コロナ環境下で一時的にゴルフ人口が増えているという報道もあるが、人口減少や少子高齢化の推移を見ると、今後もゴルフ人口の減少傾向が続くことは間違いない。この連載では、筆者が提唱する「18-23問題」(2018年~2023年にかけてのゴルフ人口激減)に立ち向かうための改善策や基礎資料に基づく提言を述べさせて頂く。
9年以内に地球の気温は1・5℃以上も上昇する
世界80の研究機関や大学より106名の研究者が参加している、グローバル・カーボン・プロジェクト(GCP)は、2022年11月11日に、世界の二酸化炭素(CO2)収支の最新の評価結果をまとめた「GlobalCarbonBudget2022」を発表した。それによれば、現状のCO2の排出水準が続けば50%の確率で9年以内に地球の気温は1・5℃を超える可能性があるとされる(朝日新聞デジタル,2022年11月11日)。
熱中症の救急搬送が急増するのが6月、激増するのが7月
総務省消防庁は、2023年4月12日、各都道府県消防防災主管部局長宛に『夏期における熱中症による救急搬送人員の調査の開始について』という依頼文書を通達している。毎年、これにより、概ね5月1日頃から熱中症による救急搬送者数と症状のデータが収集されている。
図1に昨年(2022年)の報告状況を示したが、6月中旬に急激に増加し、7月に激増していることが見てとれる。一般的に「身体が暑さに慣れていない5月の連休前後が危ない」とよく言われるが、実際には6月~7月が最も危ない。
5月16日現在、消防庁のウェブサイトには5月1日~5月7日までの熱中症救急搬送者数の統計が示されている。昨年の479名に対して、今年は495名と例年並みではあるが、やや微増傾向となっている。
高齢メンバーが多く利用する「ゴルフ場の駐車場」が危ない
NITE(独立行政法人製品評価技術基盤機構)が、消防庁の過去5年間(2017年~2021年)の統計をまとめたデータによれば、熱中症救急搬送者の半数以上(52・5%)が高齢者であることが示されている。
熱中症の多くが「住居内」(40%)で発生していることは、メディア等で近年よく報じられているので広く認知されているが、2番目に多いのが「道路」(15%)、3番目に多いのが駐車場などの「公衆(屋外)」(12%)であることはあまり知られていない。
要するに、道路などの黒のアスファルトは高温になる。特に駐車場などは、風が通り難い上に、多くの車によってさらに高温環境が助長されている。夏場、グリーンに向けて扇風機を稼働させているゴルフ場を見かけることがあるが、駐車場にも同じ対策が必要であろう。
具体的には、来場客が集中するチェックイン前の時間帯と、プレー後の帰宅時間帯に、駐車場に大型扇風機を配置しておくとよいだろう。夏場のプレー後は、高温環境下に晒された身体を、入浴により再び体温上昇させた状態で駐車場へと向かっている来場者が多くいることが推測される。
アスファルトが溶けるほどの近年の猛暑、2022年は道路陥没が相次ぐ
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図2. 観測史上最高気温を6カ所同時に観測(2022年7月1日, 日本気象協会)[/caption]
黒いアスファルトの路面は蓄熱することが容易に想像できるが、近年の突発的な猛暑は想像を絶する高温になっている。例えば、2022年6月末~7月初旬にかけて、全国各地でアスファルトの陥没が相次ぎ、猛暑の影響がその要因として指摘された(日テレNEWS,2022年6月30日)。2019年には高速道路の防護柵が暑さで傾いたことも報じられた(日経コンストラクション,2019)。
特に、直近3~4年、暑さが顕著になっており、毎夏「観測史上最高気温」が更新されている。2018年7月に埼玉県で国内観測史上最高の41・1度を記録し、翌2019年5月には北海道史上最高気温39・5度を記録している。2020年9月には新潟県で40・0度を観測し、日本の観測史上初めて9月に40度台を記録している。
2022年6月には東京都心の6月観測史上最高36・2度を記録し、翌7月には6地点で同時に観測史上最高気温を記録している(図2)。このように、観測史上最高気温を更新する日は、年を追うごとに多く見られるようになってきている(日本気象協会、2022)。
東京の代表的観光地の路面にみる暑熱環境の違い
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図3. 浅草寺参道における路面の表面温度(筆者撮影, 2022年7月30日)[/caption]
筆者は公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団の研究助成を得て、昨夏、巣鴨・地蔵通り商店街(2022年7月23日)と浅草・浅草寺周辺(2022年7月30日)において暑熱環境の調査を実施した。両日ともに筆者による現地実測で最高気温43度程度であったが、地面からの輻射熱は巣鴨に比べて浅草の方が圧倒的に低かった。
具体的には、巣鴨・地蔵通り商店街では、道路の表面温度が70℃近くまでも上昇したが、浅草・浅草寺周辺では50℃台前半のデータで推移した。この要因は「路面の色」であったが、武蔵野美術大学内での検証実験結果も交えながら、次号でゴルフ場の駐車場等整備の対策案を述べたい。
最後に特徴的なデータ(図3)を紹介したい。この図のように、浅草・仲見世通りから浅草寺に向かう参道は40℃台の表面温度であるが、向かって左側のややグレーがかった路面の方は62℃を超える表面温度になっており、約20℃程度の差が生じている。
※本稿の一部は、公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団の研究助成(研究代表者:北 徹朗)が使用されている。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年6月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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