UVカットスプレーを着衣に塗布した際の紫外線透過抑制効果の観察 武蔵野美術大学教授 北徹朗

UVカットスプレーを着衣に塗布した際の紫外線透過抑制効果の観察 武蔵野美術大学教授 北徹朗

市販されるUVカットスプレーの効果検証

気象庁によれば、2023年に日本に降り注いだUVインデックス値が初めて極端に強い(Extreme)レベルにまで上昇したとされている。こうした背景から、Kita et al.,(2024)は暑熱環境下におけるゴルフ場でのプレー中の着衣内への紫外線透過量について検証し、白やピンクなど淡い色において紫外線透過が多く認められたことを報告している。この研究概要については、以前のこの連載でも紹介した。前述の気象庁のデータサイトによれば、例年5月頃からUVインデックス値のレベルは急激に上昇し真夏並みになっている。 本稿では、市販されているUVカットスプレーを着衣表面に塗布することで、着衣内部への紫外線透過をどの程度抑制できるかを観察したので、その概要を紹介したい。

SPF50+およびPA++++タイプのスプレーをポロシャツ表面に塗布

[caption id="attachment_87959" align="aligncenter" width="788"] 図1.紫外線透過量は着衣内前胸部で計測[/caption] 実験は2025年5月8日の13時12分~14時12分(60分間)、東京都内の人工芝グラウンドで実施した。一般的に皮膚や髪の毛など人体に直接スプレーするタイプの製品を用いた。2体のマネキンに綿ポリ製ポロシャツ(白)を着せ、一方に市販のUVカットスプレー(SPF50+およびPA++++タイプ)を塗布し、もう一方は塗布しないコントロールとした。紫外線量はマネキン着衣内前胸部に装着したデータロガーで10秒おきに計測した(図1)。当日の実験環境は最高気温30.8℃、WBGT24.3℃であった。

着衣内のUV-Aデータを10秒おきに60分間計測

図2はポロシャツ内のUV-Aを10分ごとにプロットした経時的推移である。スプレーを塗布した方は、概ね0.002mW/cm2~0.005mW/cm2の推移にとどまったが、スプレーを塗布していないコントロールにおいては、着衣内に0.041mW/cm2~0.033mW/cm2程度の紫外線透過が認められた(図2)。 [caption id="attachment_87957" align="aligncenter" width="788"] 図2 ポロシャツ内のUV-A量の経時的変化[/caption] 実験を行ったグラウンドにおけるUV-Aの平均値(着衣無し)は2.280mW/cm2(最大値2.560mW/cm2)であった。UVカットスプレーを塗布したポロシャツでは平均0.005mW/cm2(最大値0.010mW/cm2)、塗布しなかった方(コントロール)では平均0.030mW/cm2(最大値0.050mW/cm2)のUV-Aが検出され、両者間には統計学的に有意な差(p<0.001)が認められた(図3)(表1)。 [caption id="attachment_87955" align="aligncenter" width="788"] 図3ポロシャツ内側胸部におけるUV-A透過量の平均値[/caption] 7月下旬のゴルフラウンド中のポロシャツ内の紫外線透過について、筆者による過去の研究(Kita et al.,2024)では、ピンク・濃紺・グレー・白のうち「ピンク」が最もUV-Aを透過(最大値0.095mW/cm2)させていた。このように、着衣の素材や色によっては布で覆われた部位であっても紫外線は透過するが、今回の検証により通常皮膚に用いるUVカットスプレーを着衣表面に塗布することでも紫外線透過量は抑制されることを確認した。 今後、UVカットスプレーにおける素材や色との相性を調査することで、効果的な組み合わせが見つかる可能性もある。また、発汗してシャツが湿っている場合や雨などの影響はどうか。夏に向けて実際にヒトが活動中の環境で同様の効果があるか検証したい。 ※本研究の詳細は2025年9月に立命館大学で開催される第79回日本体力医学会で発表する※

参考文献

1)Kita et al.(2024)Observation of Clothing Color and UV Transmission in Hot Environments:A Pilot Study on Playing Golf in Mid-Summer in Japan、The Conference of Digital Life vol.2 2)北 徹朗(2023)紫外線指数(UVインデックス)が『極端に強い』領域に日本は突入 来夏は暑さ対策だけでなく「紫外線対策」が必須、ゴルフエコノミックワールド2023年10月号 3)北 徹朗(2024)ゴルフプレー中における着衣の色と紫外線透過量の観察、ゴルフエコノミックワールド2024年10月号 4)北 徹朗(2025)真冬のスポーツ実施中における紫外線量―ゴルフ、スキー、マラソンのうち紫外線対策が最も必要なスポーツは何か―、ゴルフエコノミックワールド2025年4月号 5)北 徹朗(2025)UVカットスプレーを着衣に塗布した際の紫外線透過防御効果の観察、第79回日本体力医学会大会(2025年9月17日~19日、立命館大学びわこ・くさつキャンパス)【発表予定】