プレー人口激減期(18-23問題)とゴルフ場 9英国と米国のゴルフ場経営者に対する調査(2)
北徹朗
<現職>武蔵野美術大学身体運動文化教授・同大学院博士後期課程兼担教授、サイバー大学IT総合学部客員教授、中央大学保健体育研究所客員研究員、東京大学教養学部非常勤講師
<学歴>博士(医学)、経営管理修士(専...
SNSでシェアする
コロナ環境下で一時的にゴルフ人口が増えているという報道もあるが、人口減少や少子高齢化の推移を見ると、今後もゴルフ人口の減少傾向が続くことは間違いない。この連載では、筆者が提唱する「18−23問題」(2018年~2023年にかけてのゴルフ人口激減)に立ち向かうための改善策や基礎資料に基づく提言を述べさせて頂く。
英米のゴルフ場支配人に聞いた「ゴルフ場改革ランキング」
日本におけるゴルフ人口拡大のための「ゴルフ場改革7つの提案」の有用性を、英米のゴルフ場オーナーまたは支配人13人に問うた。前号では結果の概略のみ示したが、今回は具体的な調査結果を見て行きたい。 この調査は、英米のゴルフ場オーナーまたは支配人に日本のゴルフ人口推移の状況を説明した上で、「日本のゴルフ人口拡大のための有用性」の観点から7つの提案に対する評価を求めたものである。「有用性が高い施策順」にランキング形式で示す。(調査期間:2021年2月25日~4月30日、コース形態:ビジター利用可のメンバーコース8・セミパブリック2・パブリックオンリー3) 第1位:ドレスコードの自由化 日本の支配人に対する調査では、7項目中第4位で有用性が高くなかった「ドレスコードの自由化」が、英米の支配人からは最も有用性が高い、という評価を得た。日本人調査では約4人に1人が「有用でない」と回答したが、英米人からはその回答は無かった(図1)。 第2位:クラブ規制の緩和 日本人調査では第3位であった「クラブ規制の緩和」が2番目に高い評価であった。この提案について「全く有用ではない」と回答した支配人はいなかった。前号でも触れたように、初心者向けクラブ等、ルールでは認められない用具がもっと積極的に販売・活用できないものか。筆者らの研究では、やさしいクラブ使用の有用性の高さを示している(北ら,2019)(図2)。 第3位:スマートゴルフ場化の推進 日本人調査ではダントツの1位だった「スマートゴルフ場化の推進」は英米人調査では第3位だった。とはいえ、半数以上(53・9%)が「有用」と回答しており、高い評価の施策と言えよう(図3)。 第4位:1ホール単位の料金設定 日本人調査では第5位だった「1ホール単位での料金設定」については、有用性の高さとしては4番目となった。「大変有用」と回答した支配人が23・1%いたものの、「有用でない」との回答が半数近く(46・2%)見られた(図4)。 第5位:ゴルフ以外のゴルフ場利用 日本人調査では第2位だった「ゴルフ以外のゴルフ場利用」については、英米人調査では「有用性は低い」との評価であった(有用でない69・3%)。日本ではフットゴルフやゴルフトライアスロンなど、既に一部で人気の高い遊び方が定着しているし、家族連れでゴルフ場を楽しむための公園利用構想も話題に上がることがあるが、英米の支配人においてはそのような発想はあまりなさそうだ(図5)。 第6位:コースの時間貸し 「コースの時間貸し」については有用性を支持する回答は殆どなかった。日本人調査では、パブリックコース支配人を中心に少数であるが「大変有用」との回答も見られた(図6)。 第7位:ボウリングスタイルでのプレー ボウリングのように同じコースを繰り返し回るプレースタイルの導入については最も賛同率が低かった。日本人調査では「まあ有用」との回答が僅かに見られたが、英米の支配人に対する調査では「大変有用」「まあ有用」ともに、回答者はゼロだった(図7)。英米のゴルフ場支配人は日本のゴルフ人口回復のために「ドレスコードフリー」を推奨
日本におけるゴルフ人口拡大のための「ゴルフ場改革7つの提案」の有用性を、英米のゴルフ場オーナーまたは支配人に問うた結果、「ドレスコードの自由化」(いわゆるドレスコードフリー)が最も有用性が高い項目として選ばれた。サンプル数が少なかったものの、「有用でない」と回答した支配人はゼロであり、日本のゴルフ場支配人に対する結果と比べると相違が見られる(表1)。日英米の支配人に共通して評価の低かった「コースの時間貸し」「ボウリングスタイル」の重要性
日本人および英米人に共通して低位群(6位と7位)の評価となった提案が「コースの時間貸し料金設定」、「ボウリングスタイル(1ホールの時間貸し)」であった。しかしながら、この2つの方法を組み合わせて合理的に運用できれば、特に初心者向けには有用性が高いと筆者は考えている。 練習場には「ボール数による販売」と「打席使用時間による販売」があるが、ゴルフ場にはそれらの発想はない。例えば、スキーを初めて経験するとき、同じ緩斜面を何度も練習することが多い。上手くなれば、色んなリフトに乗って様々なコースや景色を楽しみたい欲求が生まれるが、初心者のうちは同じ斜面で行う方が合理的であるし安心感もある。同じ場所で繰り返し滑ることで学習もするため、楽しくもなって行く。 筆者が2015年に開発したゴルフ場デビュープログラム「Gちゃれ」を通じて、これまでに約2000名の大学生がコースデビューを果たしてきたが、彼らは同じ数コースを繰り返しまわることでも充分に楽しみを覚え「また来たい」と喜んで帰って行く。 「スマートゴルフ場化」の推進については、日英米のいずれも上位の評価であり、いずれ導入が進んで行くだろう。前号でも述べたが、ゴルフ場での遊び方にバリエーションを増やしていく努力がされない限り、ゴルフ場に集う人が増えることはまず考え難い。評価が低かった2つの施策も、筆者の先行研究に基づく項目であり、単なる思いつきで挙げられたものではない。「7つの提案」については、状況や対象あるいは歴史や地域等によって、フィットするゴルフ場もあるだろう。ゴルフ場に新しい遊び方がどんどん取り入れられることを期待したい。 ■参考文献 ・北 徹朗(2019)『スマートゴルフ場』実現への期待と提案、日本ゴルフジャーナリスト協会ウェブサイトhttps://jgja.jp/201909276521/(2022年1月14日確認) ・北 徹朗(2018)ゴルフ産業改革論、(株)ゴルフ用品界社 ・北 徹朗(2021)プレー人口激減期(18-23問題)とゴルフ場(2)、GEW、2021年7月号昨日多く読まれた記事TOP25
おすすめ
スリリングからスライス撲滅トレーニングシャフト登場
2024年11月09日
おすすめ
ティーショットで曲がらない!?ブリヂストンゴルフ SUPER STRAIGHT(スーパーストレート)を打ってみた
2017年07月12日
おすすめ
ライトが『スーパーストローク』を本格販売!USPGAの4人に1人が使用する秘密とは
2020年05月21日
おすすめ
ボルビック VIVID(ビビッド)は目立つだけじゃない高性能ゴルフボールだ
2017年07月11日
おすすめ
三浦技研の新理論『9ポジションフィッティング』を解説
2019年10月27日
おすすめ
キャロウェイゴルフ、2018年上期の好業績を発表
2018年08月05日
おすすめ
あまり検証されていない「袖なしファン付きウエア」の効果を観察する
2024年11月01日
おすすめ
フェアウェイウッドがバッグから消える日
2019年01月16日
おすすめ
Diamana WS シリーズ|パワーフェードで飛ばす「元調子=上級者」を打破する新シャフト
2023年05月10日
おすすめ
アコーディア 「Tee IT Forward」を 全ゴルフ場で推奨
2024年11月02日
おすすめ
「OLED」距離計の二刀流でコース攻略! 「鮮やか」「フルスペック」「高コスパ」のグリーンオン最強コンビ『GL04』&『GS501』
2024年11月07日
おすすめ
実はマイルドな振り感? 三菱ケミカル『TENSEI Pro Blue 1K』を試打してみた
2023年08月05日
おすすめ
本間ゴルフ小川典利大社長が描く「ホンマ復活ストーリー」
2024年06月02日
おすすめ
「視聴者不在のテレビ中継」なぜゴルフは生放送をしないのか
2018年05月14日
おすすめ
リョーマのドライバー『マキシマ3』はミスヒットしても飛ぶのか? 記者MYドライバーとの真剣対決を常住充隆が検証
2024年09月22日
おすすめ
「石川遼」はどのように育ったのか? 父親・勝美氏が語る教育論
2018年04月16日
おすすめ
テーラーメイド『SIM2』『SIM2 MAX』『SIM2 MAX D』を発表 前作からの進化は「溶接レス」のヘッド構造
2021年01月22日
おすすめ
キャロウェイ『マーベリック』ならミスショットがバレない!
2020年01月15日
おすすめ
ゴルフと釣りが同時に楽しめる施設 が続々誕生
2022年03月25日
おすすめ
大型ヘッドとの相性抜群 『アッタス11(ジャック)』高弾道&低スピンシャフト
2019年10月09日
おすすめ
Golf Pride CP2 Pro, CP2 Wrapを永井プロが検証
2016年10月12日
おすすめ
社会構造の変化に対応すべく ゴルフ業界がすべきこと
2024年10月05日
おすすめ
専門店がメーカーを順位付け 日米メーカーの得意分野が明確にわかれた
2020年08月30日
おすすめ
ゴルフゾンの最新機種『TWOVISION Plus』を体験してみた
2022年09月09日
おすすめ
本間ゴルフ TOUR WORLD(ツアーワールド) TW737 アイアンを永井プロが検証
2016年11月10日