コロナ後のゴルフ産業を読む最新データ

コロナ後のゴルフ産業を読む最新データ
4月26日、国立社会保証・人口問題研究所が最新の将来人口推計を公表した。2020年国勢調査に基づいており、今後あらゆる政策の基幹データとなる。そこから10歳~79歳のゴルフ対象人口を抽出し、前回2015年国勢調査による推計と比較した。 〈グラフ1(いずれも出生率中位、死亡率中位の推計)〉 そのポイントは次の2点である。 ・ゴルフ対象人口減少がより厳しく減少量は将来程大きい。 ・2030年は対2020年比較で▲198万人(▲2%)である。

対象人口によるゴルフ人口推計

「対象人口が2%減だから、2030年ゴルフ人口も2%減になる」 と考えるのはかなり安易である。少子高齢化により、年齢別の人口減少率は等しくない。従って、年齢別構成率も変化する。年齢別に細分化し、年齢ごとの将来ゴルフ参加率を推計する必要があるのだ。

年齢別将来ゴルフ参加率推定とは

[caption id="attachment_77757" align="aligncenter" width="1264"] <グラフ2>[/caption] 2種類の「将来参加率推定条件」を設定し、それぞれ「年齢別将来ゴルフ人口」を計算した。 (A)コロナ後の2021年社会生活基本調査「年齢別参加率」を将来も固定 (B)コロナ前2001年以降の4次社会生活基本調査の各年齢参加率を「5歳加齢時」の平均増減率で将来参加率を設定 (B)の追加説明 (B)は少し難解であるから詳しく説明する。 2030年の35歳は、2020年に25歳だった。つまり2030年に35歳の参加率は、2020年に25歳だった集団のゴルフ関心度と、10年間の生活変化により決定される。25歳でゴルフに無関心でも、35歳で関心をもつ。あるいはその逆もある。 年齢別のゴルフ関心度は等しくないし、加齢とともに変化する。その結果が「年齢別参加率」だ。 しかし、各同一年齢集団間でゴルフ参加率に違いがあっても、5歳加齢後の参加率増減率(筆者は5歳加齢係数と名付けた)は就職、結婚、育児負担、年収変化、体力変化により決定し、長期的には安定と考えて良い。この平均増減率により、各年齢の将来参加率が推定できる。 [caption id="attachment_77774" align="aligncenter" width="788"] 表1[/caption] 2001年以降の社会生活基本調査における「各年齢参加率」と、求めた「コロナ前加齢係数平均値」を〈表1〉とした。25年間におけるすべての同時出生集団の、5年毎の参加率増減率を捉えている。(B)はコロナ禍前の平均値で、各年齢の将来ゴルフ参加率を設定する。

計算結果

[caption id="attachment_77760" align="aligncenter" width="1056"] <グラフ3>[/caption] 結果を〈グラフ3〉とした。 ・2021年の年齢別参加率が今後も持続するとした場合、ゴルフ人口は対象人口と同一経過で減少し2030年▲9%、678万人となる。 ・コロナ前25年間の5歳加齢時平均増減率により年齢別将来参加率設定をした場合、2030年ゴルフ人口は▲35%、483万人となる。  要点は、コロナ過で急増したゴルフ参加率が今後も持続するとは考えられないことである。筆者はおそらく(A)(B)の範囲となるに違いないと考えるが、正解は2026年の社会生活基本調査の結果を待たねばならない。

特定サービス産業動態調査によるゴルフ産業需要最新動向

 コロナが5類に指定変更されて旅行、外食需要が回復してきた。「コロナ特需を享受したゴルフ産業需要が今後どう変化するか?」は極めて注目されるため、毎月その動向を正確、迅速に捕捉したい。このニーズに合致するデータは経済産業省の特定サービス産業動態調査以外に存在しない。この見方・活用方法を考えてみよう。

稼働1打席、1ホールあたりの利用者数変化を重視

特定サービス産業動態調査は定点観測であり、すべてのゴルフ場、練習場利用者の総数ではない。全施設の総利用者数を毎月2か月後に集計公表することは不可能である。 このようなデータ特質にもかかわらず、ゴルフ産業界は毎月利用者数のみを注視し、その対前年同月増減で需要動向を判断しがちである。定点観測から全体総量を推定するには、対象定点と市場全体が乖離していないことを証明する必要がある。 調査対象定点は公表されないが、練習場60打席、ゴルフ場18ホールとすれば250センター、190コースの調査規模である。これだけの定点の合計利用者数で市場全体の総需要量動向を推計することは危険であろう。しかし、動態調査には利用者合計だけでなく、毎月の練習場稼働打席数、ゴルフ場営業ホール数、平均稼働日数がキチンと集計報告されており、稼働1打席、1ホールあたりの利用者数は統計的に正確に算出可能である。 利用者の総量よりも「客の混み具合連続変化」が確認できるのだ。利用者数の合計変動よりも、大きな情報価値がある。

単月比較よりも直近12か月合計を

[caption id="attachment_77761" align="aligncenter" width="1836"] <グラフ4>[/caption] 動態調査は2か月遅れで毎月最新データが公表される。これを対前月比較、対前年同月比較で需要動向を判断するのは問題である。繁閑期差や天候によるノイズが含まれてしまうからだ。そこで、最新データ月を含む直近12ヶ月合計で比較したい。2023年2月であれば、2022年3月~2023年2月までの合計である。 2023年2月稼働1打席、1ホールあたり利用者数変化集計結果 ゴルフ場、練習場長期データによる稼働1打席、1ホールあたり利用者計算例と、コロナ前2019年1月を100%とする推移グラフを〈表2・3、グラフ4〉とした。 [caption id="attachment_77772" align="aligncenter" width="788"] 表2[/caption] [caption id="attachment_77773" align="aligncenter" width="788"] 表3[/caption] コロナ特需は、 ・ゴルフ練習場  2022年1月ピーク +20% ・ゴルフ場  2022年6月ピーク +15%  であったと確認できる。練習場、ゴルフ場需要はともに未だコロナ前より増加を維持しているが、ピークアウトしたと考えるべきである。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2023年7月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。 月刊ゴルフ・エコノミック・ワールドについてはこちら