「ゴルフ需要マンスリーINDEX」の提案(2)

「ゴルフ需要マンスリーINDEX」の提案(2)

ゴルファーを「増減要因別」に分析することの重要性

先月号では5万8640名のゴルファーを対象に、2019年1月(コロナ前)から連続48ヶ月の実来場記録により、2021年(コロナ特需ピーク)におけるゴルフ練習場来場者増加の詳細を分析した。ICカードによる実際の動きを追ったもので、部分的なアンケート調査からの推計とは異なり、リアルな動きがつかまえられる。 結果は、 1)休眠ゴルファー再開が最大の増加要因 2)コロナ禍による減少も大きい 以上が確認された。 〈グラフ1〉 また、 3)ゴルフ人口の背後にはほぼ同数の潜在ゴルフ人口(休眠中・消滅)が存在する 4)ゴルフ練習場需要の84%は僅か14%の安定ゴルファーに依存している 5)ゴルファーのその構成率はコロナ前もコロナ後も変わらない。 ことも確認できた。

ゴルフ需要生成・変動構造モデル

今後パンデミックが発生しなくとも、可処分時間、可処分所得の変動に伴ってゴルフ需要は〈グラフ1〉の要因別に増減し続ける。 コロナ特需の消滅、世界景気後退、人口減少の影響が、ゴルフ需要のどこに表面化するのかを、ゴルフ産業界は常に注視し、的確に対応して個別の経営に生かさなければならない。なぜなら、増減要因ごとに対応が異なるからである。 そのためにはゴルフ需要の変動を「要因別」にリアルタイムにキャッチする仕組みが必要となる。単に歴年合計値だけでゴルフ需要変動を議論するのは危険なのだ。 〈グラフ1〉の増減要因は、そのキャチすべきポイントである。それらを組み込んだ「ゴルフ需要生成・変動構造モデル」を考えた。〈図1〉 [caption id="attachment_79993" align="aligncenter" width="1000"] 図1[/caption] これは練習場から見えるゴルフ需要のみであり、コース需要の変動は隠れている。しかし両者は密接に関係する。コース需要と練習場との関係は〈図2〉となる。 [caption id="attachment_79994" align="aligncenter" width="1000"] 図2[/caption] コースには練習場カードシステムのような、全来場者の動きを自動記録する装置が存在しないため、純粋ビギナーがコースに現れ、「安定ゴルファー」(12月号参照)に成熟するプロセスはコースから見えない。 [surfing_other_article id=79670][/surfing_other_article] 当面利用可能なゴルフ需要変動の基礎データは、ゴルフ練習場カードシステム以外に存在しない。

ゴルフ需要マンスリーINDEX

「ゴルフ需要生成・変動構造モデル」より、複数の変動要因を的確に把握し、個別ゴルフ練習場経営、ゴルフマクロ需要の活性化に資すべき指標を「ゴルフ需要マンスリーINDEX」とした。〈表1〉 [caption id="attachment_79995" align="aligncenter" width="1000"] 表1 <ゴルフ需要マンスリーINDEX>[/caption] ゴルファーを年間来場回数で階層化したので、INDEXも連続12ヶ月単位の比較を原則とする。前月対比、前年同月対比では季節変動、気候変動、打席稼働状況等のノイズに影響されてしまう。

個別練習場INDEX

今後、カードシステム導入ゴルフ練習場の理解が得られ、顧客番号と連続月次来場回数データ〈表2〉が弊社・ゴルフ産業需要調査研究所に提供されれば、特許分析方法により個別練習場INDEX(増減要因別増減)は翌月に報告可能である。保護の必要な個人情報は、一切必要としない。 仮に2024年2月末時点の個別練習場INDEXを求めると仮定する。必要なデータは〈表2〉のごとく「2024年2月を含む過去連続24ヶ月」となる。INDEXを毎月末に継続算出することが理想だが、大きく変化した月だけスポット的に算出しても効果は大きい。 また2024年2月の直近12ヶ月より遠い過去の12ヶ月との比較(例えばコロナピーク時)も計算可能である。その場合必要な〈表2〉期間も長くなる。 [caption id="attachment_79996" align="aligncenter" width="1000"] 表2 <ゴルフ需要マンスリーINDEX>[/caption]

全体需要INDEX

同時点で計算された個別練習場INDEXが多ければ、その全顧客によるINDEXは全国全練習場の増減要因と近似する。仮に10施設とすると、顧客数は10万人を超える。サンプル数約20万人と、国内最大規模の「社会生活基本調査」でも、補足できるゴルファーは2万人程度に過ぎない。しかもそれは、アンケート回答の結果である。一方このINDEXは、全国2800練習場の10ケ所分に過ぎないが、補足するのは10万人ゴルファーの行動実記録である。

個別練習場INDEXと全体需要INDEXの対比分析

個別施設の経営状況は、全体INDEXと自施設INDEXを比較することにより、自施設の増減がマクロ需要変化によるものか、自施設特有のものかを判断できる。 ・単位が「1打席あたり」であるから、ゴルフ練習場の打席規模差異は無視される。個別ゴルフ練習場はINDEX値に自打席数を乗じて比較検討すればよい。 ・参加施設が増加すれば地域差も把握可能となる  筆者は今後30施設以上の賛同、同時算出を強く念願する。50万人規模のゴルフ行動をマンスリーにフォローできれば、ゴルフ界全体にとって需要変動構造の貴重な指標となるだろう。まさに「One for All. All for One 」である。

特定サービス産業動態調査との対比

特定サービス産業動態調査は2ヶ月遅れとなるが、毎月利用者数、稼働打席数が公表される。現状唯一のゴルフ需要変動公的月次データである。1打席あたり利用者数の連続12ヶ月合計値が得られるのでINDEXの比較検証が可能である。

特許分析の特徴

INDEX算出を可能とした特許の内容をあらためて説明する。 1)ゴルファーを 連続12ヶ月合計来場回数により階層分類する 2)来場回数階層をゴルファーの成熟度・熱意の表象とみなす 3)比較分析対象二期間、連続12ヶ月単位における個別ゴルファーの階層変化別に集計する 4)顧客数、増減、延べ来場数の3点を集計する 5)INDEXの単位は「1打席あたり」とする  以上の説明は実は特許の内容ではない。カードシステムデータによる練習場来場者分析は50万人を超える連続来場履歴の迅速集計が必要とされる。その作業はコンピュータに依拠するしかなく、そのコンピュータプログラムが特許として認められたものである。