このほど、2023年度のゴルフ場利用者数(速報値)がまとまったのでご報告します。この数値は、1967年から67年間、「ゴルフ場利用税」の課税状況に基づいて、ゴルフ場利用者の数を正確に記録しているものです。ゴルフ場利用税の納税状況から集計するため、調査対象期間は2023年3月~2024年2月までの利用者数となります。
これによると2023年度のゴルフ場利用者数は、前年度比147万人減の8982万人でしたが、コロナ禍前の2019年度と比べると385万人増となっており、ポストコロナ社会への移行でレジャーニーズが変化しても、顕著な減少はなかったとみられます。
ただ、70歳以上の利用者数の伸び率は対前年度比0.2%増となり、伸び率がやや鈍化する兆しが感じられます。今後2~3年間は、ゴルフ市場を牽引してきた「団塊の世代」が後期高齢者となるため、ゴルフリタイアの状況も注視する必要があるでしょう。また、ゴルフ場数は2023年度に13か所閉鎖して、2172となりました。
さて、4月の「新年度」から1か月以上経過して、今年も新たな動きが始まっています。その中からゴルフ場事業に関連性の高いポイントをご紹介しましょう。
第1点は、ゴルフプレー料金の値上げを実現し、併せて従業員の賃上げを着実に行うことについてです。海外との金利差を主因とした急激な円安、加えてロシアのウクライナ侵攻や中東情勢の不安定さなどから資源高・物価上昇が起きていることは周知の事実。春闘で、大手企業を中心とした大幅な賃上げが実現されても実質賃金は伸び悩み、個人消費はマイナスになっています。
救いは、外食や外出を伴うレジャー支出は増加傾向で、今後も継続するとの分析があることです。ゴルフ場業界もこの波に乗ることが求められますが、サービスの値上げはモノの値上げのように客観的な根拠を示すことが難しいため、なかなか進まないのが実情です。
ただ、モノ中心だった値上げが徐々にサービスの値上げに移行しており、5年前との比較では、サービス価格にも4割程度反映できているとのこと。持続的な値上げには、顧客満足度を高めつつ、その根拠を丁寧に説明して情報開示を図ることが肝要だと考えます。
第2点は、ゴルフ場経営に関係する法制改正にスムーズに対応することです。一例として、改正「気候変動適応法」が4月1日より施行されました。熱中症警戒アラートが熱中症警戒情報として法律に位置づけられ、人の健康に係る重大な被害が生じる恐れがある場合に、熱中症特別警戒アラートが創設されました。
このアラートは「過去に例のない危険な暑さとなり、熱中症救急搬送者数の大量発生を招き、医療提供に支障が生じる恐れがある場合」に発表されますが、コロナ禍の「緊急事態宣言」発出時と同じ表現になっており、危険な暑さ指数(WBGT)は「35」とされています。
参考値ですが、暑さ指数33で気温37度以上とのこと。万が一、特別警戒アラートが発表された時の対応を、我々ゴルフ場関係者は慎重に研究する必要があります。
次に「障害者差別解消法」が改正されました。障害者が事業所に対して何らかの配慮を求めた場合、事業所側に過度な負担がない範囲で、社会的障壁を取り除く配慮が求められます。「民間事業者による合理的配慮」が「努力義務」から「法的義務」となりました。
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年6月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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