。これらはゴルフスクールへの来場者を除いたもの。いずれも社内の生データなため「実数」は非公開だ。これによれば、 10代=127%(135%) 20代=135%(159%) 30代=115%(121%) 40代=103%(117%) 50代=104%(127%) 60代=100%(116%) 70代=95%(109%) 80代=96%(97%) 90代=60%(70%) 練習場事業の肝は「会員化」による顧客の囲い込みで、そこからスクールや各種イベントへの導線を引いて収益を固定化する。大半の練習場は打ちっぱなしによる「打席収益」と「スクール収益」の二本柱が支えている。 前年同月との比較で「会員」がもっとも伸びたのが20代の35%増で、来場回数に至っては6割近い伸びを示している。次に10代、30代の順で伸長し、コロナで重症化しやすい高齢者は鈍化が目立つ。また、9月の全世代来場者数は昨対24%増と好調だった。

    若者活性策にウルトラCはない

    以下、横山会長との一問一答を再現しよう。 御社の立地は世田谷だから、立地的に恵まれている。顧客は富裕層が多いですか? 「とは限りません。平均的な所得層だと思いますし、普通のサラリーマン夫婦も目立ちます。商圏は半径3㎞からが7~8割を占めており、周辺住民が大半ですね」 9月の来場者動態について、どのような分析をしているのか。 「まず、一言でいえば好調です。来場者の数自体は40~60代が中心ですが、伸び率の面では若者が目立っている。7~8月も同じ傾向だから、インドアはともかく、屋外の練習場は『3密』を避けられて安全だと。屋外レジャーの選択肢が絞られてゴルフに向かったと思います。 それと、巣ごもり需要に着眼して、多くの芸能人がユーチューブ・ゴルフをアップしましたが、これを見てゴルフに興味をもった人も多いでしょう」 この追い風をどう生かす? 「そのあたりを今後JGRAとして調査・研究していきます。仮にコロナが治まったら他のレジャーへの参加が復活して、ゴルフから離れるかもしれないので、その前にゴルフの魅力を伝える施策が必要だと思っています。 ただ、若者需要の促進にウルトラCはないと思うんです。特に商圏が狭い練習場は、個々の立地によって状況が違うため、正解は決してひとつではなく、様々だと思うんですね」 業界が統一的な施策を提示して、型にハメる手法は通用しない? 「ひとつの型にハメた施策は通用しにくいと思うので、個々の施設が状況に応じた対策を練ることが大事でしょう。 それと、これは業界全体の課題ですが、ゴルフは産業規模が大きいため、積極的にやらなくても何とかなるような感じもある。実際には何とかなっていないんだけど、そのような意識があることは否めません。 当社はテニススクールもやっているのでわかりますが、テニス業界は人集めに必死ですよ。その面でゴルフはもっと努力しなければと、自戒を込めてそう思います」 横山会長は統一的なウルトラCはないと話すが、実はGDOやPGMもまったく同じ認識を示している。GDOの吉川雄大副社長は、 「ゴルファーを年齢や性別で切り分ける対策は効果的だと思えません。『楽しそう』『やってみたい』と思うのに年齢・性別はあまり関係ないからです。 大事なのは『楽しい』と思える企画を実際に打って、当たれば続ける、不発なら引っ込める。これを連続することで、ゴールは永遠にありません」 机上のマーケティング論ではなく、実践主義による連続が重要との認識を示す。ネット情報が氾濫する現代では趣味の多様化や「時間消費」の細分化が急加速しており、年齢や性別、所得階層といった旧来のクラスター分析は通用しないとの主旨である。この点について横山会長は、 「昔のスポーツ観戦は野球だけでしたが、今はサッカーや新しいスポーツを含めて分散しています。社用スポーツとして発展したゴルフから『社用』が外れ、純粋な趣味になると、その他大勢の趣味と取り合いになる。 自然、個々のパイは減りますが、我々が生き残るためにはそれを前提としながら個別の努力をすることで、正解も様々だと思います」 結論めいたことを言ってしまえば「若者対策」や「女性対策」など、業界が先回りして用意する企画は「業界の型」にハメたもので、その型にハメようとする姿勢が問題という見方もできる。PGMの大嶋氏によれば、 「特に若者企画はやっていません。30代以下の若者限定プランもできますが、しなくてもスルーで若者が3割伸びた。女性も4割伸びています。 このような状況を踏まえつつ、ゴルフ未体験者との接点を様々な角度からつくっていく。今、その施策を練っている最中です」 コロナという特殊事情により、ここまで若者需要が伸びることを業界はまったく想定できなかった。そしてコロナは流動的だけに、対策を議論している間に時機を逸してしまう。 取り敢えずトライ&エラーでやってみる、それを連続させる実践主義が求められると言えそうだ。

    初心者セットが昨対2~3倍

    ゴルフ用品市場はどうだろうか? こちらも若者需要は盛り上がっており、楽天ショップでネット通販の「製造直販ゴルフ屋」を運営するJ・E・ネットサービスの中川栄治社長は、 「スターターセットの売上は男性用が昨対2倍、女性用は3倍売れている印象です」 と前置きしてこう続ける。 「そもそも当社のネット通販は、定年退職者が安価にゴルフを続けられる商品提供が目的でしたが、この数か月は若者と女性を中心としたスターターセットが絶好調です。 詳細なデータはありませんが、肌感覚では6割が40歳以下の購入だと思いますね。この年代は以前から増加傾向が伺えましたが、今年はコロナで一気に伸びた。そんな印象をもっています」 同社の一番人気は3万4800円の「コースへ直行19点セット」で、これにはクラブ9本(ウッド3本、アイアン5本、パター)にヘッドカバー(4個)、キャディバッグ、シューズにグローブ(1枚)やボール(6個)など一式揃う。 昨対3倍の女性用も同価格で同内容の「直行セット」(クラブ8本)が急激に売上を伸ばしている。前出の横山会長は、 「若い夫婦やアベックが非常に目立ち、カップルで会員になるケースが増えています」 と話しているが、そのことを用具面で裏付けた。 中川社長は、この流れを持続するにはネットを活用したワンストップ型の提案が大事だと考えており、通販サイトにレッスンブログを付けているが、さらに大手予約サイトと連携して、初心者に優しいゴルフ場への誘導など、導線を整理する必要を説く。 また、若者需要の高まりは、ゴルフ5を展開するアルペンも強く認識している。ゴルフ用品の仕入れを一手に担う執行役員の岡本眞一郎部長によれば、 「クラブではスターターセットが売れていて、若年需要の高まりを感じます。突出した売れ筋があるわけではなく、3万円前後のPB(プライベートブランド)から7万円超のNB(ナショナルブランド)まで満遍なく売れている感じですね。 コロナで盛り上がった若者需要を継続するには、ネット販売の強化が必要でしょう」 一方、NBの型落ちやワケありの新品を安く買える中古店も存在感を高めている。中古チェーンのゴルフ・ドゥは今年6~8月、直営19店舗における会員の昨対増減率を調べたが、これによると35歳以下が4・7%増で、30歳以下は5・2%増だった。マーケティング推進室の千葉暢彦氏は、 「3密の回避やスルーの拡大によるプレー料金の低下などで、しばらくゴルフから離れたひとも戻ってきた印象です。売れ筋はセット価格3万~5万円で、友人と来店して試打するケースが目立つことから、初心者コーナーで選びやすい工夫をしています。35歳以下に絞った告知を含めてPRします」

    有賀園の「GoToゴルフ」

    ゴルフプレミアムの豊田眞也社長も、初心者セットの売れ行きは「異常」だと目を丸くする。 同社は『オリマー』や『Xライン』でセット価格3万8000~4万3000円の初心者モデルを展開しており、この領域では以前から強さを発揮していた。その意味で同社は、若者需要の「定点観測」に最適なポジションといえる。 「特に8~9月が異常でした。前年同期で2000セットが、今年は倍の4000セット。1台200セット入りのコンテナが矢継ぎ早に入る感じですよ。 OEM製品もまったく同じで、昨年の1000セットが2000セットに倍増です。このペースが続けば12月には中国での生産が追いつかず、欠品する可能性もあるでしょう」 他産業ではコロナ禍で業績急落の企業が目立つが、同社は欠品の可能性を懸念するなど嬉しい悲鳴をあげている。 ただ、豊田社長の表情は決して明るいものではない。理由は若者需要の「先食い現象」で、コロナによる異常な売れ行きは、 「このまま続くイメージはないですね。続いてほしいとは思いますが、実際にはどこかで止まる可能性が高いでしょう。初心者セットに注力する一方で、高価格帯を企画する必要性も感じています」 このような警戒感は業界全体に共通しており、有賀園ゴルフも同様の認識をもつ。有賀史剛社長の話。 「当社も初心者向け『3点セット』(7万~8万円台)が好調ですが、持続性については懐疑的です。ゴルフ場や練習場では若い夫婦やアベックが目立ちます。ゴルファーがゴルフをしない家族を誘うなど、コロナだから安心できる密接な人間関係で広がっている。 でも、これから日常生活に戻る過程でゴルフへの興味や支出は分散する、元に戻る可能性は高いでしょう。実際『GoToキャンペーン』が始まった9月の4連休は予想を下回る売上でした」 俄かに需要は盛り上がったが、日常が戻れば元の木阿弥になりかねない。このような懸念は多くの業界関係者が異口同音に話すことでもある。 そこで同社は「GoToゴルフ」キャンペーンを10月初旬に開始した。ゴルフ場の領収書を持参すると購入代金から割引くもので、領収書の額が6000円以上で1000円、1万2000円で2000円、1万8000円で3000円、2万4000円以上で4000円の割引券がその場で使える。 条件は1万円以上の買い物をすることで、1万円につき1000円の割引が受けられるから、4万円の買い物で4000円安くなる。 「評判は上々なんですが、当店だけの活動では小さすぎますよ。つくづく思うのは、ゴルフは産業規模が大きいわりに国へのロビー活動が弱すぎる。スポーツ業界が国に働き掛けて『GoToスポーツ』の予算を取るなど、働き掛けるべき。 ゴルフはスポーツ市場最大の産業だし、健康増進で医療費削減の効果もある。我々ゴルフ産業がスポーツ市場を引っ張る気概が必要だし、一致団結が急務です」 実は、この指摘は古くて新しい業界の課題だ。個々の企業が独自の施策を実践する一方で、業界団体は国との交渉力を高めること。コロナによる追い風は、両輪が回ることで「本物」に育つ。
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