日本のゴルフ産業における廃プラ削減方針の盲点
日本のゴルフ関連15団体が結集しゴルフ界の健全な発展を目指して協議する機関である「ゴルフサミット会議」において、2020年に廃プラ削減方針が示されて以降、各地のゴルフ場や練習場等ではポスターなどによる普及啓発が多く見られるようになった。
現状、ゴルフ産業における廃プラ削減の主流はゴルフ場の浴場に設置されるビニール袋の廃止等であるが、筆者は「ゴルフサミット会議の廃プラ削減方針に不足している視点」として、スコア記入に使われるプラスチック製の使い捨て鉛筆やグリーンマーカーがいまだに廃止されないことが問題であることに言及してきた(北、2021)。
これらを実際に計量し、廃プラ総排出量の推計を学会でも発表した(北、2022)が、鉛筆1本あたりの重量は浴場のビニール袋よりもはるかに重い。ゴルフ産業が本気で廃プラ削減を考えるならば、まずはこの点の改善ではないか。
現在、カートのタッチパネル化が普及しているし、スコアを記録できるスマホアプリも充実している。従来、筆者が提唱してきたグリーンマーカーに鉛筆の芯を付属した、1個2役の「ピックタイプ鉛筆」の開発・普及も有用であろう。
ゴルフ産業にも見られだしたリサイクル、リメイク、アップサイクル
SDGs意識の高まりとともに、日本のゴルフ産業においても、リサイクル(再生利用)、リメイク(作り直し)に加えて、近年ではアップサイクル(廃棄物をそのままの素材や特徴を活かしつつ元の製品より価値の高い別のアイテムに昇華させる)も盛んである。
例えば、鉄製端材をゴルフマーカー化したり、ゴルフ場内で老朽化した桜や松などの樹木を単に伐採するのではなくボールペンや入浴木などに加工したりする例も報じられている。また、プラスチック廃棄物をアップサイクルしゴルフシューズが作られる例もある。
そもそもなぜ、世界で廃プラ削減に取り組まれているのか。燃やされるプラスチックゴミが気候変動の原因になっていることや、再利用により化石燃料利用を抑制し限りある天然資源を保護することなども知られているが、深刻なのは「マイクロプラスチック」による海洋汚染の問題である。
ゴルフ場での18ホールプレーで靴底はどの程度擦り減るか?
廃プラをアップサイクルしゴルフシューズが作られたとする。再利用されたとしても、プラスチックであることには変わりない。それを履いてプレーするといずれ摩耗し靴底が擦り減って行く。削り落とされたマイクロプラスチックはゴルフ場の排水溝から川に流れ、いずれ海へ流れ出ているのかもしれない。
こうした問題意識から、1プレー(18ホール)でゴルフシューズの靴底はどの程度摩耗するのかを検証した。あらかじめ重量を測定した未使用のゴルフシューズを3名の被検者が履き、18ホールプレーを行った。2名はソフトスパイクタイプ、1名はスパイクレスタイプを着用した。
その結果、スパイクレスタイプは重量に差は見られなかったが、ソフトスパイクを着用した被検者は両名ともにラウンド後のシューズ重量が軽くなっていた。
具体的には、被検者Aは右:マイナス0.40g、左:マイナス0.79g、被検者Bは右:マイナス1.16g、左:マイナス0.08gであった。
一般的に、ゴルフ場の1日来場者は約150〜200人程度とされ、多い日には1日250〜300人程がプレーすると考えられる。1つのシューズの靴底から削り落とされるマイクロプラスチックは微量(合計1g程度)かもしれないが、今回の検証で観察されたように、約1gを300名が落としているとすれば1日300g程度の排出となり、1ヵ月に換算すると数kgのマイクロプラスチックが靴底から排出されていると推計される。
「大学講師のプロが芝クズ問題に挑戦」(GEW2025年11月号)
表記の小見出しでGEW誌(2025年11月号)が報じている内容が、この問題を解決してくれる可能性がある。
PGA専門指導員の鈴木タケル氏(当時、武蔵野美術大学大学院博士後期課程3年)は、ゴルフ場から大量に排出される芝クズに着目し、これの有効活用について着想、研究に着手したことが報じられている。
芝カスの処理に苦慮しているゴルフ場があることを知り、「茶殻やコーヒー殻がリサイクルされるように、ゴルフ場から出たものはゴルフ場に関わる何かで再利用すべき」とGEW誌の取材に回答している。
鈴木氏の問題意識は、グリーン上にフットプリントが残り難い靴底形状を開発・成型するために、ゴルフ場から排出される芝カスを有効活用できないものか、という主旨であった。
もしも、この発想が実現すれば、ラウンドに伴い靴底から削り落とされるマイクロプラスチックも無くすことができるのではないか。
現に、類似した発想の製品として、100%堆肥化できる素材でできたシューズがスイスのブランドによって開発されたりしている。
その他、環境省の資料によれば、リーボック社から植物由来の生分解性プラスチックで作られるシューズが発売されるなど、現在、世界で13社が生分解性の素材の靴を製造・販売している。
芝カスでアウトソールが形成できるとすれば、「マイクロプラスチック」と「芝カス」の両方の課題を解決できる可能性が大きい。
プレー時間が長く、健康意識で歩きプレーを心掛ける人が多いゴルフにおいて、シューズが環境に及ぼす影響についてもっと調べられる必要がある。
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図1.筆者が過去に履き潰したソフトスパイクのアウトソール[/caption]
参考文献・参考資料
・ゴルフサミット会議(2020)ゴルフ界も廃プラ削減に取り組もう!趣意書、https://www.golf-summit.jp/haipla/haipla_shuisho.pdf(2026年5月19日確認)
・北 徹朗(2022)ゴルフ産業界が掲げるSDGs対応に欠落している視点―特にプラスチック削減の観点から―、日本運動・スポーツ科学学会第29回大会プログラム・抄録集 p.18
・北 徹朗(2021)プレー人口激減期(18-23問題)とゴルフ場7―年間146.7トンの削減が可能:廃プラ削減に向けた「ピックタイプ鉛筆」の開発研究―、ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2021年12月号
・浅水 敦(2026)鉄製端材がゴルフマーカーに 日伸精工が示すアップサイクルの可能性、ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2026年1月27日配信記事、https://gew-web.com/sdgs/sdgs/g_92130(2026年5月19日確認)
・週刊ゴルフダイジェスト(2026)ゴルフ場の廃材が「入浴木」や「ボールペン」に変身! 地域の技術と連携したセブンハンドレッドCの試み、週刊ゴルフダイジェスト2026年5月26日号(バック9)
・100%堆肥化できる素材でできたスニーカー スイス発「SOLK」誕生、https://eleminist.com/article/4187(2026年5月19日確認)
・環境省:スポーツ活動とマイクロプラスチック(小林牧人)、https://www.env.go.jp/content/000205986.pdf(2026年5月19日確認)
この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2026年6月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。
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