プレー人口激減期(18-23問題)とゴルフ場(第26回)猛暑下の道路表面温度とその低減策

プレー人口激減期(18-23問題)とゴルフ場(第26回)猛暑下の道路表面温度とその低減策
筆者は、公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団の研究助成を得て「暑熱環境下での移動中に道路から受ける輻射熱の身体的影響低減策の開発」というテーマで研究に取り組んできた。前号で述べたように、熱中症データなどを考慮すると、特に猛暑下における『ゴルフ場の駐車場』が対策の盲点となりやすい。本稿では、東京の代表的な観光地からみる、夏場のアスファルト環境についての事例から、ゴルフ場(駐車場やカート道路)について考えるための資料を提示したい。

巣鴨観光より浅草観光の方が涼しい:要因は路面の色

筆者は前述の助成研究の一環で、昨夏、東京の代表的観光地において観察実験を行った。具体的には、【2022年7月23日(土)巣鴨・地蔵 通り商店街周辺】、そして【2022年7月30日(土)浅草・浅草寺周辺】であった。 巣鴨での実地踏査では、午前8時30分の段階で、WBGT28・2℃、気 温 28・7℃、風速0・12 m/s、地表温度45・0℃であった。最高気温 は11時30分に観測した43・9℃であり、最も地表からの輻射熱が高温となったのは12時45分の66・8℃であった。この日、熱中症警戒アラートは発令されていない日であったが、猛暑日であった。 浅草での実地踏査では、午前8時30分の段階で、WBGT30・8℃、気 温 34・8℃、風速0・15m/s、地表温度 45 ・1℃であった。最高気温は12時15分に観測した42・7℃であり、最も地表からの輻射熱が高温となったのは12時00分の55・4℃であった。この日も熱中症警戒アラートは発令されていない日だった。 計測結果データを見ると、気温は巣鴨実験時に比べて浅草実験時の方が高かったものの、地表温度は巣鴨の方が概ね10度以上高かった。この要因としては、「道路の色」が考えられる。浅草寺参道は白色系で整備されているため、熱吸収が少なく、輻射熱が低減されているものと思われる。浅草寺参道での定点観測地点を離れて、アスファルトの計測を試みたところ、60℃を超える高温となっていたことからもそう考えられる。

白い「浅草寺参道」は表面温度が約20~30℃も低い

図に13時頃の両観光地のサーモグラフィ撮像を示した。図1は巣鴨、図2は浅草(参道入口付近)であるが、この写真はいずれもアスファルトのため、道路表面温度の最高温度は巣鴨63・2℃、浅草62・4℃と大差はない。他方、定点観測をした、浅草寺参道(図3)を見ると、最高温度は59・0℃となっている。図3をよく見ると、参道側(右)が極端に低温になっていることがわかる。最高温度は59・0℃は、左側のグレーの路面のデータだが、右側の白っぽい路面はそれよりも約20℃~30℃程度も温度が低いことが見てとれる。

武蔵野美術大学の駐車場(東京都小平市)での検証

筆者の所属先である武蔵野美術大学の駐車場において、21種類の路面素材(石)を用いて、2022年8月7日の8時30分~16時00分までの間、30分おきに計測した。図4は検証に用いた素材、表1は測定期間の環境データである。 この結果(図5)(図6)を見ると、白や黄色など薄い色が極めて低い温度に抑えられていることがわかる。グレーなど、アスファルトよりも薄い色でも、黒系や赤系は短時間で高温となっていた。

ゴルフ場来場者は18ホールのラウンドプレー後、入浴でのさらなる体温上昇を経て、熱せられた駐車場に移動している

夏場のゴルフプレー後、高温環境下に晒された身体を、入浴により再び体温上昇させた状態で駐車場へと向かっている来場者が多くいることが推測される上に、駐車場などは、風が通り難い上に、多くの車によってさらに高温環境が助長されている。夏場には、来場客が集中するチェックイン前の時間帯と、プレー後の帰宅時間帯に、駐車場に大型扇風機を配置しておくのはどうか。 ※ 本稿の一部は、公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団の研究助成(研究代表者:北 徹朗)が使用されている。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年7月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら