1. 市場考察

プレー人口激減期(18-23問題)とゴルフ場 10シャツ出しプレーのススメ―暑熱下ゴルフのためのフェイクウエア開発―

市場考察 北徹朗

コロナ環境下で一時的にゴルフ人口が増えているという報道もあるが、人口減少や少子高齢化の推移を見ると、今後もゴルフ人口の減少傾向が続くことは間違いない。この連載では、筆者が提唱する「18−23問題」(2018年~2023年にかけてのゴルフ人口激減)に立ち向かうための改善策や基礎資料に基づく提言を述べさせて頂く。

日本のゴルフ場は「ドレスコード」に厳しい

前号では、英米のゴルフ場オーナーまたは支配人に日本のゴルフ人口推移の状況を説明した上で、「日本のゴルフ人口拡大のための有用性」の観点から、筆者が提唱する「7つの提案」に対する評価を求めた。その結果「ドレスコードの自由化」の有用性が最も高く、有用でないという回答は無かった。要するに、英米の支配人らは「ゴルフ愛好者を増やすためには、ドレスコードに拘り過ぎない方がよい」という見解であるが、日本人調査の結果はほぼ真逆であり、温度差が見られる。

ちなみに、日本人調査では約4人に1人がドレスコードフリーは「有用でない」と回答している。この要因には、おそらく、日本のゴルフ場の殆どが会員制の形態のもとで開場した経緯(あるいは会員像の固定観念)もあるかもしれないが、現状、メンバーシップ制度があったとしても、ビジター客がいなければ経営が成立しないゴルフ場が多いのも事実であろう。芝生を傷つけたり、怪我や熱中症の恐れのあるようなウエア、シューズでない限りは、個人の自由裁量の範囲内での服装選びができるゴルフ場がもっと増えてもよいのではないか。

ちなみに、筆者が2006年~2008年に支配人を対象に行った「マナー違反の国際調査」(表1)では、ドレスコードが上位に挙げられるのは日本のみであった。

暑い季節の「シャツイン」プレーは熱中症の恐れあり

武蔵野美術大学の北研究室では、真夏の身体活動時における防暑ウエアや帽子などの開発研究も行っている。本学大学院博士課程大学院生として筆者の研究室に所属する服部由季夫さんは、小学校体育で使用される赤白帽について、暑熱環境下では赤帽の表面温度は白帽よりも約10度高くなることを明らかにしている。この結果から、特に夏場においては赤や黒を避け、白や黄、ピンク等の色を身に着けることが望ましい。

また、我々とは別のグループが行った中学校の生徒を対象とした実験では、暑熱環境下での2分間の運動後、体操着の上着の裾をズボンに入れる「シャツイン」した場合と「シャツアウト」では、「シャツアウト」の方が着衣表面温度は4度低いという結果を示している。普段着で検証した他のグループの結果でも「シャツアウト」では35度前後であったのに対し「シャツイン」では40度前後であり、約5度の差が見られたとされる。

近年見られる突発的な猛暑に対する工夫やアイデア創出が急務

厚生労働省が2021年9月10日に発表した『人口動態統計(確定数)』の「熱中症による死亡数」によれば、2019年に熱中症での死亡者は1224名であり、近年、増加傾向であることが示されている。特に、ここ数年、7月~8月(いわゆる真夏)の季節に限らず、5月~9月(春~秋)にかけての半年近い期間において、従来経験したことない猛暑に見舞われるようになっている。

2019年5月26日、北海道佐呂間地区で道内観測史上1位となる39・5度の気温を記録し、ゴルフ場でプレーしていた釧路在住の男性(36歳)が熱中症で死亡した。また、2020年9月3日には、新潟県三条市で最高気温40・4度を記録し、9月としては全国で初めて40度台を観測している。

北海道や新潟など、従来は避暑地と考えられていた地域で史上最高気温を記録している。また、それらは5月や9月に観測されていることからも、これまでは考え難かった地域や季節、場面でも熱中症が発生する懸念がますます強くなっており、熱中症対策の更なる工夫が求められている。

プレーヤー自身でできることでは、帽子やウエアの色や素材を選ぶことだが、前述のように日本のゴルフ場は、マナーに厳しい。「シャツ出しプレー」には特に厳しい目が向けられるが、それを解消するための提案を以下に述べたい。

こんなウエアがあったら… 「フェイクベルト」プリントポロシャツのイメージ

ゴルフ場で許容されている「フェイクウエア」として思い浮かぶものに帽子がある。見た目はサンバイザー風だが、フェイクの髪の毛で飾られているアレだ。実際は頭頂部を覆う帽子だが、サンバイザーをかぶっているかのように見える。例えば、シャツ出しをしていたとしても、キチッとベルトをしているように見えるシャツがあれば、夏場のゴルフは少しでも快適で安全になるのではないか。

そこで筆者は、フェイクベルトポロシャツのモックアップを作成した。図1は従来通りの「シャツイン」、図2は「シャツ出し」、図3は「フェイクウエア」である。ちなみに図3は矢絣(やがすり)の和柄フェイクベルトにしてみた。

フェイクウエア製造のポイント

フェイクウエアのモックアップ過程において、気づいたことを紹介しておく。単に腰の位置にベルトのプリントがあるだけでは、ズボンの色によってはアンバランスとなり、ダサイ印象ばかりでなく、マナー違反を際立たせる逆効果になりかねない。ベルトプリントより下の余白部分は、ズボンと同色にすることが必要である。

要するに、図のような黒いズボンの場合はベルトより下の部分を黒く染めるか、黒くプリントする必要がある。白っぽいズボンの場合は、白のシャツならベルトのラインだけでもよいだろう。いずれにしても「ベルトをしているかのように見える」ことが必要なので、ズボンとの着合わせ方を考慮した製品開発が必要になる。

ポロシャツとズボンをセットにして、「ゴルフの熱中症対策ウエア」として販売してもよいのかもしれない。従来、ベルト製造の発想ではできなかったような、おしゃれなベルトも「フェイク」なら表現できるだろう。暑さ回避とともにウエアの楽しみも増え一石二鳥ではないか。これから来る暑い季節に向けて、この発想を生かしたウエアが製造・販売されることを期待している。

■参考文献
・北 徹朗ら(2010)ゴルフ場で見られるマナー違反の国際調査、体育研究第43号
・FNNプライムオンライン(2020)“シャツイン”実験で5度高く 熱中症防ぐ着こなしワザ
・北 徹朗(2022)プレー人口激減期(18-23問題)とゴルフ場(9)、GEW、2022年2月号
・東京新聞(2021)赤白帽の赤色は熱中症の危険性「白や黄が望ましい」武蔵野美大の大学院生、2021年9月19日


この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2022年3月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。

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北徹朗

北徹朗

<現職>武蔵野美術大学身体運動文化教授・同大学院博士後期課程兼担教授、サイバー大学IT総合学部客員准教授、中央大学保健体育研究所客員研究員、東京大学教養学部非常勤講師

<学歴>博士(医学)、経営管理修士(専門職)、最終学歴:国立大学法人東京農工大学大学院工学府博士後期課程

<主な社会活動>ゴルフ市場活性化委員会委員(有識者)、公益社団法人全国大学体育連合常務理事、一般社団法人日本運動・スポーツ科学学会常任理事、日本ゴルフ学会理事・代議員、日本ゴルフ学会関東支部事務局長、一般社団法人大学ゴルフ授業研究会代表理事

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